せめて私だけでも
《サイド:栗原薫》
…御堂君は反対みたいね。
だとしたら。
せめて私だけでも戻りたいって考えたんだけど。
御堂君から離れた成美が私の手を掴んできたわ。
「ねえ、薫。私達も行こう?私達の中にある大切な人達の想いにも、きっと意味があると思うから…だから私達も行こうよ。」
王都に戻るのではなくて、
前に進むことを成美も望んでいたのよ。
「お姉ちゃんや翔子さん。それに薫のお兄さんや琴平愛里さんもね。きっとそう願ってると思うの。」
…それは、どうなのかな?
少し都合の良い言葉に聞こえるけれど。
成美は兵器の破壊のために力があると信じているようね。
「みんな兵器の破壊を望んでると思うの。だから、だからね…。」
…ええ、そうね。
一緒に行こうと願う成美に嫌とは言えなかったわ。
まだまだ気持ちの整理は出来ないけれど。
ここで言い争うのもどうかと思うからよ。
「…そうね。分かったわ。私も行くから…だから安心して。」
本当は王都に向かいたいと思うけれど。
今は我慢することにしたわ。
…気になるけど、振り返ってばかりいられないわよね。
苦しんでいる人達を放置するのはどうかと思うけれど。
実際問題として御堂君の意見も当然だと思うのよ。
…今は前に進まないと、もっと沢山の犠牲が出ることになるのよね。
もしも兵器を使用したのがミッドガルムだとすれば、
次に狙われるのは共和国かもしれないのよ。
そしてミッドガルムが兵器を所持しているとすれば、
ミッドガルムが停戦を受け入れるはずがないわ。
兵器の力を使って共和国を滅ぼそうとするはず。
そうなる前に兵器を破壊しなければいけないのよ。
…ミッドガルムが停戦を受け入れなければ、戦争が終わらないのよね?
そして争いが続く限り、
ミッドガルムにも犠牲が溢れることになるわ。
ミッドガルム軍だけではなくて共和国軍も同様で、
戦争が続く限り戦場には死が付き纏うのよ。
…私が果たすべき役目は、この先にもあるっていうことよね。
セルビナの王都の状況は不明だけど。
オルバ学園長やリン学園長がいるから少なからず救助作業は行われているはずよ。
もちろん共和国軍や陰陽師軍が全滅していなければの話にはなるけれど。
生きてさえいれば人命救助は行われるはずなの。
…今は信じるしかないわね。
無理に戻らなくても大丈夫だと信じて、
王都への未練を断ち切ることにしたわ。
…私も行くわ。
覚悟を決めて成美と一緒にミッドガルムへ向かうことにしたのよ。
「私もミッドガルムに行くわ。」
「うん!」
一緒に行くと決めたことで成美は嬉しそうに笑ってくれたのよ。




