幻聴
A医大病院、夜。
血液内科・無雑医師の当直シフトが始まった。
「今日は静かそうだな……」
彼は買ってきたコンビニのサンドイッチをほおばりながら、
ぬるい麦茶を飲んでいた。
午前1時。
何も起きない。
むしろ静かすぎる。
「おかしいな……いつもならナースコール3連発とか、
夜間の発熱とか……」
その時。
──ウー…ウー…
(……サイレン!?)
無雑は椅子から立ち上がった。
けれどナースステーションからの無線も、PHSも反応なし。
(いやいや、気のせい。寝不足だし……)
と思った瞬間──
「せんせーい、患者さんが動悸を訴えています。ちょっと見てほし〜いです〜」
PHSに呼ばれた。
無雑「ほら来た! もうフラグ通りか!」
A看護師「あれ?先生もう来てたんですか?呼んだばっかりなのに」
無雑「いやむしろ、3分前に“何も起きないな”って思った瞬間に、
サイレンが……」
A看護師「それ、ナースあるある“当直幻聴”ですよ~」
C看護師「私なんか、ナースコールの“ピンポン♪”音、
自宅の電子レンジで聞こえてますから」
無雑「……え、私、冷蔵庫が喋ったことあるけどそれもアリ?」
C看護師「え、それは病院じゃなくて別の対処が……」
朝。
当直明けの無雑医師は、診療開始直前の廊下を歩きながら、
また遠くでサイレンの音を聞いた。
──ウー…ウー…
(……今のは本物?それとも……?)
後ろからT看護師長がぼそっとつぶやいた。
「……あれ、あの音。耳鳴りじゃなくて“希望”ってことにしてるの。
“今日も何かが起きる”って、ね?」
無雑「……ポジティブすぎません?」
救急車やPHSの幻聴はよくある話です。だから当直は呼ばれていなくても疲れるし・・・。まぁ、僕の場合は何もないことはあまりない。当直をしなくなって、ようやくゆっくり眠れると思ったら五十肩が痛くて眠れない、今日この頃です。




