プロローグ:夢であるはずの記憶は
叫び声がする。泣き声がする。助けを求める声がする。
燃える音がする。無数の足音がする。建造物が崩れる音がする。
燃え上がる炎は次第に大きくなっていき、建造物や人々を呑み込み、やがて世界の全てを呑み込んでいく。
炎の中を逃げ惑う人々は、やがて立ち止まり、あるいはその場で倒れ込み跡形もなく消え去る。
大地を覆い尽くす炎の中、ぽっかりと空いた穴のように燃えない箇所があった。
その中で2人の少女は死期を悟るように抱きしめ合っていた。
炎はまるで2人の少女を避けているかのようだった。
土や炭などの染みをつけた白い袴を着た少女は、自身よりひとまわり小さな少女の頬を優しく撫でる。
「ごめんね……どうか私を……」
震えた声は徐々に小さくなっていき、次第に聞こえなくなる。
袴を着た少女の涙が小さな少女の手の甲へと落ちる。
小さな少女は涙で濡れた手を、袴を着た少女の頬にやり、優しく撫でる。
「お姉ちゃん……?」
その瞬間、袴を着た少女の内側から神々しい光が現れ、大きな風が吹く。
袴を着た少女の藍色の大きな三つ編みと、右側にくるくると巻かれた小さな縦ロールが揺れる。
小さな少女の藍色の少しうねった長髪と、左側にくるくると巻かれた小さな縦ロールが揺れる。
やがて光は大きくなり2人の少女を覆い尽くした。
しばらくすると光は徐々に収まっていく。
そしてそこに居たはずの2人の少女は居なくなっていた。
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やがて炎も徐々に収まっていく。
木や水、動物などの自然、そして人々が作り上げた歴史が燃えていった。そして残ったのは大地一面に広がる塵。
文字通り全てが燃え、消え去ってしまったのだ。
大地に残されたのは静寂の中に響く空気の音のみ。
誰が思いもしただろうか、大勢の人が笑い暮らす世界をたった1人の少女が消し去ってしまったのだから。
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ごめんね……どうか……あたしを忘れて幸せになってね
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鉛のように重たい瞼がゆっくりと開く。
ぼやけた視界で見えるのは、杏のような髪色をした少女が私の手を握り、茶色い髪をした女性がカルテを持ちながら立っていた。
「あ……れ、ここは……?」




