100話 この先は
あとがきに告知あります!
「……向こうの戦力については、分かりました」
カティアが告げる。
正確には分からないことも……特にクロノの血統魔法等多かったが、それに関して今聞くわけにはいかないことだけはよく分かった。
故に、次の話に移る。
「では、次に大事な……向こうのこれからの動きについて。
端的に──組織の方々は、今どこに向かっているんですか?」
「王都だ。間違いない」
幸い、と言うべきか。
それに関しては、全く迷うことなくローズも回答してくれた。
「そもそも向こうがこのタイミングで全員の正体を明かしたのは、もう隠す必要がなくなったからだ。
そんでそれは過信じゃない。唯一にして最大の組織的な厄介者だった大司教派閥を潰し──何より、『あの魔法』の持ち主がエスティアマグナまで押さえた以上。あとは準備さえ整えば止められるやつは誰もいなくなる」
その『準備』が何なのかは、例によって今言うわけにはいかないそうだったが。
ともあれ、向こうが目的に必要な力を全て手に入れた以上、残るは総仕上げのみ──すなわちこの国の中心である王都を、今度こそ完膚なきまでに壊滅させることだけ。
故に、組織の人間は間違いなく王都に向かっているか既に居る、王都以外に向かう理由は最早ないとのことだ。
……つまり。
それがはっきりしているのならば、自分達が今後取るべき行動も自然と決まってくる。
「じゃあ……わたくしたちも、王都に?」
「そういうことだな。『あの魔法』に基本的な有効対策はない。雑な話になるが、とにかくいち早く王都に向かって出たとこ勝負で奴を叩くしかない」
今度はリリアーナの問いにローズが答え。
だが続いて、神妙な顔でこう告げる。
「──だが、当然あたしたちだけで王都に向かうわけにもいかない」
「!」
「相手は『組織』だし、油断をするようなタマでもない。まず確実に、組織の人間や理由も知らないまま協力している貴族……向こうの軍隊戦力が王都に行くまでに妨害してくることだろうさ」
「…………」
一同が黙り込む。
何を言えば良いのか分からなくなったからではなく、それを聞いた以上必然的に今、この瞬間向き合わなければいけない問題が明らかになったからだ。
「じゃあ」
「ああ、そうだ。つまるところこれからあたしたちは──」
けれど、それについて触れないわけにもいかず。
踏み出したカティアに、ローズは改めて頷いて。
それを、述べる。
「軍隊戦力に対抗できる、こちらの軍隊戦力
──現状不満まみれの教会連中と貴族残党を、味方にする必要があるというわけだ」
一同に、改めて沈黙が満ちる。
これまでは理解しつつもなんだかんだで見て見ぬふりをしていた、できていた問題に向き合う必要が出てきたというわけだ。
「……ルキウス様、現状貴族の皆さんの様子はどうでしょうか」
「何とか抑えてはいたが……正直限界と言わざるを得ないな。すまない」
これまで貴族の対応と任せたルキウスに質問を投げるも、返ってくるのは芳しくない答え。
曰く、教皇を出せの一点張り。教皇に何が起こったのかを正直に説明しようとしても『そんなことあるわけないだろう』と一切こちらの話を聞こうとせず。教皇の言うことしか聞かない、いなくなったとなればこちらが新しい教皇──間違いなく自分達の傀儡だろう──を選出するとの主張を変えない。
端的に言えば……自分達にとって都合の良い内容以外はあり得ないと断ずる、この国の典型的な貴族の反応だ。
「……」
その手の連中を、説得して味方にする必要があるのが現状。
だがこういう手合いに対して、エルメスたちはこれまで関わってこなかった……否、関わらずにいられたのだ。
何故なら──それらのことは、ユルゲンが全てやってくれていたから。
ユルゲンは、こういう大人数が集団として団結する上での面倒な裏のやり取り、交渉、折衝などを全て一手に担ってくれていた。
『貴族』としてやるべき裏の部分を、ここまで全て任せきりにしていた──その影響、言い換えれば目を背けていたツケが、現状自分達を直撃したというわけだ。
けれど。
「……嫌だの何だの、言ってられないわよね」
それをしっかりと理解した上で、カティアが口火を切る。
「もう、お父様はいないもの。今までやってこなかったことなら尚更、やるしかないわ」
ユルゲンがいなくなって最もショックを受けているだろう彼女のその宣言に。
他の第三王女派の面々も、次々に頷く。
やるべきことははっきりした。文句を言う貴族たちを何を使ってでも説得し、王都に向かうための軍隊戦力としてまとめ上げる。
『自分達のために王都まで戦いに行け』と言われて大人しく従うような貴族たちではないが、そこが自分達の工夫のしどころだ。
……今まで、目を背けてきた分も。しっかりと成長するのだとの意思を込めた子供たちの宣言。
それを見たローズは、満足そうに頷いたのち。
「──んで、具体的な方策はあるのか? ちなみにあたしにはない」
……すごく痛いところを突いてきた。
そうだ。やる気や意識の違いだけでそんな、それこそ魔法のように素晴らしい方策が思いついたら苦労はしない。
今までユルゲンに任せきりにしていたということは、当然そちら方面の経験値が自分達には絶対的に足りていないということであり。そういう俗世のことから長年離れていたローズも詳しくはないだろう。
割と初手から暗礁に乗り上げ始めた会議だったが……
「ま、しゃーないさ。こっち方面に関しちゃあたしたちは全員素人で。
そんで……そういうお前たちだったからこそ、得られたもんもある」
「え?」
そこで。ローズの苦笑じみた……何かしらの心当たりがありそうな言葉に前を向く。
その予感通り、ローズは続けて。
「単純な話さ。そういうお前たちだったからこそ、ここまで味方も増やせたんだろ?
だから、『これ』もお前たちの成果だ。……とゆーわけだ、丁度良かったな、入ってきて良いぞ」
告げられた言葉とローズの目線に合わせて、一同がローズの後ろ──会議室の入り口の方に目を向ける。
同時に、少しだけ躊躇いを感じさせる所作で扉が開き。
そうして入ってきた人物に……全員が、多かれ少なかれ驚きの表情を浮かべた。
長い金髪に気の強さを感じさせる美貌、表情も相まって何処か憔悴した様子ながらも……それでも特徴的な紅眼には確かな覚悟を決めた光が宿っており。
何より……この場の全員、その少女には見覚えがあった。
「お姉様……」
第二王女、ライラ。
リリアーナの呟きを受けて、少しだけばつの悪そうに目を背けた彼女。そんな姉妹の様子を見て。
「さっきちょっと話したんだがな。この子、確かに魔法はぶっちゃけると大したことないし、これまであのクソ義姉貴の元で目立ってなかったみたいが……正直驚いたよ」
ローズは笑って、こう告げる。
「──実はめちゃめちゃ有能だぞ、この王女様。
少なくとも政治的な面に関しては……多分、相当頼もしい存在になってくれると思う」
今一度の驚きに支配される、第三王女派の面々。
そんな中で、一人だけ。リリアーナだけが、抑えきれない喜びに顔を輝かせるのだった。
というわけで、第二王女ライラ様が仲間になりました……!
次回、軽く彼女の話をした後政治力的なお話に入っていく予定です、お楽しみに!
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