次元が違い過ぎる
《サイド:長野淳弥》
…くそっ。
まだ動けねえ。
「「「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」」」
雄叫びを上げながら竜道寺に突撃する陸軍の兵士達。
一斉に放たれた複数の魔術が炸裂したことで戦場に轟音が響き渡っていた。
…良い攻撃だ。
相手が竜道寺でなければ間違いなく討ち取れていただろう。
だがここにいるのは本物のバケモノだ。
…追撃をっ!
竜道寺が背中を見せている隙に攻撃を仕掛けたかったんだが、
串刺しにされた体の治療が追い付かないせいで立ち上がることすらできなかった。
…ちっ!!
回復魔術は専門外だからな。
誰かの手を借りない限り動けそうにない。
…里沙は無事なのか!?
俺よりも先に攻撃を受けていた里沙も重体のはずだ。
…どこにいるっ!?
乱戦状態になってしまった戦場のせいで里沙の姿が見えなくなっている。
…せめて上矢遥の治療を受けられれば。
完治は無理でも動けるようになれば里沙を捜せるのだが、
爆音が轟く戦場で援護を行う上矢遥は竜道寺に攻撃を仕掛けようとしていた。
「メルトクリムゾン!!!」
両手に生み出す炎を天にかざした上矢遥が願う。
「あらゆる存在を灰に!!」
姉貴のテラ・フレアに匹敵する極大の炎を天へと放っている。
「地獄に堕ちなさいっ!」
怒りを込めて叫ぶ声と共に天から降り注ぐ極大の炎が竜道寺に直撃した。
…やったか!?
隕石のごとく降り注いだ炎の直撃を受けた竜道寺の姿が炎の中に消えるのが見えた。
「これならどう!?」
内部の様子は見えないが、
上矢遥の攻撃にあわせて兵士達も炎の魔術を発動させている。
「追撃しろーっ!!!」
数十…いや、数百の炎が放たれたのだが、
竜道寺から感じられる殺気に変化は見られなかった。
…無理なのか?
100人の攻撃でも竜道寺には届かないのか?
周囲の空気すらも加熱して周辺一帯の気温を急上昇させるほどの膨大な炎でも希望を見いだせなかった。
…だが、まあ、そうだろうな。
この程度の攻撃で竜道寺が倒せるのなら、
すでに慶太と姉貴が殺しているはずだ。
姉貴と同格の攻撃では竜道寺は倒せない。
そしてたった100人の兵士では慶太にも遠く及ばない。
…くそっ!
俺にもっと力があればっ!
…俺がもっと強ければっ!!
例え竜道寺に勝てないとしても、
足止めだけでも出来れば米倉宗一郎を離脱させることが出来たはずだ。
…肝心なところで役に立たねえ。
自分自身を情けなく思う俺の視線の先で、
炎の中から竜道寺が歩み出てきた。
「もう終わりか?」
静かに問い掛ける竜道寺に火傷は見られない。
それどころかかすり傷一つさえも存在しないように思える。
…次元が違い過ぎるだろ!?
文字通り無敵と言える存在に、
誰もが恐怖を感じて表情を引き攣らせている。
「大人しく消え去るが良い。」
死刑宣告の直後に深紅の衝撃波が魔剣から放たれる。
「ブラッディ・ムーン!!!」
振り抜かれた刃から生まれた衝撃波は地面と水平に広がって、
すぐ側にまで接近していた100名の兵士達を一撃で分断してしまった。
「「がっ!!ぁぁっ!!!」」
「「ぐぅぅっ!?あああっ!!」」
悲鳴を上げながら即死する兵士達。
残された最後の戦力も竜道寺の前に全滅してしまったようだ。
「残りはあと二人だな。」
戦えるのは上矢遥と笹倉美和子の二人だけになった。
「すぐに殺してやろう。」
二人を見つめながら歩みを進める竜道寺。
絶望が二人に歩みよって終焉へと近付く時の中で、
笹倉美和子が上矢遥に話しかけていた。




