約束のしるしとして
「美咲さんって…米倉代表と知り合いだったんですか?」
「ええ、向こうは私を敵対視してたみたいだけどね。」
「美咲さんは?」
「私?そうね~。手のかかる妹みたいな感じかしら?」
…それって完全に見下してますよね?
「あら、そう?そうなるのかしら?」
…そうとしか言えないと思いますけど?
「どうかしらね?私としては助けを求めて来たら素直に手を貸してあげるくらいは構わないと思っていたのよ?だけど向こうは私を避けていたから結局協力することはなかったけどね〜。」
…ふ~ん。
そうなんだ?
「…って、そう言えばさっきウィッチクイーンとも知り合いのような言い方をしてませんでしたか?」
「ああ、あの子ね。」
…いや、だから。
あの子って、その呼び方はどうなの?
「どう、って言われてもね~。米倉美由紀が手のかかる妹だとしたら、あの子は反抗期の妹かしら?」
…どっちも同じ意味じゃ?
「そんなことはないわよ。何だかんだ言っても米倉美由紀は私の前だと大人しいけど。あの子は私の前だと怒りっぽくなるから。性格は真逆って感じかしらね?」
…あのウィッチクイーンが怒りっぽくなる?
全く想像できないんですけど?
「あの子も焦っているのよ。ちゃんとした教育を受ける前にウィッチクイーンの称号を受け継いでしまったから…。実力がないのに称号だけは一人前だから、他者に見くびられないように必死なんでしょうね。」
…へ?
実力がない?
…って!?
ええええええええええっ!?
「いやいやいやいや!?ウィッチクイーンに実力がないってどういうことですか!?」
「あら?言葉通りよ?」
「いやいやいやいやいやいやいやいや、全然意味が分からないんですけど!?」
「あらあら、そうなの?」
…いや、だから。
なんでそんな普通に言えちゃうんですか?
「う~ん。なんで…って聞かれてもね~?あの子はまだ成長の途中なのよ。」
…嘘っ!?
あれで途中なの!?
私達をかるく一掃できる実力があったのに!?
「まあ、そうなるわね〜。」
…いやいやいやいや。
そんな簡単に言えるって、
美咲さんはどれだけ強いんですか!?
「私?私の実力を見せるのは難しいわね〜。だけどあの子は先代が死んで称号を受け継いだだけの『そこそこ強い』魔術師でしかないわよ?」
…は?
あれで、そこそこなの?
「ええ、そうよ。ウィッチクイーンの称号っていうのはね。本来はあの程度で名乗れるようなものじゃないのよ。文字通り『女王』の称号だから、最低でも私を倒せる程度じゃないと話にならないわ。」
…うわぁ。
それって控えめにウィッチクイーンのよりも強いって言い切ってますよね?
「まあ、否定はしないわ。」
…しないんですね?
「ええ、今はね。」
…それってこれからの成長次第っていうことですか?
「…というよりも、現時点で言えばあの子よりも『女王』の称号に相応しい女の子がいると思っておけばいいわ。」
…は?
ウィッチクイーンよりも相応しい女の子?
「ふふっ♪まあ、その辺りに関しては余計な口出しはしないことに決めてるから、気になるのなら自分で調べなさい。まあ、そんな簡単に調べられるようなことでもないけれど。」
…うわ~。
ものすごく気になるんですけど?
「今はまだ知らなくても良いことよ。それにわざわざ調べなくても向こうから姿を見せるでしょうしね。」
…それって美咲さんの知り合いですか?
「いいえ、全くの他人になるわ。会ったことも、話をしたこともないから。」
…それじゃあ、私が知ってる人ですか?
「ふふっ♪さあ、どうでしょうね?」
…うわぁ。
今の反応って肯定ですよね?
「さあ?どうかしら?」
…教えてくれないんですね。
「そのほうが面白そうだしね♪それに何も知らないほうが上手くいくこともあるでしょうし。」
…秘密ですか?
「というよりも、私達には関係のない話だと思っておけばいいわ。」
…う~ん。
どうあっても教えてもらえないみたい。
「まあ、それならそれで良いんですけど。結局、美咲さんはウィッチクイーンとも敵対してるってことですか?」
「あの子の場合は敵対と言うよりも警戒ね。私と対立しないように立ち回ってるって思っておけばいいわ。」
「どっちにしても嫌われてるのは間違いないってことですね?」
「そうとも言うわね〜。」
…むしろそうとしか言わないような?
「どうでもいいことよ。私にとって重要なのは乃絵瑠ちゃんだけだから♪」
………。
そんなふうに言われると何だか照れくさいというか、
そこはかとなく嬉しいというか。
対応に困るわね。
「質問はこれで終わりかしら?」
「え?あ、まあ、そうですね。」
「ふふっ♪それじゃあ、ここでお別れね♪」
「あ、はい。」
笑顔で見送ってくれる美咲さんの笑顔を心地好く感じられて、
このまま別れてしまうのが寂しい気がするけれど。
それでも私にはまだやらなければいけないことがあるから気持ちを切り替えてお別れの挨拶をすることにしたわ。
「えっと、全部終わったらですけど。やるべきことが全部終わったら、また会いに来ますね。」
「ええ♪ずっと待ってるわ♪乃絵瑠ちゃんが『迎えに来てくれる日』をね♪」
…ええ〜〜〜?
それはちょっと違う気がするけど。
「でもまあ、また来ます。」
必ず会いに来ると伝えてから、
しっかりと頭を下げることにしたのよ。
「お世話になりました!このご恩はいつか必ずお返しします!」
「ふふっ♪期待して待ってるわね♪」
精一杯のお礼をしてみたことで、
美咲さんが握手をしてくれたわ。
「でも、私がおばあちゃんになる前に迎えにきてね♪」
「あ、あは…はは…っ。」
何だかもう、何が冗談で何が本気なのか分からなくなってくるわね。
…でも、まあ、とりあえず。
「これが私からの感謝の気持ちです。」
約束のしるしとして、
私から美咲さんにキスをしたのよ。
「あら!あらあら♪」
私からのキスに機嫌を良くしてくれた様子の美咲さんだけど。
ここは即座に離れておいたわ。
美咲さんが暴走する前にギルドを出ることにしたの。
「それじゃあ、行ってきます。」
「ええ、またね♪乃絵瑠ちゃん♪」
最後まで笑顔で手を振ってくれた美咲さんに見送られながら学園に向かって歩きだす。
みんなが待つ学園に。
彩花が待つ暗黒迷宮に戻るために。
新たな気持ちで一歩を踏み出したのよ。
「さあ!待っててね、彩花!今から会いに行くから!」
数日ぶりに再開する親友との再会を心待ちにしながら、
学園に戻ることにしたのよ。




