絶対絶命
《サイド:長野淳弥》
『ガキィン!!!』
…何だ!?
突如として現れた一本の槍が、
激しい激突音を立てながら竜道寺の攻撃を防いでくれていた。
…これは!?
「ふ…っ。」
大地に突き刺さる槍を目にした竜道寺はホンの少しだけ楽しそうな微笑みを浮かべている。
「まだ生きていたのか。」
…だよな。
どうやらそういうことらしい。
竜道寺の視線の先にいる人物が、
俺の背後から救いの手を差し延べてくれていたんだ。
「しっかりしろ!!諦めれば、そこで終わるぞっ!!」
は…ははっ。
…さすがだな。
力強い言葉と共に差し出された手の温もりによって再び希望を取り戻すことが出来た。
「無事だったのですか!?」
背後にいる人物に振り返る。
そこにいるのはルーン『ランス・オブ・カイン』を握り締めた米倉宗一郎だ。
「良かった…。」
「はははっ。まあ、辛うじて脱出が間に合ったといったところだな。」
魔力の残量だけは十分にあったからだろうか。
他の生徒や陸軍の兵士達とは違って、
軍の指揮をとることを重視して戦闘を控えていたことで竜道寺の攻撃から逃れる程度の魔力が残っていたのかもしれない。
「…とは言え、この状況を突破できる自信はないがな。」
「竜道寺の撃破は…?」
「無理だ。」
本当に脱出だけで精一杯だったらしい。
「どうしますか?」
「どうしようもないな。」
戦う前から敗北を受け入れているのか、
米倉宗一郎はすでに生存を諦めているように見える。
「なら、逃げますか?」
「いや…逃げられはしないだろう。」
…確かに。
相手が親父ならまだしも。
竜道寺が相手なら逃げることさえ不可能だ。
…絶対絶命ってやつだな。
現在の竜の牙で最も危険な男が自ら出てきたんだ。
戦うどころか逃げることさえ一筋縄にはいかないだろう。
「だがまあ、それでも一応は聞いておくか…ここに来た目的は何だ?」
「今更答えるまでもないだろう?お前が持っている秘宝を手に入れるためだ。」
聞くまでもなく分かりきっていることだが、
やっぱり秘宝が目的らしい。
「大人しく秘宝を差し出すのなら、お前以外の命は助けてやってもいいが…どうする?」
「ふん!何度も同じことを言わせるな。」
竜道寺の問い掛けに対して、
米倉宗一郎は即座に否定していた。
「俺はそんな物は持っていない!!そして存在しない物は出せんっ!!」
「…ならば死ね。」
はっきりと拒絶の意志を見せる米倉宗一郎に殺気を込めてルーンを構える竜道寺。
もはや話し合いは成立しないだろう。
竜道寺のルーンは闇を象徴するかのような漆黒の剣だ。
見る者全てに恐怖を与えるほどまがまがしい魔剣は純粋な邪の力を持っている。
栗原薫や御堂の光属性とは真逆の属性だな。
絶対的な悪の力を放つ呪われた魔剣が放つ威圧感だけで、
傍にいた上矢遥と笹倉美和子も死の恐怖を感じている様子だった。




