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人助けをしたら美少女に惚れられて偉い人に褒められるんですけど!  作者: マノイ
第二章

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16. 因果応報? その7 ナンパ男達と暴漢達 

「お、あれじゃね?」

「うっわ、くっそ可愛いじゃん」


 ゴールデンウィーク最初の日曜日。

 男達は獲物を探して駅前を歩いていた。


「どうする?行くか?」

「いや、もうちょっと待つぞ。すぐには手を出すなって約束・・だからな」

「くぅ~早く声かけてぇ~!」


 男達はターゲットが移動するのをその場で眺めていた。

 すぐに見失ってしまうが、追いかける気配はない。


「ちょっと練習してこうぜ」

「おう」


 しかも別の女性を狙い出した。

 ランチを一緒に楽しむ相手を探す目的であり、ひとまずそれ以上の魂胆は無い。メインイベントは午後なのだ、そのための前菜のようなものである。


「ターゲットの居場所が分かったぜ」

「おし、さっさと行こうぜ」


 前菜を逃して男二人の寂しい昼食を終えた彼らのスマホには、ターゲットの現在位置が示されていた。

 ショッピングモールに入り、彼らはついに彼女達に声をかけた。


「ねぇねぇ、そこのめっちゃ可愛いお二人さん」

「俺らと遊ばない?」


 あっさりと拒絶されるが、男達は退くことは無い。

 絶世の美少女達を前に気が逸っているということもあるが、ダメでもある程度は粘るようにと言われている・・・・・・からだ。


 結局、ナンパは成功せず、警備員が来たことで男達はあっさりと退散した。


「ちぇー、ダメだったか」

「あそこまで可愛いと声かけられ慣れてるだろうからな。しゃなーいさ」

「でもまぁ失敗しても大金貰える・・・・・し、良しとすっか」

「だな」


 ショッピングモールを出た男達は、ナンパが失敗したことを嘆きながら街中をぶらついていた。

 だが彼らの顔は決して悲嘆にくれてはいない。むしろひょんなことから大金をゲットして浮かれていたのだ。

 だからだろうか、正面から歩いて来る人達を避け切れずに体がぶつかってしまった。


「おっと、わりぃ」


 一見軽薄そうに見える男だが、謝罪する点、内面は案外マシなのかもしれない。

 だが男は致命的に運が悪かった。


「あぁら~良い男じゃない」

「あらほんとぉ」

『は?』


 ぶつかった相手は、男達が決してナンパなどしないタイプの女性?達だった。


「ねぇねぇ、お兄さんたち。あたしたちとお茶しな~い?」


 男達よりも遥かにガタイがあり、濃いヒゲの後がある女性?達は、男達を逆?ナンしてきた。


「い、いやいや、俺達急いでますので」

「そうそう、めっちゃ急いでるので、それじゃあ」

「そんなこと言わないでさぁ~」


 すぐにその場を逃げ出そうとした男達だが、女性?達にがっしりと肩を掴まれてしまう。


「(う、動けない)」

「(なんだこの力)」


 力づくで取り外そうにもビクともしない。


「うふふ、お姉さんたちがたっぷり遊んであげるわよ」

「ぎゃああああああああ!」

「誰か助けてええええええええ!」


 知らずではあるが男性である奏をナンパした男達。その報いは当然全く同じものであった。

 相手が女性に見えるかどうかという点では大きな違いがあったか。


――――――――


「本当に大丈夫なんだろうな」

「ええ、瀧女の心配はしなくて結構です」

「捕まったら本当に助けてくれるんだろうな」

「もちろんです。やることさえやってくれましたら全力でサポート致します」


 人気ひとけの無い公園に複数の男達がたむろしている。

 誰かに見られたらそれだけで通報されそうな雰囲気だ。


「俺はそれよりも金がちゃんと貰えるかが心配だぜ」

「前金はお支払いしたはずですが?」

「まぁな。でも貰えるならちゃんと全部貰いたいじゃねーか」

「分かってますよ。成功した暁には必ず入金致します」


 スーツを着た怪しい男と、それを取り囲む犯罪者風な雰囲気の男達。

 会話の流れからして、スーツ男が彼らの依頼主か何かなのだろう。


「おや、ターゲットが家を出たようですね。それではみなさんよろしくお願い致します」


 男達は覆面を被り、バラバラに別れて公園を出て行く。


「さて、私は面倒なことになる前に退散するとしましょうか」


 スーツ姿の男はその場から消えるように立ち去った。




「極京芹那と佐野奏だな」


 先に公園を出ていた男達は、夜道を歩く二人組を恫喝していた。


「逃がすな!追え!」


 彼らは逃げる二人組の後を追う。

 ただし、追いつかない・・・・・・ように・・・


「何処に行った!この辺りにいるはずだ、探せ!」


 逃げ込んだ場所も分かっている。だが、決してそこには入ろうとはしない。

 その付近で二人を探す言葉を発し、あくまでも怖がらせることのみに留めている。


 そのまま茶番を続けていると男達のスマホに撤退の合図が来る。


「チッ、見失ったか。仕方ない、引き上げるぞ!」


 彼らが受けた指示は、とある二人組を追い回すこと。

 決して捕まえてはならず、持っている銃らしきものも偽物だ。

 一定時間追い回すだけで大金が貰える。

 そんなうさんくさい依頼を受けていたのだ。



「いやぁ、あれだけでうん百万も貰えるなんてな」

「マジそれな。この程度なら何度でもやってやるぜ」

「おいおい、あんまりそのこと言うなよな。瀧女の関係者が聞いてるかもしれねーぜ」

「おっと、あぶねぇあぶねぇ」


 仕事を終えた男達は駅前の居酒屋で打ち上げを行っていた。

 いずれも今日会ったばかりの見知らぬ相手だが、あまりの幸運にはしゃがなければ気が済まなかったのだろう。

 すでに彼らの口座には大金が振り込まれていたのだから。


「おーい!姉ちゃん、高い方から順に持って来てくれや」

「おいおい、そんなに食えんのか?」

「残せば良いんだよ残せば」


 フードロス問題に取り組んでいる人が聞けば激怒しそうなセリフを臆面も無く口にする。

 酒がまわって気が大きくなる男達。


 そんな彼らのスマホに連絡が来た。


『お疲れ様です。依頼達成を確認致しましたので、成功報酬を指定の口座にお振込み致しました。これにて契約は完了となります』


 彼らに指示を出していたスーツ姿の男からのメッセージだ。


「そうだ、次も無いか聞いてみようぜ」

「だな。こんだけ気前が良い相手だ。お得意さんになって大儲けさせてもらおうぜ」


 メッセージに対して、次の仕事を斡旋して欲しい返信をしようとした男達だが、その前に相手から追加のメッセージが届く。


『そうそう、お仕事を引き受けて頂いた縁がありますので一つだけ忠告して差し上げますね』


 その不穏な内容に男達は眉を顰める。


『逃げた方が良いですよ』


 契約は完了している。


 契約の内容は指定の二人を追い回すこと。

 その間の瀧川女学院の行動は依頼主が抑える。


 つまり、契約が完了した今、彼らを守る人はいないということ。


「なんだぁ?」

「こいつ何言ってんだ?」

「逃げるって何から?」


 酔いが回りすぎて思考がまとまらない男は、そのメッセージの意味が分からない。だが、比較的酔いが回っていない男は、その文面の意味を察して青ざめる。


「やべぇ!早くこの街から離れねーと!」


 仲間をその場に置き去りにし、慌てて居酒屋を飛び出した。


 だが逃げるにも時刻はかなり遅い。

 電車に乗ろうにも、終電が近づいているため本数が少ない。


「タ、タクシーだ!」


 タクシー乗り場に移動すると待ちは三人で、回転良くタクシーが来ているようだ。

 これなら数分で乗れるだろうと列に並んだのだが。


「何処に行くつもりかい?瀧川女学院なら並ばなくても連れて行ってあげるよ」

「ひいっ!?」


 後ろから声を掛けられ、瀧川女学院の名に怯えて振り返ることもせず慌てて列を離れる。


「何処かに隠れないと!」


 電車に乗ろうとして改札を通れば袋の鼠である。

 バス乗り場は近くにあるが、乗ったとしても出発するまでに追いつかれそうだ。


 ゆえに交通機関は今は使えない。

 走りながらどこかに隠れて朝までやりすごし、始発で街を出るしかない。


 だがどこに隠れれば良いのか。

 居酒屋か、ホテルか、カラオケボックスか。

 どこに逃げ込んでも捕まる未来しか想像出来ない。


「ほ~らほら、もっと走らないと追いついてしまうよ」

「そこの居酒屋は止めた方が良いよ。逃げ道が少ないから」

「果たしてそこでまともに『ご休憩』が出来るかしらねぇ」


 ずっと監視されているかのように、どこからか定期的に声が聞こえて来て決して休ませてはもらえない。芹那と奏を襲うなどと言う愚かなことをした者への瀧川女学院の制裁であった。


――――――――


「それで、どうだった?」


 とある場所。

 無機質な室内で、革の一人用ソファーに座っている人物が、正面に立つスーツ姿の男に質問する。


「『報い』の対象はあくまでも当事者のみ。内容は『事実』に基づくものであると推測されます」

「ふん、予想通りか」


 ナンパ男達と暴漢達にはスーツ姿の男が指示を出していた。

 だが『報い』はスーツ姿の男には降りかからず、実行者のみが受けることとなった。


 また、暴漢達は誘拐する演技をしていたにも関わらず、彼らへの『報い』はあくまでも『恐怖を煽り追われること』であった。

 奏が誘拐されそうだと感じていたとしても、『報い』は誘拐ではなく追われるという『事実』に基づく物だったのだ。


「『報い』の強制力については?」

「その人物が『報い』を受けられる状況で無い場合は免除されるようです」

「ふ~ん、絶対じゃないんだ」

「はい、『報い』が発生する前に一名始末出来ました」


 居酒屋に残された男性の一人が、何者かの手によって殺害されていた。

 これは、『報い』を絶対に受けさせるために『報いが受けられなくなる状況が回避される』かどうかを確認するための犯行であった。


「ちぇっ、そこはちゃんとしといてくれよな」


 もし『報い』が絶対であるならば、奏にちょっかいを出して『報い』が発動する状況にした上で死地に向かえば不死の戦士の誕生である。そうであれば彼にとって奏の利用価値が跳ね上がるはずだった。


「やっぱり邪魔だな。始末する方針で」

「はっ」


 その人物は、まるでそれが当たり前であるかのように自然に人殺しを指示した。


「でも相変わらず対処法が見つからないんだよね。何か弱点は無いの?」

「一つだけ興味深い事実があります」

「なになに?」


 スーツ姿の男性は、奏が事故で段ボールに埋もれたことを伝えた。

 あの姿も遠目から見られていたのだ。


「なるほど、事故ならいけるのか。意図的に事故が起こりやすい環境にすれば……いや、それだと偶然とは認識されないかもな。う~ん」

「試してみますか?」

「いや、止めておこう。あまりやりすぎるとババアに尻尾を掴まれるからな。もう少し慎重に情報を集めてから動くよ」

「承知致しました」


 話が終わり、スーツ姿の男は公園の時と同様に消えるようにその場を後にする。

 残された人物は壁に張られた写真を見て呟いた。


「佐野奏。君に悪気は無いんだろうけれど、大事な駒を幾つも潰してくれた借りはしっかりと返させてもらうよ」


 それはまさに『報い』を与えるという意味であった。


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