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俺の人生は竹馬なくして語ることはできない。
いつからだろう? きっと生まれたときから俺は竹馬とともに人生を歩んできた。片時も離れることなく。
最初に口にした言葉も竹馬だったはず。きっと前世は竹馬だったんだ。そうとしか考えられない。
物心ついた時には生活の中に竹馬が溶け込んでいた。もちろんご飯を食べる時には箸なんて使わない。竹馬だ。寝るときだって枕の代わりに竹馬。俺は靴というものを履いたことがない。竹馬があるからだ。つまり俺の人生イコール竹馬ってことだ。そんな俺がこの状況で選択するものに竹馬以外があるだろうか?
「あなたは異世界に何をもっていきますか? どんな便利な道具、ありえない性能の武器なんでもありです。しかし、一つだけです。そのたった一つ与えられたものを手に異世界で魔王を討ち果たしてください」
突然見知らぬ場所に連れてこられたと思えば、なんなんだこれは?
「竹馬が大好きだって? 奇遇だな、俺もだ」
どうやらこの女も竹馬愛にあふれているらしい。俺たちの絆は竹馬のように固いものになるに違いにないな。
「いえ、そんなことは言ってませんが…………」
おいおいおい、俺の愛馬が…………ジャンボサーキット二世がいない。あ…………あああーーー!!!!
「おい!! 俺のジャンボサーキット二世をどこにやった!?」
「先ほどから何をおっしゃっているのですか? いくら異世界に転生するからといって取り乱しすぎでは?」
「うるせぇーー!! 竹馬が好きなのはわかったから、俺のジャンボサーキット二世を返せーー!!」
あいつがいないと俺は…………この先どうやって生きていけばいいんだ? この数年間片時も離れずに歩んできた相棒なんだぞ。それがどこに行っちまったんだ。帰って来いよ、ジャンボサーキット二世。
「もしかしてあなたが持っていた竹馬のことですか? それなら異世界へ持っていくことはできませんよ」
「は!? 持っていけないだと、ジャンボサーキット二世か? 俺の相棒を物扱いするんじゃねぇーーーー!!!」
「ひっ、すいません。ジャンボサーキット二世は残念ですが持っていけません」
おかしいな。この女の言っていることが全く理解できない。ジャンボサーキット二世を連れていけない? そんなことがあってたまるか? 俺の命よりも大事…………いや、命の次に大事なんだぞ。
「お前を許さん」
「ごめんなさいっ、ごめんなさい。代わりになんでも一つ好きなものを持って行っていいですから」
「変わりなんていねぇんだよ。俺にはあいつしか、あいつしかいねぇんだ…………」
あいつがいない生活なんて考えられない。そんなの死んでるようなもんじゃねぇか。
「そうだ、俺は異世界にあいつを、ジャンボサーキット二世を連れていく」
「それはできません。それに、ジャンボサーキット二世では異世界のモンスターを倒すことはできませんよ。異世界で生き残り、かつ魔王を倒すためにはもっと強力無比な武器が必要なんです」
「あいつじゃなきゃダメなんだよ。あいつの代わりなんて世界中探しても絶対にいねぇよ…………」
脳裏にはジャンボサーキット二世と過ごした今までの日々が走馬灯のように再生されていた。
一緒に行った修学旅行。そう言えば、頭のおかしい先生に連れていけないって怒られたっけ。
夜一人でトイレに行けなかった俺についてきてくれたな。今ではちょっと恥ずかしいが、いい思い出だ。
入試も足の先に鉛筆を装備して一緒に受けたよな。おかげで第一志望の高校に合格できたよ。
思い返すたびに、ジャンボサーキット二世との思い出があふれてくる。俺、お前がいなきゃ何もできねぇよ。
「わかりましたから、異世界には竹馬をもっていきますか?」
「なんだと…………それでいい」
「しかし、困りましたね。竹馬というのは二つになりますから、片方だけでもよろしいでしょうか?」
「なにを言ってるんだ? 正気か?」
竹馬の片方でいいかだと? それは右手があるから左手はいらないって言ってるようなもんだぞ。この女とんでもないあほなのか?
「ですから、違う武器をおすすめしますよ。剣なんてどうですか?」
「そういうことじゃなーーーい!!! 竹馬は二つで一つだろうが、俺のジャンボサーキット二世みたいなもんだろ? それがわからないのか!?」
「あなたとジャンボサーキット二世は絆はよくわかりましたから、真面目に私の話を聞いてくださいよぉ。これではいつまでたっても話が進みませんから」
「だから俺に最強の竹馬をくれればいいだろ。もちろん両方だ。片方なんてそれはもう竹馬じゃない。ただの竹だ」
「うーん、そうですよね。竹馬は二つあって竹馬ですもんね。わかりました、特例として認めましょう」
最初からそうすればいいものを、何をたらたらしてやがるんだ。同じ竹馬二ストじゃなかったらぶっ殺してるところだ。
「では、田中 平馬さん。あなたに最強の竹馬を授けます。どうか異世界の魔王を討ち果たしてください」
女がそういうと、俺の意識は消えた。




