あとは野となれ
《サイド:鈴置美春》
…う~ん。
…結局、またここに戻ってきたわね~。
港で黒柳所長と話をしたあとでね。
私と千夏は他のみんなよりも一足先に、
船内の中心に位置する医務室に移動したの。
今はまだ他には誰もいないみたいだけど。
しばらくすれば瑞希ちゃんとか、
医師の先生達も来るはずよ。
…それまでは待機なんだけど。
「何となく久々な感じがするわね。」
「え〜?そう?」
個人的には見慣れた医務室に懐かしさを感じたんだけど。
千夏の感想は違うみたい。
「私の気のせいじゃなかったら、昨日もここにいたわよ?」
…あ〜、うん。
…まあ、そう言われるとそうなんだけどね。
「気分的に何となくそう思っただけよ。」
…どう思うかは私の自由でしょ?
「ほぼ丸一日離れていたんだから、間違ってはいないはずよ。」
「まあね~。そのおかげでまた船酔い続出でしょうけどね~。」
…ああ、まあ、確かに?
…それはあるでしょうね。
だけどそこはまだ気にしなくても良いんじゃない?
…何ていうか。
…千夏といると変に疲れるわね?
大親友だとは思っているけれど。
ときどき疲れる時があるのよ。
…まあ、そんなことはどうでも良いんだけどね。
「それよりも、さっきの話なんだけど…。千夏はどう思う?」
「ん?さっきって…潜在能力のこと?」
「そうそう。」
私はずっと気になっているのよ。
「う~ん?」
千夏は顎に指を当てて、
首を左右に揺らしながら考え始めたわ。
たまに見せる変な仕草なんだけど。
千夏らしいというか、
考え事をしてるっていう雰囲気が見るからに伝わってくるのよ。
「どうかしらね~?正直に言うと良く分からない…なんだけど。そもそも私はそこまで興味がないって言うか…実力どうこうよりも楽しく過ごせればそれで満足だから、あとは野となれ…っていう感じ?」
…はぁ?
なにそれ?
何の答えにもなってないわよね?
…はぁ。
千夏に聞いた私が馬鹿だったわ。
悪い子じゃないんだけど。
根本的に向上心が足りないのよね〜。
やる気がないわけじゃないんだけど。
最低限の努力しかしない感じ?
だから成績も4000番台っていう平凡な数字なんだけどね。
もちろんそういう子がいても良いとは思うし、
戦闘が全てじゃないから文句を言うつもりなんてないわ。
そもそも千夏は医師志望だしね。
そっち方面の勉強は頑張ってるから、
それだけで十分だと思うのよ。
だけどね?
私はもっと成長したいって思うの。
どこまで出来るかは分からないけれど。
出来ることは全部やってみたいのよ。
…とは言ってもね?
潜在能力?
なにそれ?
言い方を変えれば才能ってことよね?
翔子は覚醒したけれど、私はどうなのかな?
…一応ね。
翔子と私は似たような能力だと思っているわ。
同じ光属性の使い手だしね。
攻撃特化の翔子ほどではないけれど。
私も光属性を得意としているのよ。
…まあ。
はっきり言うなら、
翔子の劣化版かもしれないけどね。
自分でもそう思うの。
光属性だけでみると私は翔子には届かないわ。
でもね?
回復魔術は翔子に圧勝してるはずよ。
特化型じゃなくて、万能型だしね。
負けてる部分はあるけれど。
勝ってる部分もあるはずなの。
…って言っても。
成績ではダントツに負けてるけどね。
だから翔子には届かないとしても、
私なりに成長したいって思っているの。
…と言うか。
まずはルーンが使えるようになりたいかな?
純粋に格好良いし。
上級者の仲間入りをしたっていう感じがするのよね〜。
だけどイマイチ良く分からないのよ。
どうすれば使えるの?
どうすれば発動するの?
さっぱり分からないわ。
図書室で調べた限りでは詳細が不明なのよ。
情報が意図的に隠されているような気がするくらいにね。
ルーンに関する書物が全然見つからないの。
もちろんそうしなければいけない理由があるからでしょうけれど。
…結局ね。
たどり着く答えはいつも一つ。
…とりあえず、努力よね。
天才と呼ばれた人とか、
英雄と呼ばれる人と同じようにはなれないわ。
だけどね。
凡人にも出来ることはあるはずなのよ。
…私は私。
…優秀な人達と比べる必要なんてないわ。
無理に背伸びをしようとは思わない。
私は私で良いと思うから。
…もちろん最終的に翔子を越えられれば、文句なしだけどね〜。
でもね?
例えそこまで届かなくてもね。
自分で満足出来る結果は出したいって思うのよ。
…だからまずは御堂先輩に相談してみようかな?
迷惑でなければ、だけど。
一度くらいなら話を聞いてみるのも良いかもしれないわよね?
「あとで御堂先輩に会いに行こうと思うんだけど、千夏も行く?」
「え!?御堂先輩に!?行く行く!行くわっ!!行くに決まってるじゃないっ!!美春一人で抜け駆けなんて許さないわよっ!!」
…別に抜け駆けなんてしないわよ。
なんて思うけど。
言っても千夏は聞かない気がするわね。
…はぁ。
ため息が尽きないわ。
ときどき思うことだけど。
千夏の性格は良く分からないのよ。
良い意味で自由奔放だから。
明るくて前向きな性格が羨ましいって思うのよ。
…まあ、どうでもいいけど。
何かを諦める心境でね。
千夏に話しかけることにしたの。
「とりあえず今回の勤務予定が決まったら、時間を見て御堂先輩に会いに行くわよ。」
「おっけ~!!!!!」
激しく同意する千夏と一緒に、
医務室に関係者全員が集まるのを待つことにしたわ。




