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初めは二人で一緒に美術館をまわっていたのだけど、影があまりにも熱心に絵を見るので、途中でホラーは影の邪魔をしないために(さっきは買い物に付き合ってもらったし)別々に行動して絵を見ることにした。ホラーは影と違って絵画にあまり興味が無かったのだけど、やはり本物の絵画は実際に見ると興奮もしたし感動した。(こんなに大きな絵や逆に知っている絵画が実際にはこんなに小さいんだなんて驚きもあった)
そんなふうに絵画を見ているとホラーは一枚の絵と出会った。それはとても美しい大人の女性を描いた肖像画だった。あの大きさはそれほど大きくはない。(むしろ小さい部類に入る大きさだと思う)その絵の中に描かれている女性は本当に綺麗で美しかった。
黒い髪をした真っ白な肌をした大きな青色の光る瞳をした美しい女性。その見た目の特徴はすごくホラーとよく似ていた。ホラーはその絵の女性を見てお母さんのことを思い出した。ホラーはその絵画の前で立ち止まってじっとその絵を見つめた。私はこの絵に出会うために今日この場所に導かれたのだと思った。神様に。あるいは運命に。
その絵画には名前があった。
夜の女王。
それがこの絵画の(そしてこの絵の中に描かれている美しい女性の)名前だった。