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妹がヤンデレ過ぎて怖い件について  作者: 所天駄
第一章 妹と僕 ― アーデルハイド親衛隊は妹の旗下へ従属するか? ―
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3.ダイジェスティブ! ~ ソフィーの甘く蕩ける野望? ~


そんなこんなで、学園での授業も無事に終わり、僕はいつもの従者が操る馬車に揺られ王都にある伯爵邸へと戻った。


そんな僕を玄関で出迎えてくれたのは、家の者たちとソフィーだった。


「お帰りなさいませ。

若様。」


「お帰りなさいませ。

坊ちゃま。」


「お帰りなさいませ。

アーデルお兄様。」


執事たちやメイドたちが迎え入れてくれるなか、一際輝いて見えるのがソフィーだ。


ぱぁっと花が咲いたように、にこやかに微笑みを浮かべて僕へ駆け寄ってくる姿も愛らしい。


昔からこんな感じで、悪戯さえしなければ、天使そのもの、いや、女神にさえ見えるかもしれない。


「うん。

ただいま、ソフィー。」


僕は、軽く頷くと、ソフィーがなにやら目を瞑り、唇を軽く突き出して来た。


「んーーーーっ」


はて、何をやってるんだろう。


「?」


なおも唇を突き出したままのソフィー。


その顔も可愛いなぁオイ。


「ンーーーっ」


新しい遊びかな?


流石にどう答えれば良いのか分かりにくいから、ストレートに聞いてみた。


「だから何をやってるんだ?」


「お帰りなさい、のキスですわぁ」


ちょっ!


ソレは!!


「マテゴラっ!

ふざけるのもいい加減にしろよ?」


兄と妹。


イイのか?


ダメでしょ!!


「あら? お兄様、何か嫌なことでもありましたの?

イライラしちゃって?」


小首を傾けるソフィーに、心の中を見透かされたような気がして慌てた。


「あ、いや、べつにそんなことは・・・無い訳では・・・無いけど・・・。

うん。」


アドルフにからかわれたことを一瞬だけ、ほんの一瞬だけ思い出してしまったけど、大したことないから。


「やっぱり何かありましたのね?

ですから、そんな風にイライラして、私にまでツンケンするのですわ!」


そう言われてみると、ソフィーの言う通りなのかもしれない。


むしろ、指摘されて初めて気が付いたかもしれず、そう思えてしまう。


ここは素直に謝ろう。


「あ。うん。

ゴメン。」


「気が付けばよろしいのですわ。

さ、何があったか、私に話してくださいませ。」


それは話したくないなぁ。


うん。ダメなものはダメだ。


「え、いや・・・その・・・。別に大したことじゃないんだ。

本当に心配させてゴメン。」


そう言っておけば、少しは気も変わって追及しないで済むかな?


「・・・私、淋しいですわ・・・。

たっ一人の妹に、お兄様が心を開いてくださらないなんて・・。」


ちょっと待て。


だからなんでそう自由自在に涙をだな・・・。


あれ? そういえばなんでこんな会話をしているんだろうか?


「ん? ちょっと待て。

いつの間にか、話がすごーくズレてる気がするのだが?」


そうだ。


ソフィーがお帰りのキスをするとか、馬鹿なことを言っていたのが、そもそもの始まりな訳で、僕がちょっとイラっときた原因まで、明かさなければならない理由は無いはずだ・・・。


無いよね?


「あら? お兄様こそ、話しを途中でズレさせちゃダメですわ。

さ、私に今日学園での出来事を話してくださいませ?」


ズレてる。


完全にソフィーの中では、話しの論点がズレているぞぉぉぉぉぉっ!!


どうすれば良いんだ?


軽く頭がパニック状態になるぞ。

これ。


「いや、だから・・・あれ?

ハっ! それにだ、妹は何もソフィー一人じゃないだろ!!

他にも母上は違えど、弟や妹たちが居るのだから!!」


伯爵家なので、正妻一名。側室一名。弟と妹がソフィーと合わせて4人も居る。

他家に比べれば少ない方かもしれないけど。


つまりは、ソフィー以外にも弟二人、妹一人が居るのだ。


勝手に他の弟と妹を亡き者にしてくれるなよっ!


そこは兄として、ソフィーにビシっと指摘してやるぞ。


「あら、そんな些細なことは気になさらず、それよりも、学園でのお話しを!!」


困った。


論点をずらしてくるソフィーに合わせて、こちらも正論を述べて論点をずらし返そうとしたのだが、「些細なこと」で片づけられてしまったぁ!!


これはちょっと、いや、大分、想定外な答えだぞ。


「え・・・。

んーーー。」


答えに詰まってしまった僕は、唸るしかできなくなってしまった。


「煮え切らない男はモテませんわよ?

女々しいって・・・陰口を叩かれるお兄様のことが心配で私・・・。」


チロ。


あざとい!


顔を伏せてから、斜め下に一度視線を送り、流し目でチラリと覗き込んでくる。


うはーっ!


女性に免疫の少ない僕にとって、妹とはいえソフィーのチラ見はちょっとマズイ。


透き通ったサクラ色の瞳で見つめられていると抵抗できなくなってしまうのだ。


でも、学園で友人のアドルフにからかわれたことなんて、本当に些細なことだし、妹に相談するまでのことでさえ無い。


さて、どうしようか。





「まあ、そんなことがありましたの?

でも、話してみたらスッキリなさったでしょう?

お兄様。」


「ああ。うん。

ありがとう。ソフィ-。」


今僕は、自室のソファーに腰かけた姿勢で、ソフィーを両足の間に挟むようにして座っている。


ソフィーが身体を摺り寄せて来て、ちゃっかり僕の太ももの上に座ろうとするから、両足を開いて、ストンとソファーへ直に座らせたんだ。


でも、そのせいで、僕の身体で僕よりも小さなソフィーを包み込むような、より密着した恰好になってしまっている。


ソフィーは時々僕の顔を反対側から覗き込みながら、うんうん、と頷きながら学園での出来事を最後まで聞いてくれた。


確かに、ソフィーの言う通り、些細なことかもしれないけど、アドルフとのちょっとしたやり取りの中でさえも、僕は自分の見た目が男らしくないことに、苛立ちを感じていたのかもしれない。


いっそ、ナルシストにでもなって、自分の姿を愛でる人(変態)にでもなってしまえば、楽になれるのかもしれないけど、残念ながら僕にその気は無い。


むしろ、男として生まれたのならば、しっかりと男らしく生きていきたいとさえ願っている。


だが、そんな僕の願いを、あろうことか自分の容姿が邪魔をするだなんて。

神様はどうして、僕にこんな試練を与えられたのだろうか・・・。


「お兄様?

・・・アーデルお兄様ぁー!?」


「ん? どうしたんだ、ソフィー。

今度はダガーなんか持ち出して?」


「またしても、ご自分の心の中へダイブして、戻ってこようとなさらないお兄様を、目覚めさせて差し上げようかと・・・。

ウフフ。」


いや、このタイミングで微笑まれても・・・。


僕は背筋に冷たい氷でも押し当てられたかのような、そんな気持ちを味わっていた。


「それでは、お兄様。私お茶の支度を見てまいりますわ。」


「あ、うん。

もうそんな時間か・・・。」


時折り、ソフィーは突拍子も無いことをしてくれることがある。


普通にお茶請けの用意を見に行ったかと思ったら、メイドを連れずに自らワゴンを押して来た。


「アーデルお兄様。

お茶の準備が整いましたわ。」


「メイドにやらせれば良いのに、ソフィーが自分で運んで来たのかい。

18時には夕食だから、この時間には軽くしておきたいかな。」


「大丈夫ですわ!

そう思って軽めにビスケットをご用意いたしましたの。」


「そうか、マフィンやスコーンよりは腹持ちしないから良いかな?」


「ええ、こちらをどうぞっ!!」


「・・・?

見たところ、極普通のビスケットにしか見えないけど・・・。

っ!?」


一口食べて驚いた。


表面は極普通のビスケットにしか見えなかったそれには、裏面にタップリとチョコレートが付けられていたのだ。


ビスケットはサクサク、コーティングされた裏側のチョコレートが、口の中へしっとり感を生み出してくれて、手が止まらない。


「・・・ソフィー?

コレは一体・・・?」


首を傾げる僕に、ニッコリと笑いながら


「ダイジェスティブ・ビスケットと言って、近頃王都で大流行しているお茶請けでしてよ?」


「そうなのかー 初めて食べたよ。

ありがとう。とっても美味しいよ。」


そう礼を告げる僕の顔を、嬉しそうにニコニコしながら幸せそうに眺めているソフィーだったが、次の瞬間とんでも無いことを告げて来た。


「お兄様のお口に合って良かったですわぁー!

アルバスも喜ぶというものですわ。」


あれ?


最近過労が溜って、一週間の休暇を願い出て来た料理長の名が出て来たぞ。


もしや・・・。


「・・・君が作らせたのかい?」


「ええ。普通にビスケットを食べるだけじゃつまらないと思って、私の大好きなチョコレートと組み合わせたらどんなに素敵かしらと思いまして、料理長のアルバスに頼んで試作してみましたところ、屋敷の者たちにも大好評だったので、レシピを見直して量産体制を整えましたの。お陰で貴族を中心に大ヒット商品になりましたのよ。」


目をキラキラさせて一息に述べる内容に、いつの間にそこまで話が大きくなっていたのかと、僕は眩暈を覚えた。


「・・・。

量産・・・ だと?」


「ええ、屋敷で造る分だけでは間に合わないので、私のポケットマネーで中規模の商会を買い取りましたの。今は全従業員を協力させてビスケット生産と販売に尽力させておりますの。


アルバスには、レシピの見直しと製造指導をしてもらったので、ボーナスを支給して、家族旅行へ出かけてもらいましたわ。

とっても喜んでましたの。」


弾む声でこれまた嬉しそうに、両手組んでを顔の前で左右に振り振りしているソフィーの顔は、更に輝いていた。


「・・・そ、そうか・・・。」


なんてこった!


ソフィーが僕の知らないところで、ポケットマネーで、中規模の商会を買収できる程の財力を持っていたなんて・・・。


そりゃ、僕だって伯爵家の人間だから、イザという時のために個人の資産くらいは、父上から受け取ってある。


貴族の嗜みとしても、幾ばくかの金貨だって持ってはいる。


だがしかし!


それで、気軽に中規模商会なんて買収できてたまるかっ!!


父上は一体幾らソフィーに金貨を与えておられたのだろうか?


娘に激甘過ぎる!!


あ、こっちじゃない。


恐るべきは、若干15歳にしてお遊び感覚で造り出したお茶請けを、大量生産して販売し、利益を上げ続けているその才能であろう。


「ソフィー・・・ 

実は商才もあったんだね・・・。」


「アーデルお兄様が不遇の身になられた時には、いつでも私が養って差し上げますわ!

何一つ不自由の無い生活を保障して差し上げますわよ。」


ウフフっと微笑むソフィーの目は、全く笑ってい無かった。


この子、本気だっ! 


と経験の浅い僕でさえ確信できるレベルで。


「・・・う、うん・・・そんな時が来たら、頼もうかな・・・

ハハ・・

ハハハ・・・

ハハハハハハハハハ・・・」


おかしいな。


お茶を飲んで潤ったハズの僕の口からは、もはや乾いた笑しか出てこないなんて。


ソフィー。


恐ろしい子。





それから一週間ほどして、やけに血色が良くなって日焼けしたアルバス料理長が、家族と共に屋敷の者たちへお土産片手に帰って来た。


僕へのお土産は、チョコレートにナッツが篭められた物の箱詰めだった。


今度はコレを真似して量産するのか!?


と思ったけど、チョコレートにナッツを籠めた物は、既に商品化されているとの理由から、ソフィーの商会では扱わなかったらしいが、代わりにチョコレートを転がして作るトリュフなる新製品が、王都を中心に爆発的ヒットを重ねたらしいと後から聞かされた。


「さぁーて、次はどの商会を買収しましょうかしらね~ 

ウフフ」


まるで、花屋でお気に入りの一輪でも買うかのような気軽さで、ソフィーは買収候補のカタログを眺めていたっけ・・・。


僕に凶器を持って襲い掛かって来る次に、一番良い笑顔でカタログを眺めるのは止めて欲しいなぁー。


なんかトラウマになりそうだから。





後日談。


「ソフィー?

どうしたんだい?

鏡なんて見つめて・・・?」


いつもなら、全くと言って良いほど自分の容姿に気を払った様子など見せないソフィーが、片手鏡を覗き込みながら、なにやらブツブツと呟いていたのだ。


僕は不思議に思い、つい声を掛けてしまったのだが、タイミングが悪かったのだろうか。


「嫌っ!

お兄様っ!!


こっち見ないでっ!!

ですわっ!!」


「なんだい?

大げさにして?」


訝しがる僕に、クルリと背を向けたまま、こちらを見ようともしないソフィー。


おかしいな、何か嫌われるようなことをしてしまったのだろうか?


「・・・珍しいじゃないか、僕に顔を見せようとしないなんて?」


いつもならウザイくらいに、下から覗き込んできたり、すぐ横に顔を寄せて来がるくせに、今日はやけに余所余所しい。


「・・・私・・・ちょっと、そうですの、今はほんのちょっとだけ・・・ 嫌っ!!」


言葉と同時に苦無が飛んできて、僕の頬を掠め後ろの壁にスコンと刺さった。


僕の方を向いていないのに、何故こうも正確に射抜けるものかとドキドキしたけど、これ以上無理に顔を見ようとしない方が身のためだ。


「分かったから、見ないから、な?」


後でソフィー付きメイドに聞いたところ、顎のあたりに一つだけニキビが出来てしまっていたそうな。


チョコレートの試作での試食。

販売でソフィーが美味しそうに食べて見せると売れ行きが鰻登りだと言われ、王都の貴族向けサロンで宣伝を兼ねて行われた5日間に渡るレセプションでも、チョコを食べ続けていたのだ。

ニキビくらい出来て当然だろうな。


それくらいで、ソフィーの愛らしさは、損なわれたりなんてしないのに。




美味しいですよね。

ただそれだけです。

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