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THE WORLD  作者: SEASONS
4月25日
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2255/2337

信じる根拠

《サイド:米倉宗一郎》



…ん?



突如として御堂君が俺の隣に並んできた。



「どうかしたのか?」


「あ、はい。すみません。少しお話したいことがあるのですが…よろしいでしょうか?」



…ふむ。



この状況での話とは何だろうか?



特に思い当たることはないが、

これといってやらなければならないことがあるわけでもないからな。


話くらいなら付き合うべきだろう。



「聞かせてもらおうか。」


「はい。ですが、兵器に関しての報告になりますので…。」



…ああ、なるほどな。



あまり大きな声では言えない話か。



小声で話し始めた御堂君の配慮を無駄にしないために、

対外的に気のないそぶりを見せながら話を聞かせてもらうことにした。



「それで、何か分かったのか?」


「…いえ、秘宝による探索は失敗しました。ですが、探索中に深海優奈さんの声が成美ちゃんに届いたそうです。」



…何?



深海優奈だと?



「その名は確か…天城総魔と共に死亡した少女の名前だったな?」


「あ…はい。そうです」



俺の指摘によって御堂君は落ち込んだ表情を見せている。



何か想うことがあるのだろう。



天城総魔と深海優奈の手助けによって大破壊から生き残れたわけだからな。


御堂君としては生涯忘れることの出来ない大切な名前なのかもしれない。



「ふむ。亡くなった少女の声が聞こえたというのは信じられない話だが、わざわざ報告に来たということは、何らかの手がかりを手に入れたということか?」


「はい。深海さんが伝えた話の中には『兵器がまだ未完成』という言葉が含まれていたそうです。」



…ほう。



それが事実であればこちらにとっては好都合だな。



「その情報は信じられるのか?」


「分かりません。ですが深海さんは兵器を実際に確認しています。そしておそらくは総魔と共に兵器の解析を成功させていたはずです。」



…なるほど。



実際にどういった方法がとられたのかはわからないが、

共和国に向けて発動された兵器がアストリアで暴走したのは間違いない。



…だとすれば。



御堂君が言うように兵器の解析が行われていた可能性は否定できないだろう。



「兵器に関しては僕よりも深海さんのほうが詳しいはずです。その深海さんが未完成だと言うのであれば、情報を信じるべきだと思います。」


「そもそも何らかの手違いという可能性はどうだ?」



亡くなった人物の声が聞こえるという時点ですでに信憑性に欠けるのだ。



「死者の言葉を信じる根拠は何だ?」


「それは…。」



普通に考えれば妄想か幻聴を疑うべきだろう。


だがそれらを疑わずに信じようというのなら、

それ相応の根拠は示してもらうべきではないだろうか。



「きみはどこまで信じている?」



真っ向から否定するつもりで問いかけているわけではないのだが、

これでも一応は万単位の仲間の命を預かる立場だからな。



情報の裏付け程度はしておくべきだろう。



「きみが『疑わない理由』を聞かせてもらえればそれで良い。」



事実がどうかは問題ではないのだ。



重要なのは御堂君が信じる理由。


ただそれだけだ。



「きみはどう判断している?」



改めて問いかけてみたことで、

御堂君は自らの考えを聞かせてくれた。



「僕には深海さんの言葉が真実かどうかは分かりません。ですが、総魔が僕達に希望を遺してくれたように…。深海さんも何かを伝えようとしてくれているのではないかと思います。ですので、深海さんの言葉を信じるというよりも、伝えられた言葉の意味を考えるべきだと思っています。」



…ほう。



なるほどな。



ただ盲目的に信じるのではなく、

自らの意思で判断しているのだな。



だとすれば、俺もそうするべきだろう。



御堂君の考えを確認したことで、

改めて質問を行うことにした。



「では聞くが、もしも本当に兵器が未完成だったとして、兵器が使用された目的は何だと思う?」


「それはおそらく、兵器を完成させる為の実験だったのではないかと考えています。」



…だろうな。



確かに未完成であれば第2波や第3波が来ないのは当然と言える。



「実際に未完成であれば、その理由は納得できるか。」



セルビナを襲った攻撃はあくまでも試射であり、

完成した一撃ではないと判断できるからだ。



…だとすれば、だ。



セルビナの王都は壊滅を免れた可能性もあるだろう。



未完成の一撃でセルビナの王都を壊滅させられたとは思えない。



実際の威力がどの程度なのかは知らないが、

王都を根こそぎ吹き飛ばせるほどの威力ではなかったと考えてもいいのではないだろうか?



…これでオルバ・レグリックやリン・ラディッシュが生存している可能性が上昇したな。



半ば諦めかけていたが、

御堂君の推測が正しければ死亡したとは言い切れない。



…生きていると信じておこう。



そして兵器が未完成ならば、こちらにとっては好都合だ。


兵器が完成する前に王都を制圧すればいい。



「悪夢を蘇らせるわけにはいかないからな。兵器が完成する前にミッドガルムを制圧するぞ。」


「はい。最後まで協力させていただきます。」


「うむ。頼りにしている。」



兵器による狙撃の心配が薄れたことで行軍を急ぐことにした。



兵器を破壊する為に。


兵器の完成を防ぐ為に。



急いでミッドガルム王都に向かうことにしたのだ。





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