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人助けをしたら美少女に惚れられて偉い人に褒められるんですけど!  作者: マノイ
第三章

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18. 因果応報? その12 京極 芹那、東雲 美月、花ヶ前 真夜、神々 椿

本日も一話投稿します。

「みんな繋がっているかしら」

「おっけーだよ」

「良さそう」

「わたくしも大丈夫です」


 ノートパソコンに映るパジャマ姿の美少女達。

 それぞれの画面には相手の上半身と自室が映し出されていた。


 パジャマテレパーティーである。


「それじゃあ話を始めるわね」


 今回の企画の発案者は椿である。

 瀧川女学院からの外出を許可されていない彼女が、手軽に芹那達と話をする方法として電話会議を選択したのだった。


「その前によろしいでしょうか」

「何?」

「直接お話しなくても大丈夫でしょうか?その……言いにくいのですが聞かれている可能性もあります」


 話の前に真夜が気になることを確認する。

 この街で電話会議などしようものなら、瀧川女学院に通話の内容が筒抜けの可能性があると。しかも一人は瀧川女学院の寮から接続しているのだからその確率はさらに上がるだろう。

 今日の話は、あまり他者に知られたくない内容なのだ。


「それは諦めましょう。貴方達がこっちに来たとしても、敷地内で話をしていたら結局筒抜けよ」

「……確かにその通りですね」


 しかし椿が瀧川女学院から出られない以上、学院側に聞かれることはどうあがいても防ぎようがない。女学院内部での話も間違いなく聞かれるからだ。


「それじゃあ気を取り直して進めるわよ。まずは理事長が言ってた奏様の危機について」

「何か分かったことあるの?こっちは全然だよー」


 芹那は警視総監である父親を通じて日本全国の裏事情を教えて貰っている。

 だが日米首脳会談に向けての不審な点はいくつかあるものの、奏に関わりそうな話は全く見つかっていない。


「こっちもダメ」


 美月は銀行頭取である父親が金の流れを調査しているが、こちらも芹那と同様で奏に関することは見当たらない。


「わたくしも同じです」


 真夜もまた三峰財閥会長である祖父が力を尽くしているが結果は同じである。


「パパに関しては私も同じよ」


 総理大臣である椿の父親も、日米首脳会談を成功させるために全力で動いてはいるが、自分達の安全を確保するだけで精一杯であり奏に関する対応まで出来ていないのが現状だ。アメリカ大統領が狙われているということは一緒にいる総理大臣にも危険が及ぶ可能性があるのだから仕方のないところ。


「でもそれ以外で分かったことがあるのよ」


 しかし椿は偶然にもヒントを入手した。


「先日の交流会での出来事は知っているかしら?」


 それは奏が瀧川女学院に訪れた時に発生した事件である。


「知ってるよー」

「私もそこに居たかった」

「は、は、ハレンチです!」


 芹那達も何が起きたのかは知らされてはいるが、細部まで教えられたわけでは無い。

 その点、椿は当事者であり現場ならではの感覚で気付くことがあったのだ。


「念のため詳細を伝えておくわね」


 生徒達が制服を脱いで奏に迫ったこと。

 椿の心の中に奏を求める強い気持ちが湧いたこと。

 レイリーが便乗しようとしたこと。


 椿が感じたことも含めて、事件について詳細に説明する。

 そして、椿が事件後に気付いた重大なことを伝えた。


「恐らくあの事件の参加者の中に奏様を害する人がいるわ」

『え?』


 金城が告げた奏の危機。

 その原因となる人物があの交流会の参加者の中に含まれていると考えたのだ。


「そもそも、学院側の行動が全く無かったのがおかしいのよ。いくら理事長が不在とはいえ、あれほどの異常事態が起きたとなれば教師達がすぐにでも飛んでくるはずだわ」

「そう言われてみれば変だね」

「何らかの事情で学院内を監視していなかった可能性はございませんか?」

「それはそれで大問題な気がする」


 まず、外部から人が来ているのに監視していないことがあり得ない。

 本当に監視していなかったのならば、監視を邪魔する大きな問題が発生したことになる。

 それはそれでタイミング的に交流会の参加者が学院に何らかの攻撃を仕掛けたという事になる。


「監視が邪魔されていた可能性は無くは無いけれど、事件に対応する教師達があまりにも自然に対応していたから、恐らくは監視して状況を理解していたのだと思うわ」


 事件が終息し、救助にやってきた教師達は、まるで何が起きていたのかを事前に知り対処方法を決めてあったかのようにテキパキと行動していたのだ。その異常さに椿は気が付いていた。


「となると学院は敢えて事件に介入せずに状況を見ていたことになるわ」

「何故でしょうか?」

「奏様や瀧川女学院に敵対する人物を特定しようと考えたからだと私は思ってる」

『……』


 椿の推測の通り、学院は生徒達を囮にして敵を見つけようとしていた。


「ここまではほぼ間違いないと思っているわ。問題はここからよ」


 ここまで椿が考えたことは現場の様子を思い出せば想像出来る範囲内のものだ。

 だがここからは妄想とも言える推測になる。


「あの事件の犯人が、理事長が言っていた奏様の危機の関係者ではないかしら」

「タイミングが良すぎるから」

「ええ、その通りよ」


 理事長から話を聞かされた直後に奏が狙われたのだ。無関係だと思う方が無理がある。


「犯人は交流会に訪れていた大月高校の生徒達。あるいはそう見せかけるために瀧川女学院内部の誰かがやった可能性もあるわね。いや、流石にここにスパイがいるのは無茶があるかしら」


 瀧川女学院の高度なセキュリティを突破してスパイとして潜り込むというのは、椿としては考えにくかった。この辺りはセキュリティの具体的な内容を知っているか否かで印象が変わって来るであろう。椿は詳細に知っているため、スパイの存在が非現実的であると感じていたのだ。


「待ってよ椿ちゃん。あの時のみんな、誰も捕まってないよ?」


 だが、仮に大川高校の参加者の誰かが犯人だったとしたら、すでに瀧川女学院に確保されているはずだ。しかし彼らは今も普通に高校に通っている。


「恐らく誰が犯人なのか特定が出来なかったのではないかしら」

「すごすぎ」

「鈴江さんに尻尾を掴ませないなんて、信じられません」


 敵地であれだけ大きな事件を起こしておきながら簡単に逃げられる。瀧川女学院として面目丸つぶれといったところではないか。


「犯人はほぼ特定していると思うけれどもね。証拠が掴めないのか、敢えて泳がしているのか、その辺りは分からないわ。この会話が盗聴されているなら教えて欲しいものだわ」


 瀧川女学院にこの会話が聞かれていることを前提で、敢えて聞いている誰かに向けてメッセージを告げる椿。どうせ返事は無いだろうが、ダメ元というやつである。


「ということで、みんなにはあの時の参加者の動向を注意してもらいたいのよ」

「クラスメイトを疑うのは嫌だなぁ」

「気が重い」

「わたくしも同じ気持ちですわ」


 クラスメイトとの仲も良くなっている矢先に、疑えなどと言われたら気が進まないのは当然の事である。


「少しの間だけで良いわ。日米首脳会談が終わっても何も起きなければひとまずシロだと思ってくれて良いから。その間だけでも気にして頂戴」


 気にすると言っても、これまで通りに誰かが必ず奏のそばに居れば良いのだ。

 普段とは違う特別なアクションがあるかないかだけを気にしていれば良く、露骨に疑って相手を監視しろなどと言う訳では無い。


「頭の片隅にでも置いておいてくれれば良いわ」


 椿がこの会議で伝えたかった結論はそれだけだ。

 芹那達がやることは大きく変わらないだろう。


「それじゃあ今日の本題に入ろうかしら」


 これまでの話は挨拶みたいなもの。

 椿が今日本当に話をしたかったことは別にあるのだ。


「本題ですか?」

「さっきの話をしたかったんじゃないのー?」

「何の話?」


 芹那達も今日の話の内容は事前に聞いて無かったようで、先程の真面目な話がメインテーマだと思い込んでいた。


「そりゃあ電話会議とはいえパジャマパーティーなんだから、やることは一つでしょう」

「恋バナ!」

「いえす」


 なんてことはない。

 奏に関する恋バナをしたかったのだ。


 空気が一気に甘く変化する中で、椿がいきなり爆弾を落として来た。


「このままだとハーレムになりそうだけれど、貴方達はどうするつもりかしら?ちなみに私はハーレムでも奏様と結ばれたいと思ってるわ」

「ふぇ?」

「何をいきなり」

「ですが椿さん。奏様は選んで下さると仰ってますよ」


 芹那達が一年間という期間を設け、奏は仲を深めつつ選ぶと宣言した。

 その結果誰かが悲しむかもしれないけれど、その状況を受け入れるのが男だろうと啖呵を切った。

 ゆえに芹那達も、最終的には誰か一人だけが奏のパートナーになるのだと思っていたのだ。


「ありえないわ」


 だが椿はその未来をバッサリと斬って捨てる。


「私達は奏様のスキルの影響を受けている」

「守られているという意味でしょうか?」


 因果応報?スキルは絆が深い相手にも伝搬する。

 それにより強力なスキル耐性や『報い』の発動など、様々な防御効果を得られている。


「いいえ、そちらでは無く『報い』の方よ」


 椿が考えているのは伝搬した効果では無く、奏本人のスキルによる『報い』に関することだった。


「いいこと。私達は奏様に恋をして受け入れて貰った。そして私達は遠慮なく奏様に好きな気持ちを伝えようと行動を起こしている。これを奏様の視点で考えるとどうなるかしら」

「……好きな人から好きな気持ちを伝えられる?」

「美月の言う通りよ。そしてその気持ちは奏様に大きな影響を及ぼすでしょう」

「だから『報い』が発動するんだね!」

「それなら私達が受ける『報い』の内容は何になるかしら?」

「奏様から好きな気持ちを伝えられる」

「そして私達は喜び、奏様の事を更に好きになる。そしてより強くなった好きの気持ちを奏様に伝えると……」

「どうしよう!奏様からもより強くなった好きな気持ちが返って来ちゃう!」

「そう、ループしているのよ」


 奏がお嬢様達から好きな気持ちを伝えられ、喜び、嬉しくなり、自分の気持ちをお嬢様達に伝え返す。

 お嬢様達は奏から『報い』によって好きな気持ちを伝えられ、喜び、嬉しくなり、膨れ上がった気持ちを奏に伝える。


 気持ちを伝え合うことで想いは膨れ上がり、膨れ上がった想いを相手に伝えて更に膨張する。


 お互いが好きな気持ちが無限に上昇するループ構造になっているのだ。


「さて、そんな状況で奏様は本当に一人を選べるかしら。選んだところで選ばれなかった人は諦められるかしら」

『……』


 尋常ではない程に好きになってしまった相手を諦めることなど、恐らくは出来ないだろう。

 その状況で考えられるのは二つ。


 一つは、何が何でも奏に選ばれるように戦う事。


「『報い』があるから仲違いは出来ないわ。例えば私が奏様に選ばれたくて三人の悪評を奏様にさりげなく伝えたとすると、奏様のスキルが伝播されている三人それぞれから『報い』が返って来て私の悪評が三倍奏様に伝わってしまうでしょうね。つまり自分が勝つために友人関係を壊してまで戦うのは自滅にしかならないのよ」


 だが因果応報?スキルにより相手を害することが出来ない状況であり、戦うことは出来ない。


 ゆえにもう一つの手段を選ぶしか無いのである。


「だから私達が選べるのは一つだけ。全員が奏様のパートナーになることなのよ。例えこの国では異常だとしても、ね」


 金城が奏のスキルについて知り夢想した『世界平和』。

 その時は、犯罪者が『報い』を躊躇して犯罪行為を犯せなくなるためだと思っていた。

 これはあくまでも人間の負の部分をスキルで強引に抑え込む考え方だ。


 だが、因果応報?スキルは人間の正の部分を強化する面もあったのだ。

 好きな気持ちが報われて、更に相手を好きになる。

 恋愛で無く親愛でもこのループは発生し、相手を幸せにしたいという感覚が激増する。

 このループの対象が広がって行けば、世の中が『優しい世界』になる可能性があるのだ。


「少し、怖い。恋に狂ってしまいそう」


 今ですら耐えられない程の恋狂いになっているのに、これ以上奏を好きになったら正気でいられるのだろうか。それが美月には不安だった。


「狂ってしまえば良いじゃない。多分それが一番幸せよ」


 椿はそれを受け入れると表明したのだ。

 狂いに狂って最高に幸せになってやるのだと。


「(それに、多分限界はあるからね)」


 無限に好きな気持ちが強くなるなどと表現はしたが、実際はどこかで上限に達するだろう。

 そして最高に好きな気持ちが延々と続く、幸せな日常が待っているのだ。

 感情が昂りすぎて悪い意味で気が狂ってしまったら、それは幸せでは無い。そんな不幸せは『報い』にはなっていないのだから。


「さぁ、覚悟して奏様のことを想いましょう。ひとまず芹那から順に奏様への想いを口にしましょうよ」


 この日、四人は夜遅くまで『恋バナ』に明け暮れた。

 奏への想いを共有し、女性陣の絆を深め、ハーレムを作る準備をするかのように。


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