結末だけ
《サイド:長野淳弥》
「どうしてそんなことになったの?」
母が殺された理由を問い掛けてくる百花だが、
俺にはその理由が答えられなかった。
残念ながら、俺はその場にいなかったからだ。
「悪いが俺も詳しい状況は知らないんだ。そもそも俺はジェノスにいて、当時の事件には関わっていなかったからな。俺が知ってるのはあくまでも結末だけでしかない。」
全ての出来事を、
あとになってから聞かされたからだ。
だからこそ。
全てが終わってから事実を聞かされた俺に、
真相なんて分かるはずがない。
「どこから狂ってしまったのかは俺にも分からない。」
幼い頃から各地を転々としていたせいで、
あまり内部事情までは知らないからな。
「だから俺に言えることは一つだけ。竜の牙は秘宝という名の力に溺れて本来の目的を見失ってしまったということだけだ。」
「その本来の目的って何なの?」
「魔術師狩りによって苦しむ全ての魔術師達を守ることだ。」
力による弾圧に対して力によって抵抗する。
それが革命軍の目的であり、存在の意味だった。
「だが、それが狂ってしまったんだ。肥大化する組織の中で暴走する者が現れた。それが竜谷と竜道寺の一族になる。」
使い方一つで世界に影響を及ぼすほどの力を秘めた秘宝の力に魅入られた竜谷と竜道寺の一族は秘宝を奪い取る為に竜崎一族を拘束したんだ。
それが全ての始まりであり、
全ての終わりでもあった。
「現在、反乱軍を率いているのは竜崎慶太という男だ。竜崎一族の最後の生き残りだな。その竜崎の下に竜崎一派の魔術師達が集まり、そこに姉貴も加わることで反乱軍は竜の牙に戦いを挑んだ。それが今から4年前の話になる。俺はその場にいなかったが、狂ってしまった竜の牙を止める為に姉貴達は戦いを挑んだらしい。」
だが、その戦いの結末は敗北だった。
竜崎慶太の父である竜崎一成が死亡して、
竜崎一族は慶太と雪を残して全滅したと聞いている。
そして内部抗争において、
俺の母である先代のウィッチクイーンも親父の手によって殺害されたそうだ。
「当時の戦いで姉貴達は敗北した。」
多くの犠牲を出して。
大切な家族を失って。
姉貴達は敗北したそうだ。
「その結果として最後に残された手段はただ一つ。竜の牙から逃げ出すことだけだった。」
竜の牙の暴走を食い止めることに失敗して、
かけがえのない命を失った。
その絶望や悲劇、苦しみや悲しみを抱えながら、
反乱軍は今まで息を潜めて陰で暗躍していたんだ。
竜の牙と戦う為の力を蓄えて全ての準備を整える為に。
反乱軍は長きにわたる年月をただ静かに堪え凌いでいた。
「俺達、反乱軍は竜の牙を殲滅する為に存在している。そしていつの日か本来の竜の牙を取り戻す為に戦い続けているんだ。」
『絶望』を経験し。
『敗北』を経験し。
『悲劇』を経験した反乱軍だが、
それでもまだ目指すべき想いは消え去ることなく続いている。
「竜の牙を取り戻す。それが俺達の目的になる。」
最終的な目的を言葉にした。
そんな俺の想いを、
米倉宗一郎はただ静かに聞いていた。




