治療が先か、死が先か
《サイド:ウィッチクイーン》
…ふう。
…何とか逃げ切れそうね。
雪の救出は間に合ったわ。
部隊も壊滅前に合流できたのよ。
それだけでも運が良かったと言える結果だけど。
まだまだ安心は出来ないわね。
「共和国の国内全域に竜の牙の部隊が潜んでいることを考えれば、このまま無事に帰れる保証なんてどこにもないわ。」
共和国の各町を襲った竜の牙の残存部隊が道中に潜んでいる可能性が否定できないのよ。
仲間達の魔力は底をついてしまっているし、
戦力としてあてに出来ない現状なのに竜の牙に襲われたとしたら?
もしもそうなれば私一人で反乱軍を守りながら竜の牙を撃退しなくてはいけないということになるのよ。
その可能性を考慮しているからこそ無理にセルビナ軍と戦おうとはせずに、
最小限の攻撃だけを行って戦場からの離脱を急いでいたの。
…まずはミッドガルムの砦に撤退することが最優先よね。
竜の牙の追撃を回避しながらミッドガルムに撤退すること。
その一点に目標を定めて街道を駆け抜ける。
…それに、問題はまだあるわ。
雪が目覚めるまで北条辰雄の治療が出来ないのよ。
…それまで北条辰雄が耐えられれば良いわね。
意識を失っているだけの雪を目覚めさせるのは簡単だけど。
低下している魔力まではどうしようもないわ。
幸いなことに魔力を使い切って昏倒しているわけじゃないから、
魔力が回復するまで目覚めないということはないわ。
だから目覚めさせるのは簡単なのよ。
…ただ、ね。
雪の魔力が魔術を使える程度に戻るのが先か。
それとも北条辰雄の命が尽きるのが先か。
それは私にも分からないの。
…とにかく今は戦場を離れることが最優先ね。
治療はそのあとよ。
今はミッドガルムに向かって移動するしかないから。
そのために多くの仲間が待つ砦を目指して、
ひたすら走り続けることにしたの。




