表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/70

電波

外来の待合室は、いつものように人でいっぱいだった。


番号を呼ぶと、背の高い五十代の男性が静かに立ち上がり、診察室へ入ってきた。


カルテをめくると、そこには検査結果が貼られていた。


白血球 40,000/µl。

ヘモグロビン 6.8 g/dl。

血小板 2.0万/µl。

さらに末梢血には芽球が九割。


(これは……急性白血病だ。特に急性リンパ性白血病の可能性が高い)


私は心の中でため息をついた。重い病気だ。しかし、今は迷っている場合ではない。できるだけ早く大学病院に転院してもらわなければならない。


「Mさん、検査結果を拝見しました。かなり重い血液の病気の可能性が高いです。急性白血病の疑いが強いので、大学病院での精密検査と治療が必要です」


そう切り出すと、Mさんは頷き、落ち着いた声で口を開いた。

「先生、実はね。これと同じことを、別の病院でも言われました」


「……そうでしたか」

「ええ。“急性白血病だから、血液内科に行きなさい”って。だけど私は、どうしても納得できなかったんです」


私は首をかしげた。納得できない理由とは――。

「……カルテがね。電波で書き換えられたんじゃないかと思ったんですよ」


診察室の空気が一瞬止まった。私は思わず聞き返す。

「で、電波で……ですか?」


「そうです。データが全部電波に操られて、本当の私の血液じゃないんです。だから、この病院で再検査を受けて、本当の数値を見たかったんですよ」


そう言うと、Mさんはカバンをごそごそと探り、茶封筒を取り出した。


そこには、しっかりと大学病院の宛先が記された紹介状が入っていた。


「大学病院への紹介状は持っています。なので、これで行きますね」

Mさんは立ち上がり、丁寧に一礼をして、そのまま診察室を出て行った。


残された私は、しばし呆然。看護師と顔を見合わせた。


そして思わず苦笑いがこぼれる。

「……いやいや。電波で血液データは書き換えられないだろう」


診察室には、いつもより少しだけ柔らかい空気が流れていた。

実際にあった話ですが、大学病院ではなくて市中病院での話です。思わず・・・「は?」と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ