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巨大なトラックが並ぶ大型車専用レーン。


その一角に、巨体を寸分の狂いもなく滑り込ませる。エンジンを止めると、それまで室内を満たしていた重低音が消え、代わりに耳の奥で静かな耳鳴りが残った。


キャビンのドアを開け、ステップに足をかける。


すとんと地面に降り立った瞬間、付近で休憩していた数人のドライバーや、普通車の方から歩いてきた家族連れの視線が、無遠慮に香を射抜いた。


二十七歳の、しなやかな体躯。


作業着の袖をまくり、少し上気した顔で髪を整える彼女の姿は、無機質な鉄の塊が並ぶこの場所で、どうしても浮き上がってしまう。


「あんな若い子が、あのデカいのを……」


向けられた視線の裏側にある、驚きと好奇心が混ざった声なき呟きが、夜の空気を通じて伝わってくる。

かつての彼女なら、この視線の雨に打たれ、肩をすくめて足早に立ち去っただろう。 だが今は、少しだけ違う。


香は視線を地面に落とすことも、逆に虚勢を張って睨みつけることもしなかった。 ただ、相棒である銀色の巨体のドアを「カチリ」と確実に閉める。その金属音は、彼女の心の境界線を引く音のようでもあった。


食堂へと向かう歩調は、迷いなく真っ直ぐだ。


自動ドアをくぐり、食券機の前に立つ。 店内に漂う出汁と油の匂い、そしてテレビから流れる夜のニュース。


ざわつく人混みの中にいても、彼女の周囲には、走ってきた距離が作り出した不可視の壁がある。


選んだのは、一番ボリュームのある定食。


周囲の視線など、走行中にバックミラーをよぎる光の一つに過ぎない。 香は、隅の席に深く腰を下ろした。


これから始まる夜の部。


再びあの孤独なキャビンに戻るまでの、短い「地上」の時間。 彼女は運ばれてきた熱い茶を一口啜り、自分の内側にだけある静寂に、そっと身を浸した。


食後の熱が身体に残っているうちに、香は洗面所へと向かった。鏡に映る自分は、長時間の運転と緊張で、少しだけ肌が煤けて見える。


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