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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
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ふがいない

《サイド:北条辰雄ほうじょうたつお



「…すまない。」



意識を失った雪を抱きしめながら、

何度も何度も謝罪する。



今の俺にはそんなことしかできなかった。



「ふがいない父ですまない。」



呟くと同時に。


何故か馬鹿息子の顔が脳裏を過ぎっていた。



「…ははっ!!」



…死の間際で、お前の顔を思い出すとはな。



ただそれだけのことで、

自然と笑顔を浮かべる自分がいたのだ。



…ふん。



くだらない喧嘩が絶えない関係だったが、

良い男に成長したな。



…それだけは認めてやろう。



馬鹿息子の成長を嬉しく思いながら、

娘の仲間達に呼び掛ける。



「雪を連れて撤退しろ。脱出への道は俺が命懸けで開いてやる!」



雪の体を預けながら、

地面に突き立てていたルーンをつかみ取った。



「命を懸けるのは親の役目だ!」



馬鹿息子を思いながら、

残り僅かな魔力をルーンに込めていく。



…最期の魔術か。



それは一つしか考えられんな。



「この魔術と共に…俺はお前に会いに行こう。」



最期に想う魔術の名は、

『シューティング・スター』しかない。



流れ星という名のこの魔術は、

たった一度だけ俺が真哉に指導した魔術だ。



そしてただ一つだけの想い出を持つ魔術でもある。



…なかなか人の言うことを聞かない馬鹿息子だったが、この魔術だけは必死に学んでいたな。



もちろんその理由は知っている。


その為に授けた魔術だからだ。



だからこそ俺はこの魔術に想いの全てを込めるつもりでいた。



…会いに行くぞ。


香苗かなえ真哉しんや



亡き妻と息子に想いを込めて、

星に全ての願いを込める。



ルーンという名の星に願いと力を込めて、

一度きりの魔術を展開するのだ。



「シューティング・スター!!」



魔力の解放と同時に、

広範囲の雨を吹き飛ばすほどの荒れ狂う風が生まれる。


そして轟音を巻き起こす風の塊がルーン全体を包み込んでいく。



「二度も我が子を死なせはしないっ!!」



子を守るためならば、

俺の命など喜んで捧げてみせよう。



「雪を守ってくれ…それだけを願う。」



俺の言葉を大人しく受け入れてくれたのだろうか?


雪の仲間達は素直に撤退の覚悟を決めてくれた様子だった。



「お心遣いに感謝いたします。」


「ははははっ!気にするな。雪を逃がしてやれ。」



雪の仲間達に後を託して退路を切り開く。


その直前になって、

事態が急変しようとしていた。



「司令官っ!!!」



俺に呼び掛けながら、

一人の男が駆け寄って来る。



…今度は何だ?



声に気付いて視線を向けてみると。


慌てながら駆け寄ってくる男は、

俺の直属の部下である鞍馬信彦くらまのぶひこだった。



…何かあったのだろうか?



後方の部隊を率いていたはずの鞍馬が、

必死の形相で駆け寄ってきたのだ。



「…どうした?後方の部隊が壊滅したか?」



鞍馬の行動を不審に感じて問い掛けてみると。


「い、いえっ。」



鞍馬は首を左右に振ってから、

待ち望んでいた言葉をついに告げてくれたのだ。



「援軍ですっ!ランベリアの部隊が接近しています!!リン・ラディッシュ様の部隊が確認できました!!」



…なんだとっ!?



鞍馬の報告に驚きながらも急いで東の方角へと視線を向けてみる。


激しい雨と薄暗い夜の暗闇で今は何も見えないが、

東の方角からは確かに魔力の波動が感じとれた。



「先行部隊の一部が後方部隊に合流しましたので間違いありません!!」



鞍馬が報告を行うのとほぼ同時に、

『ドドドドォォォンン!!!!!!』と激しい爆発音が各所で巻き起こった。



これは魔術による攻撃だろう。


その事実が理解できるまでに、

さほど時間はかからなかった。



…やっと来たかっ!!



自然と込み上げる笑み。


助かるかもしれないと思った瞬間に、

自己犠牲魔術を解除していた。



「どうやら死ぬのはまだ早いらしいな。」



援軍が着たのであれば、

共和国の部隊と合流して軍を立て直すべきだ。



「鞍馬!部隊を指揮して友軍との合流を急げ!」


「はっ!了解しましたっ!!」



急いで走り去る鞍馬の後ろ姿を見送ってから、

雪の仲間達に話し掛けることにする。



「援軍がきたようだ。これで脱出は可能だろう。それまでの間は俺がお前達を護衛する。」



再びルーンを構えて指示を出す。



「出来る限り東に移動しろ。ただし戦闘に巻き込まれないように気をつけろよ。娘の安全が第一だからな。」



ここからは時間との戦いになるだろう。



セルビア軍の追撃を受けて倒れるのが先か。


それとも友軍が到着して逃げ伸びるのが先か…だ。



考えられる可能性はそのどちらかでしかない。



「耐え切るぞっ!!」



残存する部隊を率いてセルビナ軍に立ちはだかる。



「国境警備隊の名に賭けて!ここから先は一歩も通さん!!!」



セルビナ軍の足止めを行うために最後の抵抗を試みる。



「共和国の名の下にっ!セルビナ軍を押し戻せ!!」



「「「「「うおおおおおおっ!!!」」」」」



援軍の到着によって士気の高まる仲間達。


その数は僅か数百とはいえ、

命懸けの猛攻によってセルビナ軍は怯えて立ち止まっていた。



「共和国を守り抜くぞっ!!」



「「「「「おおおおおおおっ!!!!!」」」」」



決死の抵抗を試みる俺達の部隊に、

ランベリアからの援軍は確実に迫りつつあった。



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