信頼を失わないために
《サイド:御堂龍馬》
…はあ。
力の加減が難しいね。
素直に反省してしまう状況だったんだ。
…もっと努力する必要があるね。
使いこなせない力は、
時として害悪になりえる。
自分が扱える力をしっかりと把握して、
必要に応じて使いこなせるようにならなければ味方を攻撃に巻き込みかねない。
今回は黒柳所長が相手だったからこの程度の被害で済んだけれど。
もしも他の誰かだったら命を奪っていた可能性だって十分にありえるんだ。
…まだまだ修業が足りないな。
自分の未熟さを感じてため息を吐いてしまう。
…総魔なら、こんな失敗はしないのかな?
自分の力を使いこなせずに必要以上の被害を出すなんて、
総魔なら絶対にしないと思うんだ。
…ただ強くなるだけじゃなくてね。
力を使いこなせるようにならなければ意味がない。
だからまずは力を完全に使いこなせるようになることが今の僕に必要な成長だと思える。
「ヒーリング!」
黒柳所長に手をかざしながら魔力を込める。
微かに輝く僕の手。
あまり回復魔術は得意じゃないから、
即座に治療を終えることは出来ないけれど。
それでも何もしないよりは良いと思いたい。
「どうしますか?誰か呼んできましょうか?」
治療班を呼ぶかどうか問い掛けてみたんだけどね。
「いや…いい。」
即座に否定されてしまった。
「これでも一応は海軍の部隊を指揮する立場だからな。こんなぶざまな姿をさらすわけにはいかないだろう。」
…ああ、確かに。
そうかもしれない。
これから戦場に向かうというのに、
肝心の指揮官が戦闘不能では示しがつかないからね。
ただ黙って苦笑いを浮かべるしかなかった。
…やっぱり力加減は大事だね。
今は僕の実験の為に甲板への立ち入りが禁じられているからここに海軍の兵士達が来ることはないけれど。
これから命を預けるべき上官が一撃で戦闘不能になったと知られれば、
少なからず動揺させてしまうだろうからね。
場合によってはそんな上官に命を預けようとは考えなくなるかもしれない。
だから今はそうならないように。
海軍の信頼を失わないために、
黒柳所長が倒れた事実を極秘にしなければいけないのは僕でも分かる話だった。
「心配してくれる気持ちは有り難いが、今はこのままでいい。」
「あ、はい。分かりました。」
小さく頷く。
そして黒柳所長と僕の二人がかりで回復魔術を発動させながら、
黒柳所長の体調が戻るまで大人しく待つことにしたんだ。




