他の条件は
…ホントにね?
単にキスをするくらいなら別に良いかも?って思うのよ。
そこにこだわるほど夢見る少女でもないしね。
それくらいなら別に良いの。
…別に何かが減るわけでもないし。
これが全然知らないおっさんが相手とかなら全力でお断りだけど。
女性同士なら?
…と言うか。
見た目はすっごい美人のお姉さんだし?
その点で言えばね。
気持ち的には何の問題もないわ。
でもね?
相手が美咲さんとなると話が変わってくるのよ。
色んな意味で男女問わずの超危険人物に狙われているのよ?
この状況でキスくらいなら…なんて言っていたら、
そのたった一瞬の出来事のせいで色々と大切な物を失うんじゃないかな?って思えるくらい危険な香りがするわ。
…とは言っても、ね〜?
…嫌だけど。
…怖いんだけど。
ここで諦めたらみんなに追い付けないかもしれないのよね?
成長出来ないまま悩み続けるなんて、
つまらない後悔だけはしたくないわ。
美咲さんが何を教えてくれるのかは分からないけれど。
今のままでいるくらいなら、
ここで人生を賭けてみるほうが良いかもしれないって思うのよ。
…まあ、全く知らない人というわけでもないしね。
相手が美咲さんなら割り切れるかもしれないし。
少しでも強くなれる可能性があるのなら、
協力してもらうべきなのかもしれないわ。
…他に方法がないのよ。
少なくとも可能性と呼べそうな選択肢は何も思い浮かばないの。
ただ単純に魔術の勉強をするよりも、
美咲さんの指導があったほうが確実なはず。
仮にも暗黒迷宮の関係者の美咲さんになら、
頭を下げる価値はあるはずなのよ。
そう思えばキスの一つや二つ…なんて、
思えないから悩んでるんだけどね~。
…うぅ〜ん。
別に美咲さんが嫌いなわけじゃないわよ?
美人だし優しいし素敵な人だとは思うわ。
ただ一つの問題を除いては…だけどね。
…はあ。
条件がキスだけで済めば良いんだけど。
何故か不安が募ってしまうのよね。
「本当にキスだけで良いんですよね?」
「ええ♪乃絵瑠ちゃんの唇をもらえるのなら、それだけで十分よ。」
念を押して確認すると、
美咲さんは笑顔で頷いていたわ。
…う~ん。
…それでも、まだ信用できないのよね~?
「他の条件はないですよね?」
「ええ。『一切』条件はつけないわ。」
はっきりと断言してくれてる。
まだまだ信用は出来ないけれど。
今は信じるしかないのかも?
「本当にキスだけですよ?他は絶対に認めませんよ!?」
「大丈夫よ。約束するわ。」
美咲さんは絶えることなく微笑み続けてる。
「私が乃絵瑠ちゃんに手を貸す代わりに、乃絵瑠ちゃんはキスをしてくれればいいの。ただそれだけよ♪」
…ただそれだけ、ね。
本当にそれだけで終わるのかどうかが信じられないんだけど。
私を見つめる美咲さんの言葉を信じてみるしかないみたい。
「そ、それじゃあ…。キスだけ…。」
「ふふっ♪」
顔を真っ赤に染めながら緊張する私を見て、
美咲さんはとても嬉しそうに微笑んでいたわ。




