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6.陛下が会いに来ました-1

本日から一日一話の更新になります。

 聖女様との面会を終えてしばらく。次に行くとしたら勇者様のいるエマール国か、と、ジジイに色々教わっている所だ。勇者様のいるエマール国も、隣国ではない。間にオベールという国を挟んでいる。

 聖女様は神聖王国の大聖堂にいることがあらかじめわかっていたので、お手紙を出すのも大変ではなかった。面会の約束を取り付けるのも大変だったけれど、まあできた。やったのはジジイと、その配下の連中だけど。

 あのでっかい教会、大聖堂っていうんだってさ。いや、行く前に教えただろうってジジイにもそれから騎士団の先輩方からも呆れられたけれど。頭のいいお貴族様と一緒にしないでくれ。


「勇者様には、どうやって手紙送ったんです?」


 以前、送ったことがあると言っていたから、王子様は勇者様の所在を知っているのだろう。


「カミーユは、寒村の出だそうでね。ウジェ川沿いにある村だと言っていたから、そこから辿ったんだ」

「結構大掛かりな作業だったのでは?」

「多分ね」


 ウジェ川近郊にある、オーリク村。手掛かりはそれだけで、探してみたら六つもその村はあったという。村だぞ、町じゃなくて。他国だからとても大変だったろうに、アベラールの人員は優秀なようで、無事勇者様がいる村の場所は判明したという。

 よくまあ見つけたよな。カミーユなんて名前も、珍しいもんじゃないだろうに。


「行くなら、バティストだけですな」

「俺だけで行って、勇者様記憶思い出しますかね」

「どうだろうね」


 まあ、思い出さなくてもいいとしよう。

 ジジイの立てた作戦はこうだ。俺は奴隷剣士で、ご主人様の命令で、旅をしている、ということらしい。一切嘘はねえな。

 目的地を別に設定して、そこに向かう道中でオーリク村に到着し、そこでしばらく逗留。勇者に稽古をつける、という流れらしい。そうしておけば、後日魔王討伐部隊として合流した時に、俺が勇者に稽古をつけてもおかしくないから、ということなんだが。


「俺の年齢だけがおかしくないですかね」

「ですので、すぐの旅立ちではなく。稽古の付け方も学んでもらいます」


 俺だってまだ成人していないのだから、稽古を付けに行く、っていうのは、おかしいんだよ。だからまあ、その前段階が必要なのだ。

 それに、王子様自身は勇者様が住んでいる村の場所を詳しくは知らない。だから、またジジイの配下に頼んで、場所を特定してもらう必要があるのだ。

 そんなことを、話していた時だ。


「誰か来た」


 足音はしない。

 城の廊下には、ふかふかのじゅうたんが敷いてある。それが、足音を消す。騎士が通る時は、あえて足音を出す。装備を鳴らす。それで、こちらの所在を教える。メイドさんたちもまあ、足音はしない。

 す、と、ジジイがドアの側へと寄る。いや、ここは城の中でも奥まった場所で、ここに不審者は来ない。だから単純に、ジジイはお客様をお出迎えに行ったのだ。王子様のお部屋に遊びに来るのなんて、兄王子様方か、王妃様の御呼び出しをお伝えに来た侍女か。妹姫様たちはまだお一人ではこちらにいらっしゃらない。あとは、ええと。今日はもう、家庭教師は来ないしな。

 最近は、俺の方がジジイより先に来訪に気が付くようになった。気が付けないと怒られる。まあ、王子様の護衛の練習の一環だ。本当は、俺がお出迎えも出来ればいいのだけれど、それはまだ及第点を貰えていないので、担当ではない。


「誰だろうね」

「じゅうたん越しの足音からして大人だと思うが」

「じゃあ、兄上たちじゃないなあ」


 王子様は、兄王子様達ともちゃんと仲良くしている。偉いなと思う。

 念のため、俺は王子様と扉とジジイの間に立っておく。何かあった時に、肉の壁になるためだ。まあ、この城の中で俺が肉の壁になる可能性って、あったらまずいんだけれど、要するに練習である。いつでもどこでも息をするように、それが出来なければいけない。王子様の護衛ってのは、そういうもんなんだってさ。やってきていたのが騎士団長だったりすると、いきなり攻撃される可能性がない訳でもない。

 実地訓練、って奴だ。抜き打ちの。ちなみに迎撃に成功するとめちゃくちゃ褒められて、飯の時に肉を増やしてもらえるので俺としては文句はない。全然ない。もっと頻度を増やして欲しい。


「あ、陛下だ」

「父上?」


 ちらりと見えたその顔は、王子様とよく似ている。よく似ているけれど、第一王子殿下の方が、陛下には似ていると思う。ご兄弟は皆王妃様と同じ銀髪で、瞳の色だけが陛下と同じ緑色だ。碧眼というそうだ。緑でいいじゃねえか。第二王子様と第三王子様は王妃様に似て細面でたおやかそうで、陛下と第一王子様は強そうながっしりとしたあごを持っている。ところでたおやかってなんだ。

 侍女の皆さんがそういうからそういう表現なのは分かるけれど。ジジイに聞いてもふふっていうだけで教えてくれねえし!

 陛下が、ジジイをその場において入ってくる。ジジイはあれだ。誰かにお茶の準備を頼みに行ったんだろう。王子様はあまり周りに人を置きたがらない。まあな。俺がいるし、あんまり前世の記憶持ってるとか、知られたくないだろうしな。

評価ブクマいいねください。

一日一話の更新になった途端四話に割れるという話。

てへぺろ。

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