17.勇者様を迎えに行こう-3
「バティスト、いい?」
「おういいぞ」
カミーユには、答えられるか分からんが聞きたいことがあったら聞きに来い、と伝えておいた。いや本当に、俺が答えられる事ってなんかあんのかね。城で聖女様に聞いてくれ、とかにならねえか。それも答えっちゃ答えか。
「覚えてないかもしれないけど、前にバティストに戦うの、怖くないのかって聞いたんだ」
「なんか聞かれたっけか」
「やっぱり覚えてないよね。その時に、死なないから、怖くないって言ってて。あの時から、魔王と戦うことを見据えていたの?」
「おう」
これは答えられる。それに答えても変じゃない。前の話は出来ないが、今の俺の話ならしてもいいだろう。さっきもちょっとしたしな。
「アベラールの王様の一族ってのは、昔から魔王の討伐になんやかんや絡んでる一族らしくてな。今回は、俺の主である王子様が担当なんだよ。だから、俺がいつか、魔王と戦うのは決まった道だ」
前の記憶があるから、魔王が復活するのが分かっている、ってのも確かにあるが、王子様が言うにはそれはそれとして魔王復活の気配は元々あったらしい。前の記憶がなくても、それに向けて動いてる連中はそこそこいた、んだそうだ。
「俺、俺でいいのかな」
「女神さまが良いというのなら、良いんだろう」
俺のが強いのに、とかは特に思わない。俺は俺だし、カミーユはカミーユだ。俺の強さをカミーユに求めるものを違うだろう。適材適所って奴だって、ジジイが言ってた。南の賢者様も、ベランジュも。
「でも、俺。何も」
「明日の朝ここを出て、夕方にはエマールの城につく。そこで、運が良ければ明日の内に聖女様に会えるから、なんかわかるんじゃないのか」
勇者の力っていうのは、女神さまからのお言葉が聖女様に下ろされた時に得られるものではないらしい。勇者様が聖女様に会って、そこでなんかして、得られるものだって、いつだったかは忘れたが、前の勇者様に聞いた。記憶がある。ような気がする。
「とりあえずまあなんだ。魔王をどうにかしなけりゃ世界が滅ぶ、どうにかできりゃあ全員生き延びる。それだけの話だ」
「軽く言うなあ」
「軽いんだよ。俺の命も、お前の命も、魔王の命だって。重く難しく考えるのは、頭のいい連中に任せておけ」
俺たち実務部隊は、それに合わせてぶん殴るだけなんだよ。
そう言ったら勇者様は軽く笑って、じゃあ明日。と言って部屋に帰っていった。例えカミーユが勇者様じゃなくても、一から探すとか勘弁してほしいけど、そん時は魔王討伐隊に参加してくれと頼んではおいた。
朝。馬房にセレストを迎えに行ったら、クロエと仲良くなったようで毛づくろいを互いにしていた。荷馬と天馬の友情とかありえんのかマジか。
「子供出来るのかな」
「どっちもメスだから無理じゃねえか」
「無理か!」
無理だろ。クロエの持ち主のファビアンのおっさんはゲラゲラと笑ってる。無理だって。雄雌だって、つがいにはならねえんじゃねえか。天馬がオスで、クロエを気に入りゃ話は別かもしんねえけど、とかだらだら話してたらカミーユが寝不足の顔できた。まあ、そらそうなるわな。
「おはよう。よく眠れてねえみてえだが、空の旅行けそうか?」
「おはよう。陸路じゃダメ?」
「だめだ」
セレストとクロエを引き離して、セレストに二人乘り用の鞍を乗せる。俺は別に鞍がなくても乗れるが、カミーユは多分ないと乗れねえからな。あってもどうだろう、という気はするが。
「もう、魔王の事も勇者の事も不安だけどさ」
「おう」
「馬に乗って空を飛ぶのももう不安で不安で」
「落ちねえし落とさねえから俺にしっかりしがみついてろ」
「そうは言うけどさああああ」
という勇者様の悲鳴を空に引いて、俺たちは空の旅を開始した。ちなみに休憩は空の上で取る。地面に降りることはほとんどない。俺一人ならな。けど天馬初めての勇者様がいるから、たまに降りて休憩した。そうなるとどうなるかって言うと、城への到着は夜になるわけだ。




