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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
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1733/1903

物量戦

《サイド:鈴置美春》



…う~ん。


…見た感じ、こっちの難易度は低めかも?



「こっちは2隻ですね。」


「私と鈴置さんで1隻ずつ沈めて終わりよね!」



徐々に接近して来る軍船を眺めてると、

和泉さんはすでに攻撃の準備を始めていたわ。



…1隻ずつ、なのかな?



簡単に言ってくれる和泉さんだけど。


実際にはそんな簡単な話だと思わない。



「そうそう上手くは行かないみたいですよ?」



私の視線は陰陽師軍が乗り込む船とは別の場所に向いているの。



「まだまだ残存する漁船も迫ってきていますから。」



見える範囲だけで数えても、

ざっと100隻ほどの漁船が姿を見せているのよ。



船が攻撃を受けることを警戒して一定の距離を保って動きを止めた軍船の代わりに、

幾つもの漁船が私達の船に迫って来てる。



「ゼルテニア海峡から続々と現れる漁船の妨害を受けて足止め状態の共和国軍の援護は期待できませんし、僅か2隻の海軍船よりも数百規模の漁船のほうが面倒だと思います。」


「あ~…うん。まあ…そうね。数で攻めて来られると面倒なのは確かよね〜。」



これが殲滅戦なら大規模魔術を放って終わりにできなくもないけれど。


今は救出作戦を展開中だから、

あまり強力な攻撃は出来ないわ。


船を失って海に落ちた共和国軍の海兵達の救助活動を阻害しない為に、

大規模魔術を控える必要があるから。



「少しずつ迎撃していくしかないですね。」


「面倒くさいわよね~?」



全力攻撃が出来ないせいで魔力が続く限りの長期戦になりそうなんだけど。


それでも和泉さんは海軍の船に狙いを定めてる。



「まあまあ、漁船のことはあとで考えるとして、ひとまず先に海軍船を沈めたほうが良いんじゃない?」



…うん、まあ。



それも間違いではないと思う。



結局ね。



どちらにも対応する必要があるから、

順番はどちらでも良いと思うのよ。



「とりあえず、1隻!!」



迫り来る海軍船の1隻に狙いを定めた和泉さんが全力で魔術を発動させたわ。



「鎌鼬っ!!!」



風の刃が陰陽師軍の海軍船に襲い掛かったのよ。


だけど和泉さんの魔術が船に直撃する前に、

陰陽師軍も反撃に出たの。



「急々如律令!!呪詛散開じゅそさんかい!!」



…ふ〜ん。



どうやら魔術を無効化する術式のようね。


防御系の陰陽術によって、

和泉さんの魔術は消失してしまったわ。



「ちっ!解呪が出来るのねっ!」



今回の海戦で初めて陰陽師と戦う様子の和泉さんは、

魔術が打ち消された事実に動揺している様子ね。



…まあ、私も同じ気持ちだけど。



「距離さえ詰めれば相殺なんてさせずに魔術をぶち込めるのに…。ここから動けないのが問題よね?」



…確かに。



後方からの援護に努めて、

軍船の安全優先する陰陽師は厄介だと思うのよ。



陰陽師の援護を受けながら漁船による特攻を繰り返すセルビナ軍も面倒だけどね。



ひとまず現状で陰陽師が乗り込む軍船を狙い撃ちにするのは難しいみたい。



前線の漁船と後方の海軍船。



その布陣の意味に気付いたことで、

決して楽な戦いじゃないと分かってしまったのよ。



「個人的な見解ですけど、こちらの疲弊ひへいを待つ作戦だと思います。漁船による特攻に対して、こちらが魔力を使い果たすのを待っているのではないでしょうか?」


「…おそらくそうでしょうね。この状況で物量戦で来られると…。正直な話、私達2人だけではちょっと荷が重いかも?」



…ですよね。



私も同意見なのよ。


御堂先輩や黒柳所長なら強引な力技で押し切れるかもしれないけれど。


私達の魔力の残量はこれまでの戦いによってすでに限界に近付きつつあるわ。



和泉さんはまだ少しだけ余裕がある様子だけど。


私は大規模魔術や防御結界の連続使用によって、

すでにほとんどの魔力を消費してしまっているのよ。



…こうなると。



15隻の共和国軍の船が合流するのが先か?


それともこちらの魔力が底を尽いて全滅するのが先か?



「ここからは時間との戦いですね。」


「…うん。まあ、ね。」



冷静に状況を判断してみたからか、

和泉さんは苦笑しながら問い掛けてきたのよ。



「それはそうと…随分と落ち着いてるわね。怖くはないの?」


「いえいえ、もちろん怖いですよ。」



…だけどね。



ここで怯えていても何も変わらないのよ。



「例え可能性が0に等しいとしても、私達が頑張ることで誰かが救えるのなら…そして一人でも多くの人々の命が救えるのなら…ここで迷っているよりも自分に出来ることをしようと思うだけです。ただ、それだけですよ。」



やるべきことが分かってるんだから、

焦る必要も迷う必要もないわ。



「私達が頑張れば救助した海軍の人達も漁船の迎撃に協力してくれるはずですから。」



私達の限界は近いとしても、

まだまだ戦える戦力はいるはずなのよ。


だからそれまでの努力だと信じて、

和泉さんにあとを託すことにしたの。



「私が時間を稼ぎます。」



あまり長時間は無理だけどね。



「海軍の人達も協力してくれると思いますので、出来る限りの時間は稼ぎます。その間に和泉さんは魔力を温存しておいてください。出来る限り魔力の消費を控えてセルビナ海軍の軍船が迫ってきた時に迎撃できるように待機していてください。」



…今はこれが最善策かな?



「あとのことは…お願いします。」



1秒でも長く、この船を存続させる為に。


そして1人でも多くの命を救う為に。



私は漁船への攻撃を開始したのよ。



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