↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

プロローグ:夢であるはずの記憶は

叫び声がする。泣き声がする。助けを求める声がする。


燃える音がする。無数の足音がする。建造物が崩れる音がする。


燃え上がる炎は次第に大きくなっていき、建造物や人々を呑み込み、やがて世界の全てを呑み込んでいく。


炎の中を逃げ惑う人々は、やがて立ち止まり、あるいはその場で倒れ込み跡形もなく消え去る。


大地を覆い尽くす炎の中、ぽっかりと空いた穴のように燃えない箇所があった。

その中で2人の少女は死期を悟るように抱きしめ合っていた。

炎はまるで2人の少女を避けているかのようだった。


土や炭などの染みをつけた白い袴を着た少女は、自身よりひとまわり小さな少女の頬を優しく撫でる。


「ごめんね……どうか私を……」


震えた声は徐々に小さくなっていき、次第に聞こえなくなる。

袴を着た少女の涙が小さな少女の手の甲へと落ちる。

小さな少女は涙で濡れた手を、袴を着た少女の頬にやり、優しく撫でる。


「お姉ちゃん……?」


その瞬間、袴を着た少女の内側から神々しい光が現れ、大きな風が吹く。


袴を着た少女の藍色の大きな三つ編みと、右側にくるくると巻かれた小さな縦ロールが揺れる。

小さな少女の藍色の少しうねった長髪と、左側にくるくると巻かれた小さな縦ロールが揺れる。


やがて光は大きくなり2人の少女を覆い尽くした。


しばらくすると光は徐々に収まっていく。

そしてそこに居たはずの2人の少女は居なくなっていた。


―――――――――――


やがて炎も徐々に収まっていく。

木や水、動物などの自然、そして人々が作り上げた歴史が燃えていった。そして残ったのは大地一面に広がる塵。

文字通り全てが燃え、消え去ってしまったのだ。


大地に残されたのは静寂の中に響く空気の音のみ。

誰が思いもしただろうか、大勢の人が笑い暮らす世界をたった1人の少女が消し去ってしまったのだから。


――――――――――――


ごめんね……どうか……あたしを忘れて幸せになってね


――――――――――――


鉛のように重たい瞼がゆっくりと開く。

ぼやけた視界で見えるのは、杏のような髪色をした少女が私の手を握り、茶色い髪をした女性がカルテを持ちながら立っていた。


「あ……れ、ここは……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。