打ち砕かれる自信
《サイド:黒柳大悟》
「えっと…大丈夫ですか?」
…ふむ。
どうだろうな?
大丈夫と言えば大丈夫なのだが、
思うように動かない体では立ち上がることが出来ないのも事実だった。
…とは言え。
致命傷と言うほどではないからな。
時間さえもらえれば自分で治療できる範囲内に思える。
「まあ、何とかなるだろう。ただ、しばらくは体が動きそうにないが…。」
御堂君に答えながらも回復魔術で治療を試みる。
どう考えてもすぐには治りそうにないのだが、
手の施しようがないというほどではないだろう。
そもそも栗原君や神崎慶一郎のような魔術医師ほど回復魔術を得意としていないという問題もあるのだが、
今はそれ以上に予想を遥かに上回る攻撃を受けたことで回復が追い付かないというのが正直なところだろうな。
…まさかたった一撃で倒れるとはな。
数分は戦えるだろうと考えていたのたが。
実際には数分どころか僅か1分さえも耐えられずに、
最初の一撃を受けただけで戦闘不能に陥ってしまったのだ。
…それでも意識があるだけまだましか?
怪我自体はもう少し時間があれば何とかなるだろうからな。
…とは言え。
これほどの攻撃力を持っていても、
御堂君はまだ手加減をしているのだろうか?
もしも本気で暴れれば船が沈んでしまうだろうからな。
ある程度、力を抑えながら攻撃していたのは間違いないはずだ。
それなのに。
俺を戦闘不能に追い込むのに十分な破壊力を持っていたということになる。
「大した威力だな。」
「すみません。ここまでするつもりはなかったのですが…。」
…ん?
つまり力の加減に失敗したということだろうか?
俺を信頼しての一撃だったようだが、
御堂君自身にしても想定外の威力があったらしい。
俺のルーンをたやすく粉砕して、
俺自身にもかなりの深手を負わせたほどだからな。
瀕死の重傷とまでは言わないが、
身動き一つ取れない状況には追い込まれてしまっている。
これは研究所で実験をしていた頃とは比べものにならない成長だ。
たった一撃なのだからな。
御堂君の攻撃を受けただけで、
彼と自分の実力差を痛感してしまうほどだった。
…俺では話にならないな。
全力での戦闘というのならともかく、
魔術の威力としては足元にも及ばないようだ。
これまでの俺の自信はあっさりと打ち砕かれてしまったことになる。
…もはや御堂君の測定は不可能だな。
俺でさえ一撃で沈む現状では、
彼の実力を引き出せる人物などこの船にはいないだろう。
…可能性としては常盤君か栗原君なのだろうが。
天城総魔の意志を受け継ぐ二人なら可能性としては十分にありえるが、
どちらも戦闘経験はないに等しいからな。
…まあ、どちらにしても船の上ではこれ以上の調査は無理か。
御堂君の測定は諦めるしかない。
「御堂君の力は良く分かった。これ以上続ける必要はないだろう。しばらく休息をとってから会議室に戻ろう。」
「はい。」
即座に頷いてくれた御堂君だったが、
どことなく申し訳なさそうな表情を見せながら俺の治療に協力してくれていた。




