夜明けと共に
《サイド:和泉由香里》
…ったく、もう~!!
この状況でどうしろって言うのよっ!!
不満を表わにしながら必死に戦場を見渡してみる。
だけど、どう考えても手の打ちようなんてないのよ!
…最っ悪の展開よね。
わりと本気で人生が終わったと思ってしまったわ。
…はぁぁぁ。
私の名前は和泉由香里。
セルビナ方面の海軍に参加する特風の一人として、
20隻ある船の一つに乗り込んでいたんだけどね。
セルビナ海軍の攻撃を受けたせいで、
すでに沈みつつあるのよ。
「セルビナ軍の攻撃を防げっ!」
「もう無理だっ!急いで避難しろーーっ!!」
船の各地で必死に叫ぶ海軍の兵士達。
だけどね。
すでにセルビナ軍に対して反撃に出る余裕なんてどこにもなかったわ。
他の船はまだ大丈夫みたいだけど。
私が乗る船だけは反撃よりも先に脱出を優先しなければ、
船と一緒に海の藻屑になってしまうからよ。
「急いで他の船に避難しないとっ!!」
焦りを感じてしまうけれど。
見渡す限り他の船もセルビナ海軍の攻撃を受けているようで、
いつ沈んだとしてもおかしくはない状況に見えるのよね〜。
「船を守り抜けーーっ!!」
「これ以上、セルビナ軍を近付けさせるなっ!!」
各船から響き渡る声。
だけどどう考えてももう手遅れとしか思えないのよ。
セルビナ海軍は50隻に及ぶ船を用意して共和国軍を取り囲んでいるわ。
…どう考えても撤退は無理!
…退路を全て断たれてるっ!!
どの方角を見渡してもセルビナ海軍の軍船の姿が見えるのよ。
…見事に敵の罠に嵌まったわね。
必死にルーンを構えてみるけれど。
この刃がセルビナ海軍に届くことはないわ。
現状では敵船に近付くどころか、
沈む船から脱出する為に海に飛び込んだ所を狙い撃ちにされてしまうのが目に見えてる。
…これが陰陽師の力なのね。
「まさか共和国の海軍がこうも簡単に追い込まれるなんて思ってもいなかったわ。」
命の危機に直面する状況。
全ての始まりは夜明けと共に訪れたのよ。




