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人助けをしたら美少女に惚れられて偉い人に褒められるんですけど!  作者: マノイ
第三章

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11. 美少女達の園にまた招待されたんですけど

 梅雨に入り一学期の期末テストが近づいて来た時期、突如発生した真夜の問題は奏の機転により即座に解決へと向かった。

 だが、同時期に発生したもう一つの問題については、解決どころか悪化するばかりであった。


「あ~そうだよな。栞は瀧女の子とは違ってガサツで思いやりが無いのを忘れてたよ」

「なんてこと言うのよ!」

「自分で言ってたことだろ。悔しかったら少しは彼女達を見習って見ろよ」

「別に悔しくなんかないもん。なんであんたなんかのために変わらなきゃならないのよ」

「俺のために変われなんて言ってないだろ。自意識過剰じゃね?」

「そんなやらしい目で人をじろじろみておいて自意識過剰だなんて笑わせるわ。この犯罪者が」

「あぁ!?」

「何よ!」


 ケンカした当初は辰巳が栞に誠心誠意謝っていたのだが、栞が中々許してくれないため辰巳が逆ギレしてしまったのだ。キレた辰巳が悪くはあるのだが、こうなってはもう簡単には元には戻らない。毎日のようにお互いを罵倒する日々が続き、クラスの雰囲気も段々と悪くなってしまったのだ。


「ほら二人とも。もう授業はじまるよ」

『ふん!』


 お互いを見ようともせずに怒って自席へと向かう二人を見て奏はため息をついた。


「(どうしよう。もう手が付けられないよ)」


 付き合いの長い幼馴染だ。

 これまで大喧嘩したことはあるが、ここまで根が深いものは初めてだ。

 もしかするとこのまま喧嘩別れして元通りには戻らない可能性もあり、奏は焦り始めていた。


 そんな奏の元に、一通のメッセージが届いた。


「(お婆ちゃん?)」


 それは金城からのものであり、更に奏を悩ませる話であった。




「……」

「……」

「はぁ」


 土曜日の午後。

 奏達は校門の前で迎えが来るのを待っていた。

 辰巳と栞は相変わらずの絶縁状態。それ以外のメンバーは期待に胸を膨らませて良い意味での緊張感を抱いていた。


『娘達が大川高校の生徒達にまた会いたいってお願いして来るのよ。良ければ授業とか関係なく遊びに来てあげてくれないかい』


 交流会の参加メンバーに金城からのメッセージを伝えたら大喜び。

 また彼女達に会えるとワクワクしているのだ。


「はぁ……」


 奏はいくつもの不安を抱えており、思わずため息が漏れてしまった。

 幼馴染ーずのケンカ、お嬢様学校へ向かうことへの緊張感、そして隣には芹那達がおらず椿が待ち受けている事。


 そう、今回は向こうに椿がいるということで芹那達は各々部活に勤しむことに決めたのだった。


「(流石に同級生が居るところで無茶はしないと思うけれど……)」


 家に押しかけて来た時のような強引な手段を取らないとも限らない。

 むしろ同級生を証人とするために敢えて迫って来て見せつけようとする可能性も無くは無い。


「(無事に帰ってこれるのかな)」


 まるでこれから魔境にでも向かうかのような心境。

 瀧川女学院に向かうのはこれが三度目であるが、今回が一番憂鬱な奏であった。


 そんな奏の心配が的中したのか、瀧川女学院に到着して車から降りると椿が待ち受けていた。


「ぴえっ!」

「……」


 しかも速攻で奏に抱き着いて来たのだ。

 芹那達とは違い瀧川女学院から出ることを許されていない椿は、会えなかった寂しい時間を取り戻すかのように、奏の胸に顔を押し付けて奏成分を堪能していた。


「(ぴえ……苦しい……)」


 しかも両腕に力を入れて抱き締めているため、奏の体が悲鳴をあげていた。


「(痛い……お、折れ……)」


 どうしても恋愛的な雰囲気にはなり得ない残念な椿である。


 そんな二人の元に第三者がやってきた。


「ハーイ!カナデさーん!」

「あ、レイリーさんこんにちぴええ!」


 アメリカ大統領の娘、レイリーが椿の存在を無視して奏に思いっきり抱き着いて来たのだ。


「相変わらずプリチーデース」

「ぴえええ、苦しい、苦しいよ!」


 豊満なバストに顔がうずめられ呼吸が出来なくなる奏。

 胴体にダメージを受けながら呼吸まで止められそうになり奏は気を失いそうだった。


「ソーリーソーリー!」

「ぷはっ、はぁっ、はぁっ」


 先に解放してくれたのはレイリーだった。

 椿はレイリーの行動をガン無視してまだ奏成分を堪能中だ。


「また会えて嬉しいデース!」

「僕も嬉しいよ」


 奏としてはちょっとした社交辞令のようなものだったのだが、レイリーは予想外の反応を返して来た。


「それじゃあミーの彼氏になってくだサーイ!」

「ぴえ?ぴええええええ!」

「可愛いのも素敵デース」

「ぴえ、ぴええええええ!」


 突然告白して来た上に、今度は体をかがめて椿ごと奏を抱き締め、顔中に何度もキスをしてきたのだ。辛うじて唇だけは死守した奏だが、突然の展開に大困惑する。


「ま、待って。待ってよレイリーさん。レイリーさんは僕がタイプじゃないんでしょ!?」


 レイリーは筋肉がある男性が好きだから奏は恋愛対象外だと告げていた。

 あれは一体何だったのだろうか。


「ミーはテレビでカナデの姿を見たデース。とっても格好良かったデース。やっぱり男は中身デース!」

「ぴええええええ!」


 手のひらクルックルである。

 だが奏はここで勢いに押されるわけにはいかない。

 すでに四人から想いを寄せられて限界なのだ。これ以上増えるのは心も体も持たないだろう。


 それに、奏には違和感があった。


「でもレイリーさん、本当は僕の事そんなに好きじゃないでしょ?」

「どうしてそんなこと言うですかー!悲しいデース!」

「だってレイリーさんの態度、好きな人じゃなくて可愛いものに対する態度なんだもん!」


 国の違いによる価値観の違いはあるかもしれない。

 だが、レイリーの態度はクラスメイトが奏を可愛い妹弟いもおとうととして愛でている雰囲気と何ら変わりが無かったのだ。芹那達のように奏を異性として意識して『好き』であるようには感じられなかった。


「……」


 奏の指摘により、それまでオーバーアクションで奏に接していたレイリーの動きが止まった。


「だから言ったじゃない。奏様はそんな浅い演技なんてあっさりと見破るって」

「……」


 そしてそのタイミングを待っていたかのように、ようやく椿が奏から体を離し、勝ち誇ったような笑みを浮かべてレイリーに追撃する。


「……でも……あの」

「はぁ、とりあえず寮に戻ってなさい」


 レイリーは何も言わずに肩を落として寮に向かって去って行った。


「ええと、椿さん、今のは一体?」

「……」

「そこで元に戻っちゃうの!?」


 流れ的におしゃべりモードで説明してくれるのかと思いきや、だんまりモードに戻ってしまった。


 丁度そのタイミングで後続の車がやって来て、クラスメイト達が到着した。


「皆様、ようこそ瀧川女学院へ」

「ええ、そこはちゃんとやるんだ……」


 そして椿は丁寧な礼を持ってクラスメイト達を出迎えたのである。

 翻弄されっぱなしで何処となく悔しい奏であった。


 クラスメイト達は椿に向けてそれぞれ挨拶を返す。


「こんにちわ!」


 スポーツ少女、山岡雫。


「こんにちわ」


 草食系男子。矢野涼真 


「こんこんー」


 自称恋愛マスター。岡杏奈


「こ、ここ、こんにちわ」


 普通オブ普通。松浦俊介


「こんちわー」

「こんにちわ」


 そして幼馴染ーずである。


「良かったわね。あんたの大好きなお嬢様と会えるわよ」

「本当にな。どっかのだれかみたいなガサツな奴と違うから超楽しみだわ」

「……」

「……」


 何かにつけて煽り合う幼馴染ーずを見て、奏は再度ため息をつく。

 その奏の服の裾を、椿が軽く引っ張った。


「え?何?」


 椿は幼馴染ーずがケンカしている様子を見ている。


「(何が起きているのか気になるのかな。クラス委員長だし、トラブルが起きないように確認したいのかも)」


 せっかくの私的交流会でギスギスした雰囲気になるのは避けたいところ。

 奏は椿に簡単にではあるが二人がケンカしている理由と今の状況を伝えた。

 大切な幼馴染ーずの分裂の危機であり、奏は話をしながら心配そうな顔をする。


「奏様、私に任せて。きっと二人の仲をとりもって見せるから!」

「え?」


 あまり話をしてくれない椿が、自信満々の表情で奏に任せてと告げた。

 まだ椿の事をあまり知らない奏であったが、不思議とその姿がとても頼もしく見えた。


「(リーダーの資質、かぁ)」


 何故、真夜では無くて椿がクラス委員長なのか。

 この雰囲気でクラスを取りまとめていたのなら、確かにそうなってもおかしくないと納得する奏であった。


「皆さん、案内の者を呼びましたので、こちらで少々お待ちいただけるかしら」


 本当は椿が案内役だったのだろう。

 しかし教師を呼んで代役とし、自身は先に校舎内に戻って行った。




 今回の交流会では、前回と同じグループに分かれて交流を深めることになっている。


 例えば矢野涼真は前回ゲームが得意と言う話をしていたようで、ゲーム機をもってきて生徒達にプレイする姿を見せていた。


「ほら、こうやって『連鎖』するんだ」

「わぁー次々と消えていきます!」

「綺麗!」


 得意の落ちゲーで大連鎖を見せて生徒達は大盛り上がりだ。


「でさー、怪しいと思って後をつけたら、やっぱり別の女と会ってたのよ。ちょームカついてぶん殴っちゃった」

「酷い……岡様の想いを無下にするなんて!」

「世の中にはそのような男性もいるのですね」


 自称恋愛マスターは恋愛話を延々と語り、こちらも黄色い声が何度も上がっていた。


 教室の外でも交流が行われている。

 山岡雫が陸上部のユニフォームを持って来ており、外で自分が走る姿を生徒達に見せていたのだ。こちらも彼女の格好良さに惚れた生徒達から黄色い声が上がっている。


 松浦俊介は……相変わらず質問攻めされていた。


「松浦様はどのような女性がお好みですか?」

「ええ!?」


 何故か普通の彼が生徒達から恋する目で見つめられているのだが、その理由は不明である。


 などなど、それぞれの得意分野を生かして順調に仲を深めていた。


 そんな彼らを奏は遠目から眺めていた。

 奏の担当は椿なのだが、椿は別の作業中。ゆえに臨時である人物が奏のフォローをすべく呼ばれたのだった。


「みんな楽しそうで良かったね」

「ミーもカナデさんと遊びたいデース」

「えぇ……」


 先ほど追い返されたはずのレイリーだった。

 レイリーはクラスメイト達を眺める奏を後ろから抱き締めて愛でていたのだ。


「(今回は変なことしないけど、椿さんに何か言われたのかな)」


 好きだ好きだと叫んだりキスをして来る等といった、過激な接触行為は抑えられていた。その代わり、普通に可愛いものとして扱われ愛でられていたが。


「そういえば椿さんは何処に行ったんだろう」

「ツバキは茶道部の部室に向かったデース」

「そうなんだ。それじゃあそっちに案内してもらえる?見に行きたいんだ」

「ラジャーデース」


 椿は幼馴染ーずと彼らを担当する生徒を連れて何処かに向かった。

 任せてと言われはしたが、幼馴染ーずが迷惑をかけていないか心配な奏。

 お互いに意地を張っており、ちょっとやそっとの手出しで解決する問題では無いからだ。


「あそこが茶道部デース」

「あ、椿さんだ」


 茶道部から出た椿は、奏達に気付かずそのまま隣の部屋へと入って行った。


「隣は……華道部?」


 ここは部室棟であり、茶道部の隣には華道部が、廊下を挟んだ反対側には使われていない空き部屋があった。奏達はひとまず空き部屋に入って様子を確認することにした。椿に気を遣わせないようにと隠れながら。


「あ、出て来た。そして今度は茶道部に戻った」

「何をやってるデースかね?」


 そのままそこで見ていると、椿は何度も二つの部室を行ったり来たりしている。


「辰巳達があそこにいるのかな」


 それぞれの部屋には瀧川女学院の生徒達に囲まれた二人がいるのだろう。

 そしておそらくは椿が何度も時間をかけて話を聞いたり何かを伝えたりして説得を続けているのだろう。


「椿さん……」


 椿は部屋を出る時はキリっとした表情なのだが、扉を閉めて廊下で一人になると肩を落として途端に疲れたような表情を浮かべる。だがそれも数秒の事、すぐに気を取り直して反対側の部屋に入る。

 何度も部屋を往復すればするほど、目に見えて疲労の色が濃くなって行く。


 それだけ、拗れた仲を修復することに苦労しているのだろう。


「(止めちゃダメだよね)」


 恐らく椿は奏が困っていたから助けようとしているのだろう。

 ここでもう良いからなどと奏が止めたら、きっと椿のプライドは傷つけられてしまう。

 奏は自分のせいで椿が苦しんでいることが辛かったが、我慢することを選択した。


「もう、いい加減にしてよね!」


 ついに椿の口から文句が出るようになってきた。


「ってダメダメ。奏様の大切な人達なんだから、仲直りさせてあげないと」


 奏はこれまで椿に振り回される一方で、自分がどれだけ好かれているのかを感じ取れていなかった。

 そもそも良く分からない拉致事件で罵倒されてから何があって好きになったのかすら分かっていないのだ。告白されても困惑が大きいのは当然の事。


 だが、奏のためを想って行動している椿の姿を見て、ついに奏の胸に椿のココロが届いたのだった。


「椿さん……」


芹那編だと思った?

残念!椿編でした!

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