最近災難ばっかだ…。
これにて文化祭編終了。ここから投稿ペース落ちます。楽しみにお待ちくださると幸いです。
劇を観終わって食べ物を買いに歩いていると、突如後ろから何者かに追突された。
『!!??』
ぎゅーっと強く抱き締められてびっくりしていると、僕に見えるようにひょこっと顔を出したソイツ。
その瞬間雷が落ちたみたいにピシャーンと固まった。
『す、昴…!?』
「そう、オレだよ。
久しぶり…ずぅっと会いたかった」
昴は僕を抱き締めたまま、うっとり笑う。
僕は恐れていた事態に思わず顔を青くしていた。
天野昴、中学校時代の表番長だった。
最初は中学校トップの実力を持つ番長の昴に敵視されてたけど、僕に負けたことで僕の舎弟となった1人。
つまり僕の黒歴史を共に過ごしたやつ。
な、なんでここに…今まで見つからなかったのに。
『他の奴らは…』
「まだ誰にも言ってないよ、李生のことはオレだけ知ってればいいもん。
…ねぇ、なんでオレには何にも言ってくれなかったの?オレのこと信用してなかったってこと?オレずっと李生のこと探してたんだよ。李生のことこんなに大好きなのに李生はオレのこと嫌いになっちゃったの?沢山尽くしてきたのにひどいなぁ。悪い子は脚の腱を切って閉じ込めちゃうよ?」
『ひえ…』
ノンブレス怖。
昴は時々こうして病むから怖いんだよ…!
イケメンの甘い笑顔のはずなのにハイライトのない瞳で恐ろしいこと言ってくるからゾワゾワする。
「冗談だって、大切な李生にそんなことしないよ」
ハイライトが戻った目でにっこり微笑んで言うけど、絶対冗談じゃないって。
そう、昴はヤンデレとメンヘラを掛け合わせた最悪の生命体。
だから、一番捕まりたくなかったのに。
「さっきもさぁ、仲良く他の男と手ぇ繋いで狡いよ」
『別に仲良く手ぇ繋いではないけど!?』
瀬尾と仲良く手を繋いだという事実は存在しないから。
しかし、僕の反論も聞いちゃいない昴は近くにいた瀬尾をギッと睨む。
瀬尾は顔を青通り越して白くしている。
瀬尾も中学は違うとはいえ、この男のやばさを知っているらしい。
この先の展開に僕は本気で頭を抱えた。
どうしよう、昴が本気で瀬尾に絡んだら全治1ヶ月どころの話じゃない。
最悪、瀕死か半身不随にしてもおかしくないレベルだ。
事実、キレたら手をつけられない昴は過去に僕の近くにいた人間に手を出してほぼ全員病院送りになっている。
「李生のこと見つけられたからまぁいーけどさぁ」
『…どうやって見つけたの?』
何より気になったのはそこだ。
昴はケロッと答えた。
「このアカウントに載ってた写真だよ」
スマホを見せてきた昴に見てみると。
『は?何これ、おい瀬尾何してくれてんだよ!』
それは瀬尾のイ○スタのアカウントで、僕の体育祭の黒歴史写真が載ってた。
また瀬尾のせいかよ、この野郎!
怒りに震える僕を見た瀬尾は昴が僕を見つけた原因が自分だと気付いたのか死にそうな顔をして逃げ出した。
脱兎の勢いで去っていく瀬尾を昴は興味なさげに見やる。
「アイツ逃げたけど」
『半殺しでいいよ』
殺意MAXで告げると昴は何故か嬉しそうに微笑んで「わかった、○してくる」と返して光の速さで瀬尾を追いかけて行った。
…なんかマジで○しそうで怖いんだけど文化祭で警察沙汰はやめてくれよ?
その後結局瀬尾はまたボコされて病院送りになった。
が、今度は僕に手を出したことが僕の恋人(設定)の昴にバレて○られたということになっていた、なんでやねん。
昴が恋人とかないから、昴が僕の指示と私欲でボコしただけだから。
後日会長からさりげなく以上の噂について聞かれたけど根も葉もないと否定しておいた。
「はー、すっきりした!」
『ヨカッタネ…』
瀬尾をサンドバッグにし終えた昴は溜飲が下がったようですっかりご機嫌だった。
相変わらず僕に抱きついてきて僕の頭に頬を擦り付ける昴はポツリと言う。
「でも、なんで李生はここに来たの?
オレ達といるの嫌になった?」
寂しげでそれでいて悲しげな声に僕は言葉につまる。
中学校時代で舎弟だったのは昴だけじゃない。
沢山仲間がいた。
全部楽しくなかったわけじゃないし。
あの日々が無駄だったとは思わない。
思わないよ。
でも。
『皆のことは大切だけど、僕は普通になりたかったんだ。
普通に学校に行って、友達作って、寄り道して。
そんな日常が欲しくて…ごめんね』
全ては僕のわがままだった。
皆が僕のこと探すだろうということはわかっていたんだ。
必死に血眼になってでも。
だけど、僕は縋る視線を無視した。
酷い人間だと思う。
恨まれたって仕方のない別れだった。
ぐっと手を固く握っていると、昴は身体を離すと悲しげに眉を下げて言った。
「…そっかぁ、“普通”が欲しかったのか。
それはオレ達からはあげられなかったね」
昴は僕に中学校時代のまま高校も裏番長でいて欲しかったんだと思う。
でも、それは目立つ行為だし喧嘩に巻き込まれるし普通ではいられない。
それを僕が拒んでいることを悲しみながら、でも解ってくれた。
「ねぇ、李生。
連れ戻したりなんてしないから、オレとの関係切らないでよ。
裏番長じゃなくても、李生のこと大事なんだよ」
『!』
僕は裏番長という立場を皆好いてるんじゃないかと内心どこかで思っていて不安だった。
僕自身はどうでもいいんじゃないかって。
でも、昴は僕自身が大事だと言ってくれた。
その言葉は過去の不安ごと飲み込んだ。
救われた気がして、嬉しかった。
『…急に消えてごめん。
また、やり直したい』
頬をかきながらそう言うと昴は途端に目を輝かせると力一杯抱き締めてきた。
「!愛してるよ、李生。
死ぬときは一緒のお墓に入ろうね」
『重い重い』
昴は僕の連絡先をいれたスマホを家宝のごとく抱き締めてルンルンで帰っていった。
つい交換してしまったけど大丈夫、だよね…?
色々ありすぎた文化祭に疲れた僕はその後数日熱を出すのだった。
最近ずっと災難ばっかだ…。
昴「そーいえば李生なんでメイドの格好してたんだろ?まぁ、可愛かったからいっか!
あ、電話だ、もしもーし」
?「珍しく上機嫌だな、なんかあったのか?」
昴「うん、とーっても良いことがあったよ」




