幻想
《サイド:上矢遥》
…怖いっ。
まだ何もしていないのに。
…この恐怖は何なの?
全身で感じる恐怖と絶望によって、
戦う前から立ち向かうことの無謀さを感じてしまっていたわ。
…どう考えても勝てない。
だけど、逃げることも出来ないようね。
立ち向かうどころか、
逃げることさえ出来そうにないのよ。
魔剣からは絶対に逃れられないという結末を直感的に理解してしまったの。
…これが竜の牙の力なの?
禁呪を手にしたことでウィッチクイーンとも戦い抜ける自信を持っていたけれど。
それが幻想だって気付いてしまったのよ。
…これが。
これが世界を脅かす魔術師の力なのね。
ここへ来る前に桜井学園長から竜の牙に関してのおおよその説明は受けていたけれど。
目の前に立ちはだかる人物の実力は、
予想や想像を遥かに越える本物のバケモノだったのよ。
「消え去れ!」
…っ!?
殺意と共に振り抜かれた魔剣を米倉元代表は槍で防ごうとしてる。
ぶつかり合う魔剣と槍。
だけど二つのルーンが激突した瞬間に、
『ズ…ズ…ズ…ズ……ッ!!!』と魔剣が生み出す闇が槍を喰らい始めたの。
「ちぃっ!!」
片手では防げないと判断したのか、
米倉元代表は長野君の体を押し退けてから両手で槍に力を込めたわ。
「闇には光をっ!!」
ありったけの魔力を込めて放たれる魔術。
…あれが、噂の?
時間が足りなかったという理由もあって、
私達もまだ習得できなかった伝説の魔術による反撃が行われようとしていたのよ。




