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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
1795/1864

良き方向に

「久しいな…。竜崎慶太。」



…なっ!?



突然話しかけてきた人物。


それが誰なのかに気付いた瞬間に、

声を詰まらせてしまうほど驚いてしまったんだ。



…まさか!?



「北条辰雄っ!?」



共和国の英雄が目の前にいる。



これまでにも幾度となく対立してきた人物であり、

共和国において最上位に数えられるほどの実力者でもある男だ。



…鞍馬総司令官が倒れた今では。



国境警備隊の頂点に立つと言っても過言ではないほどの人物だ。


それほどの人物が目の前に現れたことで、

雪の体を抱きしめる手に自然と力がこもってしまう。



…何故、ここに!?



共和国の国境警備隊司令官であり、

現在も続いているセルビナ王国との戦争において指揮をとっているはずの人物。


それが今はここにいるんだ。



その事実に疑問を感じて緊張を漂わせたところで、

北条辰雄が微笑みを浮かべながら話し掛けてきた。



「ははははっ。そう慌てるな。俺としては争うつもりなんてないからな。」



…は?



どういうことだ?



共和国の幹部が僕と争うつもりがない?


それはどういう意味だろうか?



そもそもどうしてここに北条辰雄がいるのかも分からないけれど。


これほど友好的な態度を見せる理由もわからない。



「まあ、色々と事情があってな。」



北条辰雄はまっすぐに僕の傍に歩み寄ってから、

僕の腕の中にいる雪の頭に手を置いた。



「瀕死の重傷だった所を雪に助けられたのだ。」



…雪が北条辰雄を助けた?



確かに僕としても共和国軍を救出するように指示は出していた。


そして雪がセルビナ方面に向かったことも把握している。



だけど。


それと北条辰雄がここにいる理由が繋がらない。



「雪があなたを保護したということですか?」


「ああ、そうなるな。」



…雪が救助したのか?



ひとまず北条辰雄がここにいる理由は理解できた。


だけど友好的な理由までは分からない。



表情こそ笑っているものの。


今も昔と変わらない強烈な威圧感を感じさせているからだ。



…昔と変わらない威圧感と、この迫力。



かつての争いの時と何も変わらないままだ。



今でこそセルビナ方面の国境警備隊の司令官として周辺諸国に名声を轟かせる北条辰雄だけど。


僕がまだ竜の牙に所属していた頃は、

互いに幾度も剣を交えた関係だった。



「…お久しぶりですね。」


「ああ、そうだな。」



緊張して話しかける僕に、

北条辰雄は笑顔で答えてくる。



「あの頃よりも随分と成長したようだな。魔術師としてもそうだが、人間としても良き方向に育った様子で安心したぞ。」



…安心?



どういう理由で友好的に接してくれるのかは分からないものの。


紗耶香や雪に対する接し方と、

これまでの言動を見て僕の評価を改めてくれたらしい。



「良い男に成長したな。」



敵対するどころか、

平然と笑う北条辰雄を見ているだけで疑問が募ってしまう。



…何故だ?



何故ここに北条辰雄がいるのか?という部分も疑問が残るものの。


それ以前に何故こんなにも北条辰雄が楽しそうなのかが分からない。



もうすでに5年ほど前の出来事とは言え、

僕達は互いに殺し合う関係だったはずだ。



それは紗耶香も同様の立場だけど。


仮にも反乱軍の中にいながら、

これほど楽しそうに笑える理由が僕には理解出来なかった。



「何故…ここに?」



どういう事情があるのかを問い掛けてみたんだけど。



「それが…ね。」



北条辰雄ではなくて紗耶香が答えてくれたんだ。



「どういう流れなのかは私もその場にいなかったから知らないけれど…セルビナ軍との戦いの中で雪と仲良くなったみたいなのよ。全滅の危機の中で雪を命懸けで守ってくれていたらしいわ。」



…雪を守った?


…北条辰雄が?



紗耶香の説明だけでは理解が追いつかなかったことで、

今度は雪が説明を続けてくれた。



「あ、あのね…。何となくお父さんと同じ感じがして放っておけなかったの。あの時のように死んでほしくなくて…生きてほしくて…。だから…ね。守りたいって思ったの。」



…あ、ああ、なるほど。



父さんと同じ運命をたどらせない為に北条辰雄を救助したのか。



雪は北条辰雄を守り、

北条辰雄もまた雪を守ったということだと思う。



戦場の絆…というものだろうか?



命懸けで守りあったきっかけは、

僕達の父さんに対する愛情だと理解できる。



…父さんと北条辰雄を重ね合わせて見ていたのか?



そして雪の想いを北条辰雄は受け入れてくれたらしい。



全くの他人でありながらも。


竜崎の名を知りながらも。


雪の想いを受け入れてくれたようだ。



それが理由なんだと…ようやく理解できた。




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