5.白百合隊出動! ~ 「前線勤務は伊達じゃないっ!!」 ~
馬車に揺られて自宅へ着き、僕はいつものように帰宅を告げた。
「ただいまー。」
「お帰りなさいませ。アーデルお兄様!」
「お帰りなさいませ。若様。」
「お帰りなさいませ。坊ちゃま。」
出迎えてくれたソフィーや執事たちに手を振り、メイドたちに鞄や外套を預けると、外套のポケットからラブレターが落ちてしまった。
「あら?」
「あ、それは・・・。」
僕が拾う間も無く、一瞬でつむじ風のようにソフィーがラブレターを拾い上げてしまった。断りも無く中身が読まれてしまう。
「『愛しのアーデルハイド様。あなたの横顔を見つめて以来、わたくしの胸の高まりが止まりません。どうか、どうか一度だけでも構いませんから、あなたと二人だけで個室サロンで吟遊詩人の調べと共に、細やかなお茶会など催したく・・・ (中略) わたくしの細やかな願いを聞いていただきたく、お願い申し上げます。 あなたを陰から見守る辺境伯令嬢より。』・・・。」
ラブレターを片手でクシャクシャと握りしめながらプルプルと震えるソフィーは、涙を堪えているんだろうか?
「ソフィ・・・?」
「・・・・・・。」
あれ、一瞬で今まで連続して流れていた時間が切り取られてしまったみたいに感じられたけど、気のせいかな?
「それで・・・・アーデルお兄様は、どうなさりたいのかしら・・・。」
「あのー・・・ ソフィー・・・さん?」
妹の顔が豹変した。
声が一オクターブ下がり、伏し目がちな顔にはシャドーが宿り、見えないはずの目は、死んだ魚のようだとヒシヒシと伝わって来た。
ナニコレ怖いんですけどぉ!!
「下がれっ!!
お嬢様は既に、狂戦姫モードだぁぁぁぁぁっ!!」
「ハイっ?」
突然どこからともなく表れた執事の一人が、(最初にアーデルハイドを出迎えてくれた一人なのだが) 叫ぶや否や、メイドたちまで臨戦態勢を取り始めた。
一体僕の屋敷で何が起こっているんだろう・・・。 (汗)
伯爵邸付きのメイド頭が鋭い叫び声を挙げる。
「白百合隊っ! 前へっ!!」
その叫び声に応じて、若く美しいメイドたちが素早い動きで前へ進み出る。
「「「サーイエッサーっ!!」」」
「あ、あのー・・・?」
ツッコミどころが多すぎて、最早何が何だか分からないまま、僕は執事の一人に腕を取られていた。
「さぁ! 若はこちらへっ!!」
メイド頭も僕を庇うようにして
「後は我々百合隊にお任せくださいっ!!」
美しいメイドたちも口々に訳の分からないことを言う始末だし・・・。
「最前線勤務が伊達じゃないところを証明して見せますっ!!」
「坊ちゃまは私たちが守りますっ!」
え、何から?
ソフィーかっ!?
「若は一刻も早くシェルターへっ!!」
副執事長のマシューがシェルターへ逃げろと。
それ程までの大事にっ!?
「フォッカー! 至急護衛兵部隊へ対お嬢様近接装備の上救援に来るように伝えよっ!!」
更に、若いイケメン執事の一人へ鋭く指示を飛ばすマシュー。
ちょっと、僕はこの事態について行けていない。
「ハッ!」
鋭く首肯すると、フォッカーは屋敷の外へと去ってしまった。
「お嬢様っ!
来ますっ!!」
メイド6名、執事3名がソフィーたった一人相手に僅かな気の緩みさえ見せずに、緊張した面持ちで対峙していたが、ソフィーの方が一瞬早く動き出した。
ゆらーりと、力など感じさせず不用意に近づいたかのようにしか見えなかったはずなのに
「お・に・い・さ・まぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
「お嬢様っ!
落ち着いてくださいませっ!!」
一番年の若い14歳程の美少女メイド見習いが、シールドのように構えた丸い銀製のトレイを突き出して、ソフィーのブォンと振り下ろして来たクレイモアを受け流した。
あれ?
いつの間にソフィーってばクレイモア持ってたんだ?
やっぱり時間がスッパリと切り抜かれたようにしか感じられないな。
我が妹ながら恐ろしい子だ。
「・・・あなたも邪魔するのぉ?」
「ヒっ!」
「アンジェリカっ! 目を見るなっ!! 心が折られるぞっ!!」
「チィ、遅かったか・・・。」
王都伯爵邸付きのメイド頭であるカーミラさんが叫び声を上げたが、ソフィーの眼光をまともに浴びてしまったアンジェリカはペタンと座り込み、その場で失禁してしまった。
既に戦意は失われ、目からは涙が溢れている。
「可哀そうに・・・。」
「あの子はしばらく使い物にならないわね。」
メイドたちが口々に同情の言葉を述べるけど、相変わらず僕には現実感が無かった。
「あなたたちも気を付けなさい!」
カーミラの鋭い指示に全員が短く応えた。
「「「ハッ!!」」」
そうして、次から次へとメイドたちが入れ替わりで、ソフィーに肉薄しては、手にした銀トレーと武器代わりのハタキやホウキでソフィーのクレイモアとやり合う姿は、何だろう?
「メイドたちが足止めしているうちに、シェルターまでっ!!」
マシューが僕と年齢が近い執事の名を呼んだ。
「ジェーコフっ!
あとは頼んだぞっ!!」
「お任せくださいっ!
必ずや若の身柄はこのジェーコフがお連れして見せますからっ!
先輩方っ! お嬢様をお願いいたしますっ!!」
見事な敬礼をビシッと決めると19歳位のジェーコフと呼ばれた執事は僕の腕を掴んだまま、屋敷の地下へと向かった。
好きに書いてますから(汗)
ところで・・・お気に入りユーザーさんという機能もあるそうで・・・チラ
すみません、何でもありません、調子に乗ってすみませんでした(´;ω;`)