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人助けをしたら美少女に惚れられて偉い人に褒められるんですけど!  作者: マノイ
第二章

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23. 美少女達と体育祭に参加していたら乱入者に告白されたんですけど

「かなちゃんいっけー!」

「奏様そこだー!」

「奏様頑張って!」

「チャンスです!」


 校庭の二百メートルトラックに置かれた足場の狭い平行棒の上を奏は迷わず突き進む。

 お嬢様達を命を懸けて守ったことから分かるように、奏は顔や雰囲気に似合わず度胸がある。他の人が恐る恐る渡っている中でリードを広げる。


「格好良すぎ!」

「はぅ」

「しゃすがですぅ」


 奏の雄姿を見たお嬢様方も、恋心を爆発させて目をハートマークにしていた。


 だが残念ながら奏は足がそれほど速いわけでは無い。

 障害物の無いところで徐々に差を詰められて、最後の最後で逆転されてしまった。


「奏様惜しかったね」

「残念、でも格好良かった」

「お疲れさまでした」

「ありがとう。悔しいなぁ」


 競技を終えた奏が笑顔で三人娘の元に戻って来た。


「かなで~、あそこまで行ったなら勝てよー!」

「そうそう、愛の力でなんとかしろよー」

「相手は陸上部のエースだよ!?追い詰めただけでも褒めてよー」


 そしてクラスメイトから弄られ、笑顔で返す。


 今日は梅雨前の最後の日曜。雲が少ない絶好の体育祭日和だ。


 大月高校の体育祭は種目内容こそありふれたものしかないが、接戦になるように参加選手のバランスがとられているのが特徴的だ。


 例えば奏が参加したばかりの障害物競走では、障害物の攻略が得意だけれど足はそれほど速くない人と、逆に障害物は苦手だけれども足が速い人物を混ぜている。しかも事前の練習でのタイムが近い人を同組にしているため、誰が勝つか分からないハラハラした展開になる。

 参加している人は努力や根性が結果に結びつき、見ている方も接戦で楽しいためかなり盛り上がる。

 高校生ともなると体育祭はやる気が出ない人も多いだろうが、このバランスの良さのせいでほとんどの生徒が本気で参加している人気の行事だ。


「次はみんなの番だね。頑張って!」

「いってきまーす」

「勝って来る」

「ドキドキします」


 芹那達が参加する種目の開始時間が近づいて来た。

 種目内容は三人四脚。


「うわぁ、あの三人が並んでるぜ。やべぇ」

「写真撮りてぇ!」

「実行委員が撮ってるんだろ、後で買えねぇかな」

「一万でも出す」


 絶世の美少女達が並ぶ姿に、学校中がざわざわと騒ぎ出す。


「美月ちゃん、真夜ちゃん、頑張ろうね」

「うん、奏様に良いところを見せたい」

「頑張ります」


 彼女達はもうそんな反応など慣れたものだ。

 全く気にすることなく、笑顔で足を紐で結んで準備をしている。


 なお、彼女達は知らない。

 大月高校は去年まで男女ペアの二人三脚しかなかったことを。女性限定の三人四脚は今年から追加された種目なのだ。

 もし二人三脚しかなければ、誰が奏のパートナーになるかで三人は大揉めするだろう。それだけならば奏達だけの問題なので良いのだが、問題はあぶれた二人だ。誰がパートナーになるのかで血で血を洗う争いが生まれることが目に見えていた。

 そのため、体育祭実行委員は三人四脚を考案し、そちらに参加してくれと芹那達に直談判した。


 なお、奏との不要な二人三脚のイチャラブ特訓はこっそり体験済みだったりする。


「みんな頑張れー!」


 奏の声援が聞こえたのか、レースの順番待ちをしている三人が手を振ってくれる。


 彼女達はもちろん体操服姿だ。

 大月高校の体操服は短パンタイプ。露出が多いため、初心な芹那と異性に肌を見せるのは淑女としてよろしくないと思い込んでいた真夜は、転校初期は体育の時間にジャージを着用していた。

 だが奏とのデートの経験により感性が変化し、今では普通に肌を晒していた。


 男性諸君は大喜びである。


「京極さん胸でっけぇなぁ」

「えろい」

「花ヶ前さんも割とあるのな」

「色気がヤバイ」

「東雲さんはやや小さめ?」

「でも体型が綺麗すぎるでしょ。モデルみたい」


 男共がやらしい視線を向けているが、奏は独占欲によりイラっとしつつも咎めたりはしない。自分もつい視線を向けて気にしてしまうからだ。


「これだから男って……」

「と申してますが辰巳はどう?」

「俺に振るなよおおおお!」

「栞ちゃんは見飽きてるから?」

「そりゃあまぁいつも見てるから……あ!」

「な、な、な」

「そ、そういう意味じゃ、じゃなくて、ええと」


 辰巳を弄ることでちょっとした不満を解消させる案外下衆い奏であった。

 この二人のデートは体育祭後。奏は二人がどうなるのかワクワクが止まらない。




 そんなこんなで体育祭は華やかな三人娘の存在もあり例年以上に大盛り上がり。

 クライマックスのリレーの前に、これまた体育祭の花形である騎馬戦の時間が来た。

 男子がやると激しすぎて怪我をしやすいということで、大月高校の騎馬戦は女子のみだ。


「怪我しないようにね」

「ちょっと待ってー」


 奏が芹那達を送り出そうとしていたら、栞が待ったをかける。


「どうせなら賭けをしない?」

「賭け?」

「賭け事はよくない」

「学生の賭け事は禁止されてますよ」


 奏が誰を選ぶのかを全校生徒が賭け事にしていることなど知らない三人は、真面目に返す。


「あはは、ガチの賭けじゃないよ、ちょっとしたお遊びみたいなものだから」


 人を悪い道へと誘う典型的な文句。

 少しだけなら大丈夫だから。このくらい誰でもやっているから。

 まるで青少年を狙うバイヤーのようだ。


 芹那達は再度栞の言葉を否定しようとしたが、それは簡単に封じられた。


「一番活躍した人がかなちゃんとデートするってどうかな?」

『……』

「ぴええええええ!」


 得体のしれないエネルギーが彼女達から噴出し、奏はぞわりと鳥肌が立った。

 見た目は何も変化が無さそうなのに、不思議とオーラを纏っているかのような迫力がある。

 笑顔でお互いを見つめ合っているだけなのに、何故か激しいスパークが舞っているのが視認出来ている気がする。


 そのあまりの迫力に、思わず周囲の生徒達が数歩後ずさってしまった。


「ふふん」

「栞ちゃんめー!」


 先ほど弄られたのでやり返したのだろう。

 だがこのちょっとした意趣返しが、とんでもない事態を引き起こす。


『騎馬戦に参加される皆さんは、入場ゲートにお集まりください』


 三人は袂を分かち、それぞれ別の騎馬に参加する。


 小柄な芹那は上に乗り相手のハチマキを強奪する役目。

 美月は左後ろで作戦を立てる役目。

 真夜はなんと正面で相手に激しくぶつかる役目だ。


 同じチームであるため、直接やり合うことはない。

 ただ、奏とのデートという餌をぶら下げられた彼女達は、フィールド上の敵を殲滅すべく獲物を狩るハンターのような目を向けていた。相手チームは超ビビっている。


 このまま彼女達がどれだけ大暴れするのかと見ている男子達がワクワクしていたところ、実況が突然予想外の事を叫び出した。


『おおっと、ここで謎の乱入者だああああ!』

『は?』


 なんと校庭の入り口の方から一体の騎馬がやってくるではないか。

 大月高校の体操服を着た彼女達は、ここにいるはずがない人物だった。


「ぴええええええ!」


 三人の馬役はいずれも美人揃い。

 上に人を乗せているにも関わらず姿勢が歪んでおらず、歩く姿は王者の風格を感じさせる。


 そして肝心の上に乗っている人物。

 それはつい先日大騒ぎを起こした主犯の人物であった。


『な、なな、なんと瀧川女学院から殴り込みだああああ!』

「うおおおお!マジかああああ!」

「生きてて良かった!」

「お嬢様って何でみんなあんなにレベル高いの!?」

「後でお話出来るかな!」


 実況が煽り生徒達のテンションが大爆発する。

 これが騎馬戦の開始前という状況で無ければ、興奮のあまり殺到していたかもしれない。


「ど、どうして椿ちゃんが!?」

「謹慎しているはず」

「ありえないです!」


 慌てる芹那達。

 だがここに居るのは事実だ。

 生徒まで巻き込んでいるのだ、金城理事長が許可を出しているのだろう。


 場に乱入した椿は、実況席に向かいマイクを借りた。

 そしてたったの一言だけ告げる。


「デート権」

「ぴええええええ!」


 このタイミングでそれを告げるということは、間違いなく先ほどの栞の話をどこからか聞いていたということだ。


「そ、そんな、椿ちゃんまで!」

「強力なライバル」

「ま、負けられないです!」


 三人娘は気付いてしまった。

 奏が何をしたのかは分からないが、自分達と同じように椿も奏の虜になってしまったのだと。


 そして大月高校の生徒は浮かれていた。

 そして侮っていた。


 お嬢様学校の生徒が騎馬戦などという、ある意味野蛮とも取れる戦いをまともに行えるのかと。この場で求められるのはお上品さでは無く、力の限り相手をねじ伏せたいと思うハングリー精神。

 派手な登場をしたところ申し訳ないが、すぐに退場させられることになるだろう。


「(椿さんのあの力……もしかしたら)」


 唯一、男子の中で奏だけは違う未来を予想していた。

 椿の体に秘められた、謎の怪力を知っているからだ。

 また、騎馬の三人の能力は分からないが、奏を罠に嵌めて翻弄した椿が、何の勝算も無く乱入するとは考えられない。


「み、みんな、椿ちゃんは後回しだよ」

「絶対に近づいちゃダメ」

「逃げながら他の騎馬を倒すのです」


 そして芹那達もまた、椿の『強さ』を知っていた。


 この日、大月高校の騎馬戦は、乱入者により壊滅させられることになった。


『強すぎんだろ!』




「奏様~負けちゃったよぅ」

「あそこで椿さんが来るのは卑怯」

「うう、奏様とのデートがって椿さん!?」


 椿に速攻狙われて潰された芹那達が、失意の表情を浮かべて奏の元にやって来る。

 だがそこには既に椿がやってきていた。


「え、ええと、おめでとう?」

「……」


 椿は何も口にしない。

 奏が最初に会った頃の椿のままだ。


「その、どうしてここに?お婆ちゃんもいるの?」

「……」


 何を聞いても答えは来ない。

 これもまた、いつものやりとりだ。


 クラスメイト達は、いや、全校生徒が奏と椿のやりとりを見ている。

 最終種目のリレーの準備をすべきなのだが、誰もがそのことを忘れ、固唾をのんで成り行きを見守っている。


「(何この状況!?)」


 芹那達は奏の元に近づきたいのだが、見えない壁に阻まれているかのように足を前に出せない。

 あれほど情熱を燃やしていたのに椿に完敗したことで、気まずかったのだ。


 椿はふと、右手を手のひらを上に向けて奏に差し出した。


「?」


 何かを欲しがっているようにも見えるが、この状況で何を置いたら良いか分からない。

 そもそも置けるものなど、日よけの帽子くらいしか持っていない。


「(なんだろう、まさか『お手』じゃないよね)」


 ここで奏が手を差し出したら、まるで犬のようだ。

 だが、それ以外に椿が何を望んでいるのか思い付かなかった。


「(触れたら最後、強制的に拉致されてデートさせられるとか無いよね……)」


 椿が暴走して奏に迷惑をかけないように総理と約束したのだ。

 流石にそんなことは無いと信じたい。


 奏は恐る恐るその手に触れた。


「……」

「……」


 変化はない。

 やはり対応が誤っていたのか。


 いや、良く見ると僅かに変化している部分があった。

 椿の頬が、ほんのりと赤くなっていたのだ。


「奏様、好き」

「え?」


 椿は奏の手をぎゅっと握るとそのまま強く引き、近づく奏に向かって唇を。


「それはダメええええ!」

「許さない!」

「認められません!」


 芹那達が強引に割って入り、全校生徒が見ている中での愛のベーゼという展開はどうにか防がれた。


「椿ちゃん怒るよ!?」

「私だってまだなのに」

「こ、ここ、こんなところでハレンチです!」

「……」


 全力で椿の体を押さえつけにかかるが、諦めずに強引に奏に顔を近づけようとする。まだ右手は掴んだままなのだ。


「ダメええ!」

「こうなったら私が先に」

「わ、わわ、わたひも」

「美月ちゃん!?真夜ちゃん!?わわわわ、わた、わた、無理いいいい!」

「ちょっとみんな落ち着いて、落ちっ、ぴええええええ!」


 四人に群がられた結果、全校生徒の前で美少女達に押し倒される奏。


「(ぴえええ、やわっ、柔らかっ!)」


 四人が奏にのしかかっているため、彼女達の色々なところが奏の体に触れる。体操服は防御力が少なめなので、体温や感触がダイレクトに伝わって来る。


 四人の美少女に恋の奪い合いをされるという完全なハーレム展開。奏は大月高校の生徒達により殺気がこめられた目で睨まれるのであった。


「(誰かタスケテ!)」


 助けどころか、爆発しろと呪いをかけられているだろう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 椿ちゃんかわいい [気になる点] 二人三脚のイチャラブ特訓どこ…?どこ…?
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