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ガブリエル

 翌週、次々と崇高なる野望をサリエルに邪魔され怒り心頭のグレモリー!。

 かと言って怒りに任せ奴の教会に殴り込むのは自殺行為に等しい、それに何より優先するべきは逼迫した軍資金の調達である、何かよい案が生まれないかと、グレモリーは気分転換にお気に入りのカフェで今後の構想を練ることにした。


(うぅ、結局あのレストランとホテルは当日キャンセル出来なくなっていたから、渋々食事とホテル宿泊したが、何も満足する事は出来なかった…残金も3万円しか無いし…これも全部あのサリエルのせいじゃ!)


 日曜の穏やかなアフタヌーン、ラクダを疾走させるグレモリーの頭には金色のヘルメットが太陽の光りを反射させている、魔界では常に黄金のティアラを装飾していた記憶からこの色のヘルメットを購入していたのだ、ただ…やたら人の視線が気にはなるが…。


「のうラクダよ、今日は特に行交う人間共がわらわの方を見ておるが、これはやはりわらわの美貌に惹かれておるのじゃな♪」


「……ちょっと違うと思うけど……それ以上はノーコメント…」


 カフェに到着したグレモリー、いつものようにタージリンティーとレアチーズケーキセットを注文し、淑女らしくエレガントに先週の競馬とサリエルの糞野郎を忘れるつもりでいたのだが、すぐ後ろの席でたちの悪い連中達が女性店員に難癖をつけている光景を目の当たりにする。


「おいおい、この店は客に髪の毛が入ったコーヒーを出すのかよ!」


「い、いえ…その様な事は…いつも衛生には気を使っていますので、髪の毛が入るなど…」


「だったらこのカップに入っている毛は何なんだよ!」


(チッ、この地上界はオスがメスに威勢を張るのが当たり前なのか!気に入らぬ!)


「申し訳ございません…新しいのと交換を……」


 サリエルの件を忘れたいが為に、優雅なアフタヌーンティーを楽しもうとしていたグレモリーだったが、更にこれまで燻っていた怒りが沸々と胃の奥から湧き起こり始める!。

 一方その頃、サリエルは教会の地下にある執務室にて、聖なる水晶を使い天界の天使長ガブリエルに悪魔グレモリーと遭遇した事について協議をしていた。


「本当ですか?サリエル?あの悪魔公爵グレモリーが2025年の東京に出現したのは?」


「間違いありません、最初は魔力を封じ一般女性に成り済ましておりましたが、私が少し挑発した際に本性を現し、短時間ではありましたがヤツと交戦しました、あの槍裁きと尋常ではない魔力…間違いなくグレモリーです!」


「……何故、あの悪魔公爵が東京に……気になりますね……この数百年、地獄界に潜んでいるとは聞いていたのですが…」


 天使長ガブリエル、黄金の長い髪に似つかわしい容姿端麗で勇猛果敢、膨大な知識力と温かい慈悲の心を持ち合わせる最高位の天使、そんなガブリエルも地上界にグレモリーが突如出現した事に困惑の色を隠せなかった。


「どういたしますか?勅命を出していただければ、私がグレモリーに天の裁きを下しますが…」


「いえ、それはまだ危険が大きい…それに、グレモリーが単身でこの地に現れたのかどうかも不明…恐らく何百と屈強な配下の者を連れて来ていると見るべきでしょう…サリエル一人では荷が重いかも知れません…もう少し様子を見ることにしましょう…」


「しかし、その間にヤツがこの地に災いをもたらす事もあるのでは?」


「その可能性はまだ低いでしょう、他の天使からの報告でも、管轄している地で不穏な気配は起こっていないようですし……ただ…」


 ガブリエルは自身が学んだ膨大な知識を次々と脳裏に浮かばせていく、そんな右手の拳を軽くアゴ先に当ている姿も天使長らしく気品に満ちており、正に非の打ち所が無い神の使いである。

 そんな彼が一つの対応策を思い付く!。


「サリエル、私は毎年10月、出雲にて開催される神議かみはかりの席に参加しようと思います、古来よりこの日本を守っている神々にグレモリーの存在を公表し、我ら天使との繋がりを固め、この事態に向き合ってもらいます」


「西洋の天使を彼らが受け入れてくれるでしょうか?」


「私と親交のある摩利支天(まりしてん)様に口添えをしていただこうと思います、それまであなたはグレモリーが地獄界からどれだけの悪魔を同行させたのか調べてください、その間は彼女への挑発行動は一切禁止とします!その理由はお解かりですね?」


「御意!」


 あの凶暴なグレモリーをこのまま放置しておいてよいのだろうか?そう思いながらもサリエルは、この表向きは平和な日本の地が、天使と悪魔の戦場になる事だけは避けなければならないと自分に言い聞かせていた。


「我ら天使と日本の神々が手を結ぶまで、グレモリーが人々に対し残虐な行動を始めなければいいのですが…」


 同じ時間にガブリエルとサリエルが深刻な表情で協議をしているとは当然知る由も無いグレモリー…そんな彼女は静かにタージリンティーを口に付けながらも、女性店員にいちゃもんを付けている男共に怒りの指針の先が天井を指していた!。


(おのれ!極貧であるわらわの唯一の楽しみであるティータイムを邪魔しおって…)


「おう、おう!こんなコーヒーを飲ませるとは、お姉ちゃん!どうしてくれるんだ?」


「で、ですので…新しいのをお持ち……」


「はぁ?俺達の言ってる意味が分かっていねぇようだな?…おい、店長をここに呼べや!」


 この店には女性客が殆ど、店員にいちゃもんを付けているオス共は3人、当然誰もあのオス達に意見を述べる者なんていない、そう!約1名を除いては…。


(あのやかましいオスのせいで、わらわのように美しいピアノジャズの音色が聞こえんではないか!)


 ついに限界を迎えたグレモリーは席から立ち上がると、ガラの悪い男と女性店員の間に割り込み、男を睨み付けた!。

 その男の風貌はどう見ても知的さに欠け、派手な服を着ている体型はいいものの、それ以外はゴブリン以下の爬虫類程度にしかグレモリーには見えなかった。


「はぁ?なんだ姉ちゃん!俺達に文句があるってのか?」


「わらわの優雅な時間を台無しにしおって!このイボガエル共!」


「姉ちゃん!誰に向かって……お、これは中々の上玉じゃねぇか♪どうだ。これから俺達と酒でも呑みに行こうぜ♪その後、俺達がもっといい事を教えてやるからよ!」


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