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八章 炎色反応:リチウム -Reprise-(後編)

Trigger Warning

過呼吸描写

※つられる可能性のある方はご注意ください

 燎太郎(りょうたろう)が小学生のころ、祖父母の家に遊びに行ったとき。リビングのコタツに座っていると、一緒に座っていた彼らがとあるテレビ番組を夢中で観ていた。

 燎太郎の家からそう遠くない、一駅ほど離れたところにある母方の実家だった。いかにも「日本家屋」といった佇まいで、古民家カフェを思わせる外観だ。——この建物は四角じゃない。部首の〝ひとやね〟形に瓦屋根があるから。燎太郎はいつもそう思っていた。

 金曜日の夜。映画が始まる前のバラエティー番組『スーパー小学生を探せ』という番組を祖父母は楽しみにしていた。

 基本的には、色々な才能を持った小学生に取材をして、その才能を披露してもらう内容だった。大抵はその一回きり、しかし、中には好評につきシリーズ化するものもあった。

 中でも祖父母が好きだったコーナーは、『化学の天才少年、六角(ろっかく)くんの匂い当てチャレンジ』というコーナーだった。

 六角くんがスタジオに呼び出されると、祖父母はわっと声を上げる。

「燎ちゃんとおんなじくらいの子だねえ」

と、燎太郎の方を向いてニコニコ笑う。孫と同じ世代の子どもたちが活躍していると、微笑ましく思う気持ちは燎太郎にもなんとなく理解できた。

 六角くんが、目隠しをして瓶に入った化学物質——人工的な薬品の場合も、自然由来なもののときもあった——を嗅いで、フリップに構造式を描き始めると、「頑張れー」という祖父母の激励が飛ぶ。六角くんはほとんど、いや全てだったと思う、それに正解した。

 すると、『エクストラチャレンジです』と、司会者が声を上げる。これに正解すると、この匂いの元をプレゼントとします!と司会者は言う。

 六角くんは、素直にいつも喜んでいた。——燎太郎はここでいつも顔を伏せてしまう。これは〝お約束〟だったからだ。このあと出てくるのはほぼ間違いなく「アセトン」だ。

 テレビの中の彼はしかし、なぜか疑う様子もなく、手で煽いで匂いを嗅いだ。理科の実験でアンモニアを嗅ぐとき、ああしたのを燎太郎は思い出す。

 祖父母は、案の定六角くんがむせてしまって、泣いたとき、

「あらあら、かわいそうねえ」

と言いながらも笑っていた、燎太郎はかわいそうに思うのならなぜ笑うのか、どうしてもわからなかった。ただ、祖父母に悪気がないのだけはわかっていた。唇を噛み締める。

『どうしてアセトン?』

六角くんが、正確な構造式を描きながらも、抗議の声を上げるが、無視されて大人がわっと集まり、笑いながら一斗缶を荷台に乗せてやってくる。

『おめでとう!』

MCが人の良さげな顔をして、涙の跡も生々しい六角くんに渡す。

『はい、両親にあげます。実験器具の洗浄に使いますから』

……ここまでがお約束だった。テロップが大きく「この番組では専門家の監修の元 安全に配慮した撮影を行なっています 絶対真似をしないでください」と映し出していたが、真似させられないようなことを、六角くんにはしていいのかと、燎太郎はそう思っていた。

 燎太郎はいつしか、金曜日には祖父母の家に遊びに行かなくなった。

 この番組のオファーを断ったこと、燎太郎はそれも彼らには言えないでいた。





 1、2、3、4まで数えたら7秒間息を止めて、ゆっくり吐く。花がすっかり枯れてしまった紫陽花の廊下を、燎太郎はふらふら歩いている。肺を絞るようにして8つ数えると、また4秒息を吸う。その繰り返し。肺を膨らませるたびに、ヒューッと喉がなり顎がガタガタ震えた。

冷泉(れいぜい)くん、大丈夫だからね、1、2、3、4……はい、息止めて」

健吾(けんご)がすぐ後ろについて、カウントしてくれていた。健吾の前で過呼吸が出るのは初めてだったが、いつも燎太郎がしてくれることを見習って、そのまま返しているようだ。

 自分のリュックを背負い、燎太郎のリュックを手に持ってきてくれていた。燎太郎は健吾の顔を見ることができない。

「保健室」と書かれたルームプレートの下を通り抜けると、

「なんで保健室に入らないの?」

という健吾の、悲鳴に近い声が上がる。燎太郎はついにうずくまってしまった。手や足先がじんじん痺れる。艶のある薄グレーの廊下が、うっすらと汚れを乗せていた。滲んだ視界でその汚れの形をなぞっていると、パタパタという足音が聞こえる。

「冷泉さん、こっち」

という聞きなれた長谷川先生(はせがわせんせい)の声がした。健吾が呼びに行ってくれたのだろう。先生は燎太郎を立たせようとするが、足に力が入らない。

「冷泉くん、楽しいことや好きなことを考えて」

健吾がこう言うと、フンフーンと鼻歌を鳴らした。燎太郎が以前好きだと言っていたゲームのBGMだ。燎太郎はまた涙を何粒か、カーディガンに落とすと、ふらつきながらも立ち上がって、保健室へと入った。

 パーテーションの中に入る。燎太郎の目線はずっと下を向いている。頭まで痺れてくると、代わりに呼吸が幾分か楽になってくる。最初、これが起きたときは死んでしまうのかと思ったが、今はこの痺れが来ると、終わる合図のようで、安心さえ覚えるようになってしまった。

 呼吸が落ち着いても、指先や胸がまだ細かく震えているようだ。瞼が鉛のように重く硬く、視界の半分を塞いでいた。カナリア色がふと、燎太郎の目を賑やかにした。健吾のパーカーの裾だ。


「健吾くん、帰っててよかったのに……」

まだ、少し荒い息遣いで燎太郎が視線を上げこう言うと、

「帰れるわけないでしょう、友達が大変なのに……」

健吾はちょっと怒った様子でこう返した。自分を信頼してくれと言っているようで、その顔を見るとまた燎太郎は涙が込み上げてくる。長谷川先生がテイッシュの箱を差し出してくれたので、燎太郎は鼻をかんだ。


 

 先生にお礼を言って保健室を出ると、燎太郎は学校の中をでたらめに歩いた。健吾は何も言わずについて来てくれる。昇降口にたどり着くと、もう外は薄暗かった。ひんやりと感じるスチール製の下駄箱は、細かく区切られた正方形の中に、たくさんの上履きを忍ばせていた。そう考えると、燎太郎はまた身震いし、空気を求めるように太陽を隠した校庭に出た。

 ここでも、まっすぐ正門には向かわず、ぐるぐると校舎の周りを回る。自分でもどこへ行きたいのかわからなかった。黄色く色づき始めたカエデも、黒い影を湛えている。カエデの横に並ぶ、いつものベンチを遠目にグラウンドへ向かうとその横を歩き、正門から出る。

 今まで行ったことのない、駅とは反対の方へ歩き始めた。片側三車線の広い道路に出た。燎太郎と健吾、ふたりの影を月の光が引っ張る。大きな黒いタイヤ屋さんの看板の横を通り過ぎると、車道の横に人道橋があった。白いガードレールの横をまた歩く。はるか眼下には堤防に囲まれた小川が流れていた。河川敷には背の高い木が生えていて、ガードフェンス越しに手が届きそうだ。

 燎太郎は不意に立ち止まると、車道とは反対側を見つめた。この橋の下はゴルフのカントリークラブのようなものが広がっていて、視界が開けている。健吾に教えてもらった一点パースのように、目の前をまっすぐ流れる水を、じっと見た。

「健吾くん、おれ、透明になって歌いたい。ただ、歌うことが好きだったから、それだけなのに、でも、歌は……オペラは、聴いてくれる人がいて初めて成り立つから、それができないんだよ。歌いたいだけなのに、()()()()()の前で歌うのは……イヤだ」

パースの消失点をぼんやりと見ながら燎太郎は呟いた。

「そっか、……オペラのジレンマだね」

健吾は顔を伏せ、眉を寄せながらこう答えた。燎太郎は堰を切ったように喋り始める。

「……カエデの木になりたい、そうすると、誰にかかわらなくても、風にのってざわざわ歌えるから。それだけでいいから。ただずっと……独りで歌い続けられるから」

鼻をずずっと鳴らす。

「それは違うぞ、冷泉くん。カエデだって、土から栄養や水分、肥料だって、独りで歌ってる訳じゃないんだよ。いろんな相手に力をもらって生きてるんだよ」

健吾の顔は、至って真剣だった。燎太郎は「わかってるんだよ健吾くん……」と呟く。

 燎太郎はこんな道路の真ん中で、リュックを背中からおろし、外ポケットに手を入れると、タロットカードの箱を取り出す。その箱の中から小さく折りたたんだ紙を取り出した。健吾がその手元に目線を配る気配がした。厚く畳まれていて、しかし軽く開いたそれは、心臓の形に似ていた。ゆっくり燎太郎がその紙を広げると、『ハバネラ』の楽譜だった。ヴォーカルスコアから切り離した譜面には、細かい折り目が檻のような模様を作っている。力なくそれを握っていると、にわかに吹き上げた風が楽譜をさらい、高く舞い上がったあと、ガードフェンス越しの木の枝に引っかかった。燎太郎はそれを遠い世界の出来事のようにただ呆然と見ていた。夜の帷に緑を濃くした葉っぱの上に、場違いな白が浮かんでいた。


 ——と、健吾が身を乗り出す。片手でガードフェンスを掴み、もう片方の手で木に引っかかった楽譜を取り戻そうと、背伸びをして目一杯腕を伸ばす。

「健吾くん! 危ない!」

燎太郎は弾かれたように健吾に駆け寄り、後ろから羽交締めのようにした。


 健吾の力は強く、燎太郎がガードフェンスから引き剥がそうとしてもびくともしなかった。筋トレを続けていてよかったと、初めて思った。このままでは健吾が重心を前にやりすぎて落ちてしまうから。眼下には黒い水がコンクリートのように見えて、ただ事では済まないことを暗示していた。人通りの少ない人道橋らしく、燎太郎は助けを求めようときょろきょろ見渡すが誰もいない。車道でトラックがガタガタと音を立ててすれ違ってゆく。健吾のリュックが邪魔に思えて仕方がない。

 健吾は葉っぱを寄せたりして、どうにか楽譜を掴もうと腕を彷徨わせる。だが、指先からもうひとまわり先ぐらいのところに、切なげに五線譜が貼り付いている。

「健吾くん、もういいから。危ないから、戻って」

燎太郎は健吾と反対向きに力を入れながらこう言った。

「うん、大丈夫なんだよ」

健吾の声は不気味なほどに平坦だ。

「大丈夫じゃないよ、ほんとうに危ないから、健吾くんに何かあったらどうするの?」

対して燎太郎の声は、どんどんと大きくなってゆく。

「ほんとうに大丈夫なんだ、親は悲しまないと思うし。冷泉くんの大事なものなんだろ? なら、取り返さないと」

意外な言葉に、思わず力が緩みそうになるので、燎太郎は慌てて腕を強く締め上げた。

「そんなわけないでしょ、悲しむに決まってる」

 ——そもそもおれが悲しまないと思ってるの? と、叫びたい気分だが、今はそれを我慢する。仲が良さそうに見えた健吾の家族、それでも健吾はこんなふうに思うなんて、それを無視してしまっては、きっと大変なことになりそうだから。

「冷泉くんは、ぼくのこと強いって言ってくれたよね、でも全然そんなことなくて……強くもなければ、天才だなんてとんでもない。化学者にだってなれるかわからない、そしたら親はもう、ぼくには用無しだと思うから」

時折、腕を伸ばした際に漏れる短い息を混ぜながら健吾はこう言う。

「学者にしかなれない、って、親がこう言うってことは、それ以外のぼくは許容しないってことだろ?」

〝学者にしかなれない〟一体何が、健吾の中でその言葉を歪めてしまったのだろう。おそらくなにか大きな誤解があるはずだ。——そうであってほしい。燎太郎は、健吾も登紀子も、功一のことも、みんな大好きだから、誤解があるなら解いてほしかった。でないと、双方にとって、……燎太郎にとっても……悲しすぎる。


「健吾くん、眼鏡。きっと、親御さんがすぐに作りに行ってくれた、違う?」

燎太郎は言葉と一緒に、また涙がこぼれるが構わず続ける。

「健吾くんのこと、心配してなきゃそんなことしないんだよ」

健吾の腕が一瞬、止まった気がした。

「……そんなの、みんなそうじゃないの? 視力が悪くては勉強ができないからじゃなくて?」

その声は、疑問をぶつけるというよりは、「確認したい」そんな響きを感じた。

「みんなそうなわけじゃないよ、おれがばらしたって内緒だけど、功一(こういち)さん、バーベキューのとき『健吾の視力に気づいてくれてありがとう』って、そう言ったんだ。その時の声、優しかったよ。『勉強する機械を直してくれてありがとう』なんて、そんなニュアンスじゃなかったよ、息子を想う声だった」

燎太郎のその言葉に、健吾は顔を伏せ、フッと息を吐く。

「……ニュアンスか、ぼくにはわからないものだ。やめてくれよ」

肩が小刻みに揺れている。健吾はくつくつと笑っているのだろうか。

「それに、健吾くんの名前『健やかなわたし』って意味なんだ。これはニュアンスなんかじゃなくてはっきりそういう意味だ。登紀子(ときこ)さんと、功一さんがそうなるように願ってつけた、健吾くん……健吾くんの名前だよ」

健吾の力が徐々に抜けてゆくのを感じる。燎太郎はその隙を見逃さず、一気に健吾をガードフェンスから剥ぐ。そして、勢い余って車道に飛び出してしまわないよう、肩を掴んで歩道にしっかり立たせた。

 しかし、健吾はそのままぺたりと座り込んでしまう。燎太郎もどっと力が抜けて健吾の横に落ちる。ガードフェンスに背をつけて、ふたりの高校生が座っていた。後ろで、かさりと紙が擦れ、しばらく漂ったあと、ぽちゃりと川の水面(みなも)に張り付く音がした。


 しばらく目の前で行き交う車を眺めていると、ずれてしまった眼鏡を直し、ゆっくりと健吾が口を開いた。燎太郎は細かい汗が身体中を伝ってゆくのを感じる。

「……名前って、ただの『呼ぶための記号』だと思ってたから、意味があるなんて、そんなこと考えたことなかったよ。……でも、小学生のころぼくは『アセトンくん』って呼ばれて困っていたことがあった。そう呼ばれると一瞬、ぼくのことだとわからないからだよ」

燎太郎は、祖父母の家で見ていた幼い健吾を思い出す。

「でもね、いつの間にか自然とそう呼ばれることはなくなった。……今考えると、『自然と』じゃないんだろうな。親が……動いてくれてたんだな、きっとぼくのために」

なにかを納得したように健吾は何度も頷く。燎太郎はその様子を見て、眉間に皺を寄せながらも微笑みをこぼす。

「冷泉くんの名前は、どういう意味なの?」

健吾が燎太郎の顔を見る。いつもの好奇心旺盛な健吾の顔だ。

「おれの『燎』は篝火って意味。夜を照らす火だよ」

そうだった、燎太郎は、生まれたときからその身にもう炎を宿していたのだ。その暖かさを確認するかのように胸に手を当てると、次の健吾の言葉に思わず息を呑む。

「じゃあ、シロは? どんな意味なんだろう」

「……きっと自分で(うた)を紡いで欲しいって願いじゃないかな……白地図とかと同じ。詩っていうのは人生の色々なことをひっくるめた比喩で」

〝ペラッペラな言葉って意味じゃない?〟その言葉を必死に飲み込みながら燎太郎はこう言う。燎太郎は白詩(しろし)のことをどうしても好きになれなかった。だからといって、健吾にその棘を向けるわけにはいかない。ハイドロマギサ三姉妹の流儀に倣えば、自分に向けられた攻撃は違うところへ跳ね返さなければ。しかし、その相手は健吾じゃない。

 いや、三姉妹と違って誰もいないところへ跳ね返す、そうできたら人生を、一番したたかに生きられる気がした。

「……ごめんね、ぼくがいなければ冷泉くんはシロともっと仲良くできたかもね」

ポツリと健吾が言った言葉、それは燎太郎の頬を思い切りはたいたようだった。

「どうして、そう思うの?」

「C₇H₁₂O₂……俗に言うストレス汗だよ、今まで不気味に思われると思ってたから、言えないでいたけど、シロはぼくと話すとき、冷泉くんは……シロと話すとき、この匂いがする。シロはぼくのことが、冷泉くんはシロのことが嫌いなんだろうと思ってた。……どう? 不気味でしょ?」

燎太郎は鉛のようだった瞼を大きく持ち上げ、目をまん丸にした。

「不気味じゃないよ! でも、それって強制的に人の心がわかるようなものだよ。……今まで辛かったんじゃない? すっごく」

こう言い終わると、燎太郎の両目から玉のような涙がまた音もなくこぼれる。小さなころから今まで、堰き止めていたものは結構溜まっていたようだ。

「そんなこと言ったら、おれがいなければだよ、健吾くんはもっとシロくんと仲良くできたかもしれないじゃん」

しかしまた、それだと、燎太郎と健吾は仲良くなれなかった。これこそジレンマだ。残酷な答えが導き出されそうなので、燎太郎は思考を止める。

「冷泉くん、キミがなにを諦めようとそれは自由だよ。でも、大事なものなら無理に手放さなくたっていいじゃないか。それを、『思い出』っていうんでしょう?」

凪いでいた頭にスッと健吾の言葉が入ってきたので、燎太郎は健吾を見る。

「これから言うことは、あくまで仮説だよ、だから間に受けないで欲しいんだけど……」

バツの悪そうに前置きをしながら、健吾は続ける。

「カルメンにこだわってたのは、きっと冷泉くんの声がカルメンに近かったからだ。要は一番歌いやすかったんだよ。だから同化もしやすかった。幼いころの愛着は激しいものだからね。でも、冷泉くんは『カルメンの世界』が好きなんだよ、自分のわんこに『エスカミーリョ』って名前をつけるほど、ね」

燎太郎は再度、はらはらと涙を落とす。

「あくまで仮説だから本当のことはわからないよ、でも冷泉くんはエスカミーリョもドン・ホセもきっと同じように好きになれるんだ。冷泉くんはエスカミーリョにもドン・ホセにもなれるんだよ。最初に教えたボイル・シャルルの法則のように座標……視点を変えればいい」

健吾の言葉が終わる前に、燎太郎から小さな嗚咽が漏れた。

「……ドン・ホセのことは好きになれないよ。カルメンを刺しちゃうんだもん」

「うーん、それは冷泉くんの感情だからどうしようもないか。ぼくだってアセトンは好きになれないし……」

冗談ぽく言ったつもりだったが、健吾が律儀に——真摯に答えてくれるので燎太郎はひとつ笑みをこぼしてしまう。それと同時に、堤防は全て壊れてしまった。嗚咽は慟哭へと変わってゆく。長い間ずっと聞いていなかった自分の泣き声が、とてつもなく奇妙に聞こえた。

「どうしよう、今、キミの背中をさすって励ましたい。でも、親から『人の体には絶対触っちゃダメだ』と、そう言われてるんだ」

燎太郎の上げる、遠吠えのような声を縫って健吾がこう言う。口を結び困惑を浮かべた顔が涙の向こうに見えた。

「ありがとう……気持ちだけで、嬉しいよ」

泣き笑いを浮かべながら、途切れ途切れに吐き出し、俯く。すると、背中にためらいがちな指が触れた。

「親の言いつけを破っちゃった。でも、不思議と罪悪感はないよ」

おそるおそるといった遠慮がちな手は、やがてゆっくりと燎太郎の背中を撫でる。ごつごつとした指の関節をカーディガン越しに感じながら、燎太郎は膝を抱えて喉を思い切り震わせる。自分の裾を引っ張るあし鴨が一羽、そのクチバシを離した気がした。

 『カルメン』では、闘牛士が二幕から舞台に立つ。今まではずっと一幕を演じていただけかもしれない。いや、舞台に立ってすらいなかったかもしれないのだ。

 ——ドン・ホセのことは好きになれないよ。カルメンを刺しちゃうんだもん

 いつかは自分も、それはそれ、と割り切ってドン・ホセを演じてみたくなるのだろうか、燎太郎は、そう思った——。



 いい加減、公共の道路に迷惑をかけそうだったので(いや、もうすでにかけている)、ふたりは立ち上がってふらふら歩き出す。念の為、地図アプリを見ながら来た道を辿って学校へ戻る。なんとなく、先生に見つかったらやばいと思い、そそくさと大きな四角い校舎の横を素早く通り抜けたら、タウンハウスの横を歩く。コンビニの光が漏れる道路は照明の当たった舞台のようだ。

「健吾くん、花火ってまだ売ってるかな。おれ、リチウムの赤い炎を見てみたい」

道路の向こう側、コンビニを見つめながら燎太郎がこう言った。

「ああ、ごめん。ぼくの言い方が悪かったね。一般的な花火の赤色はリチウムじゃなくて、ストロンチウムなんだ」

「そうなの?」

申し訳なさそうな声を出す健吾にこう答えながらも、燎太郎は横断歩道を渡り、コンビニへと入った。

 いつか、健吾と一緒にアイスを食べたこのコンビニ。エンド展開されている季節もののコーナーに期待したが、もう秋の特集に変わっている。お芋や栗のデザートが並んでいた。次に、見切り品のワゴンを探すが花火は見当たらなかった。

「……来年まで待つか」

燎太郎はガックリと肩を落とす。すると、健吾がなにかを決意したようにこう言った。

「両親に聞いてみよう。ラボを使わせてもらえるか」

「ええっ、ダメだよそんな。それに、きっと高価なんでしょ?」

燎太郎は跳ね上がって、手を振り遠慮する。

「そのときは、そのときだよ。ストロンチウムでもいいし」

健吾は笑うが、その表情は不安そうだ。燎太郎は頷き、コンビニを後にした。——これはおれだけじゃなく、健吾くんと親との対話でもあるんだ。


 神社を囲む森まで歩を進めると。燎太郎は心臓が高鳴ってゆくのを感じた。

「その前に、ちょっとぼくの部屋に寄ってくれない? 本当はもっとうまくなってから見せようと思ってたんだけど」

健吾が、はにかみながらこう言う。クスノキやケヤキから吹き抜ける風を頬で受けながら、燎太郎はなにか予感じみたものを受け取る。日のとっぷりくれた夜のカーテンの中で、悪巧みをする子どものように思えた。

 ラボには灯りがついていた。登紀子か功一がいるのかもしれない。

 息をひそめ、ダクトの下を潜り抜ける。微かな風と、薬品の匂いを感じる。

 黒い丸を触って静電気を除去すると、そろそろと階段を上り、健吾の部屋へ。

 ドアがぱたりと閉まると、やはりというか健吾がクローゼットへ潜り込む。


 ふたりはリュックを下ろす。

 健吾がストラップ取り付け、ギターを構えると、ペグをゆっくり回す。いつもより丁寧にチューニングしているように、燎太郎は感じた。

 

 «L’amour est un oiseau rebelle Que nul ne peut apprivoiser»

 ギターは歌いはじめる。

 ハバネラのボーカル部分、冒頭のメロディーをなぞっているようだ。

 〝愛は『野の鳥』誰も飼い慣らすことはできない〟

 こう歌いはじめるハバネラ。

 エレキギターの伸びやかな音は、その鳥のため、滑走路の枝だった。

 あし鴨がまた一羽、自分の裾を離す。

 さっき、いったん全部絞り出したと思った涙がまたこぼれる。

 思えば、一番最初にこの部屋で健吾のギターを聴いたときも泣きたかった。

 それができずに、顔を伏せるしかできなかったことを思い出す。

 «Prends garde à toi»

 ダダッダダ、と口ずさめば、

 誰もが聴いたことがあると言うだろうこのメロディー。

 健吾は、ギターでその旋律をなぞる。

 そのメロディーがひどく懐かしく感じ、燎太郎はまた雫を落とす。

 そうだ、おれはずっと泣きたかった。


「冷泉くんも歌って、今のキーでいいから」

健吾が声を上げて、また冒頭へと繰り返す。頭の中で、リピート記号がふたつ点を打つ。

 鼓動のようなあのメロディーが流れた。

 燎太郎は涙をカーディガンの裾で拭うと、腹筋に力を入れる。オペラスクールの伝統保守派のあの先生なら、こんなアレンジ許さないだろうな、と苦笑いをこぼした。


 テレビでよく観るカラオケの採点機能、その画面だと、ギザギザのVの字が並んでいるだろう。音を掴み損ねた。発声練習もしていないので、喉も全く開いていない。それでも、こんなに大きな声で歌ったのは久しぶりで、体の中に押し込めた重圧が、全て解放されてゆくようだった。

 イベリアカササギが青い空へ飛び立ってゆく。最後のワンフレーズまで歌うと、健吾は拍手をした。

「すごいね、これが冷泉くんが言ってた『生歌』ってやつか。すごい迫力!」

目を輝かせて、頬が緩んでいる。

「全然、これが生歌だと思ってもらっちゃ困るよ、声も全然出てないし、音程も外しまくり。……もっと練習がいるよ」

燎太郎が笑って、フッと顔を伏せたらノックが鳴る。



「健吾……」

しばらくして、ドアが開くと登紀子と功一が並んで立っていた。

「ちょうどよかった、ふたりに頼みがあるんだ」

健吾はギターをベッドに置くと、自分の両親に向き合った。

「こんな遅くまで……燎太郎くん、帰らなくていいの?」

登紀子が心配そうな声を出す。

「うん、帰れない。リチウムの炎色反応を見せてあげたいから。ラボを使っていい?」

健吾のこの言葉に、登紀子と功一は弾かれたような驚愕を浮かべた。

「よその子はダメって言ってるでしょう」

言い聞かせるように、ふたりは声を合わせる。

「しかもリチウムは危険だよ、同じ赤でもストロンチウムならまだしも……燎太郎くん、ほんとうに炎色反応が見たいの?」

功一が燎太郎の顔を見る。

「材料費……って言っていいのかな? リチウムとかにかかるお金ならお支払いします。でも、ダメならストロンチウムでもいいんです。赤い炎が見てみたいんです」

燎太郎はおずおずと、しかししっかりと、登紀子と功一の目を交互に見ながら答えた。

「お金の問題じゃないのよ……」

困ったように登紀子が続けた。

「……じゃあ、なんの問題なのかって話なんだね」

功一が、ポツリといったふうに下を向いて呟く。

「お父さん!」

嗜めるように、登紀子が功一の袖をひいた。

「うん、もちろん安全には何事も変えられない。わかってるよ。でも、リチウムじゃなきゃダメな理由があるんだね」

登紀子は、はーっと息を吐くと、夫のその言葉に、しぶしぶといった感じでこう続ける。

「屋外実験スペースを用意するから、安全距離をとって、それが最低条件。そして、これが最後。炎色反応を見たら、燎太郎くんはそのままお家に帰るの」

燎太郎は「屋外で実験?」と、飲み込めずにきょとんとしていると、健吾が燎太郎に向かって微笑みかける。

それだけで、この交渉が成功したことがわかった。

「その前に、なにかお腹に入れること、これも。手元が狂ったら大変だからね」

登紀子はこう言うと、指を揃えて手のひら側に折りたたんだ。こっちへこいということだろう。そのままキッチンへと進んでゆく。燎太郎と健吾は顔を見合わせると、その後に続く。



 四人でまた、八帖のダイニングでぎゅうぎゅうとうどんを作った。DNA二重らせんで縁取られたうどん鉢を用意して(燎太郎は、これを本当にどこで手に入れるのだろうと思う)、うどんを大鍋で煮る。その間に粉末のうどんスープをお湯で溶かし、燎太郎には冷凍のエビ天ぷらまで用意してもらった。

 うどんを啜りながらも「白衣、お父さんのでサイズ合うかなあ」と、登紀子は心配そうな声を上げていた。

 健吾が鉢や鍋などを洗い、その横で燎太郎が布巾で拭き上げている間に、登紀子と功一のふたりはラボの準備をしてくれた。


 健吾とふたり、燎太郎はダイニングで顔を伏せてじっと待っていると、功一が階段からにゅっと顔を出し、

「ふたりとも、来なさい」

と声をかけてくれた。

 燎太郎は、立ち上がるがちゃんと地面を踏み締めているか曖昧な気持ちになる。健吾が頷くので、燎太郎は頷き返し、一段ずつしっかり階段を下りた。


 階段を下り一階に着くと、いったん外に出てラボへ向かう。住居用玄関とは逆にラボの入り口があった。

 アルミ製のドアを開けると、エントランスにマットが敷いてあった。

「それ、ちゃんと踏んでね。静電気除去のマットだから」

健吾が燎太郎にこう声をかけたので、燎太郎は「うん」と頷くとその濃いグレーのマットを両足で踏み締めた。

 ドアはふたつあり、「LAB」という札と、「更衣室」という札がかかってあった。健吾が更衣室の方のドアを開けると、手招きする。

「ここでね、マスクと白衣を着けると、薬品の匂いが平気になるんだよ。なんと、あの〝アセトン〟すら許容範囲になる」

白衣のボタンを留めながら健吾は笑った。燎太郎はその光景を眩しく見ていると、健吾が「功一」と札のかかったロッカーから白衣を取り出し渡す。「洗濯してあるから大丈夫だよ」と、念を押す。

 燎太郎は洗剤の匂いが微かに残る白衣に袖を通す。ラボの方のドアへ向かうと、「ここにさわる」という文字の書いたプレートがあったのでそれに触れた。以前健吾が言っていた「ラボの入り口にある静電気除去装置」だろう。健吾は頷くと同じようにそのプレートに触れた。

「屋外の実験スペースに、塩化リチウム水溶液作って置いてあるから」

ラボに入ると、功一が高校生ふたりに声をかけた。健吾が「オッケー」と答える。

 ラボは、白い壁にツヤのある白い床。その上に引き出しを抱えた台が設置されていた。ガラスの戸のついた棚にはラベルの貼られた瓶が並べられていて、さらにガラスのドアがその空間を区切ってあった。

 台には水道が備え付けられていて、顕微鏡や、ビーカーなどのガラス器具も並んでいた。比較的無機質に感じる空間の中に、緑の箱の紙ワイプが置かれていると、燎太郎には少しチャーミングに見えた。

「冷泉くん、あのドアから外に出るからね。何も触らないように気をつけて歩いて。外に出たらガスバーナーがあるから、それから1.5メートルくらい離れて見てて」

健吾が指差した先には、ラボの入り口と同じようなアルミのドアがあった。功一が「念の為」と言いながら、グローブとゴーグルを燎太郎に渡す。

 健吾がまっすぐそのドアに歩を進めると、燎太郎もその後をついて行く。たくさんの薬品や実験器具たちに見送られながら、ドアの先、長方形に空間が切り離されると、その奥に夜の空が見えた。

 その空の下、コンクリートの壁に囲まれた庭には、いくつかのライトが地面から光を放ち、銀色の実験台を照らしていた。台の側には登紀子が控え消火器が用意されている。

 すると、健吾が立ち止まってこちらを振り返り、手の平を見せた。ここで止まれということだろう。すぐさま、功一が横に来て一緒に立ってくれる。

 台の上には、銀の筒のようなものが夜空を仰いでいた。それを支える台座のようなものにはオレンジ色のゴム管が伸び、ガスボンベへと繋がっていた。燎太郎はこれがガスバーナーだろうかと推測した。

 健吾がその筒の上で、空気をすくうように匂いを確かめると、「ガス漏れヨシ」と声を上げた。料理に使う金属製バットのようなものにはピンセットと、しっとりとした脱脂綿のようなものが置かれていた。


 健吾が一度振り返る、マスク越しだけど、ニヤリと笑ったのがわかった。彼はバーナーに向き直ると、

「点火準備ヨシ」

そう声を上げる。健吾はガスバーナーの先に着花ライターの火を近づけた。ガスバーナーに炎が灯る。オレンジ色に大きく燃え上がったかと思ったら、健吾がガスバーナーの筒を調整する。すると、キッチンのガスコンロのような青い炎になる。

 ピンセットで脱脂綿をつまみ、健吾はバーナーの炎にくべる。脱脂綿はしばらく、うんともすんとも言わず静かにしているが、やがて赤く燃え上がる。ちろりと舌を出し、空気を味わうようにゆらゆら揺れるその姿は、燎太郎が思い描いていた〝情熱の炎〟そのものだった。燎太郎はまたもや——今日何度目かわからない——涙をこぼす。功一の方を向くと、静かに頷いてくれたので、燎太郎はゴーグルを外して、ハンカチでその涙を拭った。ゴーグルが曇ってしまう。脱脂綿の表面が熱で縮み、黒い焦げ目が微かについた頃、健吾は赤い炎をガスバーナーから下ろした。健吾が顔を上げると、振り向き目が合う。ふたりは強く頷いた。


 カルメンは、人より赤い炎を宿していた、ただそれだけなんだ。でも、その身に宿した炎というものは、誰しも持っていて、そして、一人ひとり色が違うものだろう。

 健吾と一緒にいたからこそ、気づけたことそれは、銅の力を借りれば青緑に、例えば他には、バリウムの力を使えば黄緑色に。何かに頼って色を変えようとすること、それもちっとも悪いことではないんだ。

 燎太郎はまだ決めかねていた、どんな色の炎を灯すか。ただやはりどうしても、他の人よりも一際赤い炎を灯すカルメンのことを、燎太郎はカッコいいと思ってしまう。


 燎太郎は車で自宅まで送ってもらった。車から降りる前に、登紀子が、

「こっそり聴いてたの恥ずかしいけど、燎太郎くんの歌、すっごく良かったよ」

と言ってくれた。

「うん、ぼくなんか感動して泣いちゃったよ」

ハンドルを握りながら功一もこう言うので、燎太郎は嬉しくて笑顔がこぼれた。


 登紀子と功一は、燎太郎の家に連絡を入れてくれたらしく、門でインターフォンを鳴らすと、迎え出た燎太郎の両親に、深々と頭を下げていた。

 両親と一緒に、四駆の大きな車を見送ると、父と母が、

「他所のお家に、あまり迷惑をかけてはいけない」

と言った。

 このまま、なにも言われずに寝かしつけられるかもしれないと思っていたので、こうやって叱ってくれたことが、燎太郎にとっては嬉しいことだった。



 次の日、燎太郎と健吾は「今朝の音楽」すらやらずに、ずっと黙って授業を受けていた。

 窓の外では、細い雲が気ままに漂っている。

 昼休憩になると、黙って顔を見合わせて、いつものベンチでカエデを見上げる。

 風がその枝を撫でると、ポトリと何かを落とした。

「わあ、なにこれ!」

燎太郎はここで今日初めての声を上げた。

 ベンチの上、自分のガングラブチェックのスラックスの側、モゾモゾとなにかがうごめくので、思わず燎太郎は立ち上がる。何歩か小走りで飛び出したあと、後ろを振り向く。木の板の上をちょこちょこと這うそれは、

「え? ミスター・ポイズン?」

食べかけのパンを抱きしめながら、燎太郎はおずおずと毛虫に話しかけた。健吾はゆっくりと立ち上がると、

「こいつ、イラガじゃない、マイマイガだ……思い込みは科学の敵なのに……不覚だ」

ピーナッツバターサンドを持っていない方の手で口を塞ぐ。

「え? この子、毒ある? どうしたらいいんだろ」

燎太郎と健吾はふたりならんで、伸びたり縮んだりで進んでゆく、茶色い毛虫をボーっと見ていた。

「放っておこう、駆除を生き抜いた強い個体だ。……じきに蛾になって飛んでくだろうし」

「……そうだね」

毛虫の横断を見届けながら、ふたりは頷いた。

「今言ったこと、科学者じゃなくて、六角健吾の言葉として受け止めてね。ちょっと、責任持てないや」

健吾が少し、困惑を浮かべながらこう言ったので、燎太郎はふっと笑い。

「そうだね、うん。顔を見て考えたけど、この子『ミスター・ポイズン』だと思うよ」

と、返事をして、また笑った。



 放課後、いつものように文化祭の準備が始まる。

 燎太郎は改めてクラスメイトに詫びたあと、努めて明るく、気にせずで当日まで頑張ろう、と声をかけた。

 クラスメイトたちは、笑顔を見せて「冷泉くんの方こそ気にせずで」と言ってくれたので、燎太郎はありがたかった。

 ミシンの規則的な音、大きな紙が擦れ合う音が上がり始めたら、燎太郎は軽音部に向かう白詩を追う。

「シロくん」

白詩の背中に声をかけると、彼は立ち止まって燎太郎の方に向き直る。

 天井のライトの音が響くほどの、静寂が広がる。

 燎太郎は唇を軽く噛み締めると、

「返事、したいんだ」

笑顔の奥に潜んだ警戒を抱える白詩に、こう切り出した。


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