本心は別にある
「ねえ、御堂君。事実確認と人命救助の為に急いでセルビナの王都に戻るべきだと思うんだけど?」
…ああ、そうだね。
さすがに放置と言うわけにはいかないと思う。
兵器の攻撃によって多大な被害を出しているはずの王都での人命救助は必要だ。
…だけど。
もしも本当に兵器が現存しているのなら、
先を急ぐべきじゃないだろうか?
「栗原さんの気持ちは分かるけど、今は引き返している時間がないと思う。僕達が兵器を破壊しない限り、兵器による被害は拡大する一方だからね。僕達が王都に戻っている間にジェノスやマールグリナが攻撃される可能性だって否定できないんだ。」
兵器の連続攻撃が可能かどうか?
そして兵器は幾つあるのか?
それらが不明な現在では1分でも1秒でも急いで兵器の破壊に動き出さなければ次の町が犠牲になってしまうことになる。
だから今は戻っている時間はないと説明しておく。
「僕達は兵器の破壊に向けて進むべきだと思うよ。」
控えめに戻らないと言ってみたけれど。
実を言えば本心は別にある。
…栗原さんに絶望は見せられないからね。
兵器の大破壊によって生まれる犠牲と絶望は確実に多くの人々の命を消し去っているはず。
当然、セルビナの王都において数え切れないほどの命が奪われたと考えられる。
…きっと栗原さんには、あの地獄は耐えられない。
沙織を一瞬で殺した兵器。
砦ごと吹き飛ばした兵器の力は、
あらゆる命を一瞬にして消失させたらしい。
実際の現場をこの目で見たわけではないけれど。
絶望的な惨劇に栗原さんの心は耐えられないと思う。
…栗原さんには耐えられないはずだ。
優しい心を持っているからこそ、
きっと壊れてしまうだろうね。
死と絶望が広がっているはずの王都の惨劇は僕でさえも直視する勇気を持てなかった。
…だから引き返すことは出来ない。
おそらく栗原さんに限らず、
僕や成美ちゃん達の心まで蝕んでしまうと思う。
…だから今は前に進むべきだ。
王都に残ったオルバ学園長やリン学園長の生存も分からないけれど。
それでも引き返すべきじゃないと判断した。
「僕達はミッドガルムに急ぐべきだ。兵器の在りかを探り出して一刻も早く兵器を破壊することを優先すべきだと思うからね。」
本心は語らずに目的だけを告げる。
「引き返す時間はないんだよ。」
「………。」
優先順位を告げた僕の言葉を聞いた栗原さんはとても悲しそうな表情を見せていたけれど。
無理に反論しようとはせずに、
何も言わずに黙り込んでしまっていた。




