使えるやつは駒にする
平原で少女が1人魔物の集団に襲われ走って逃げていた。
「はあっはあっ誰か!
誰か助けてえ!魔物にうわあっ!」
少女は長い間走ってきたのだろう。
衣服は土まみれ、靴は投げてしまったのか素足で傷がいくつも出来ている。
そして限界が来てしまいコケてしまった。
「「「グギギギギイ!」」」
ここで私の人生は終わるのか。
そう少女は思い目を伏せた。
しかし、いつまで経っても痛みは襲ってこない。少女は恐る恐る目を開けた。
そして目の前の光景に驚いた。
自分と同い年ぐらいの少年、ジルアが2人の騎士風の男と混ざり魔物を倒してる姿がそこにあった。
ジルアは2人の騎士風の男、スートとジークに指示を出しながら魔物を屠っていく。
「これだけの数を正当な方法で倒すのは馬鹿がやることだ!
スートとジークは俺に魔物を近づけさせるな!大きな魔法でトドメを刺す!」
「「はっ!」」
そういうとジルアは一歩下がった。
するとジルアの頭上に黒紫色の球体とそれを包む半透明な緑色の膜が浮かぶ。
それはドンドン膨らみ気球の風船並に大きくなると今度は逆に縮んでいきボウリングの球程度の大きさとなった。
「準備が出来たよ!
多分大丈夫だけど念のため魔法が地面に着弾する寸前に後ろに下がってね!」
「「はっ!」」
ジルアは2人の返事を聞くと魔物の中心に頭上で溜めていた魔法を放った。
ズザッ!ズガガガーン!
地面につくなり魔法は大きな音と風圧を放ちながら巨大化し、全ての魔物を包み込み魔物達は悲鳴を上げる暇もなく前に消滅した。
「倒し漏れも少しはあるけど、逃げていったし大丈夫だね」
「…相変わらず凄まじい魔法っすね」
「当然だ!ジルア様は天才だからな!」
「ここまで来ると天才の域を超えてる気が」
「と、そんなことより…大丈夫か?」
スートは倒れている少女に近づいた。
「立てるか?」
そして片膝をつき優しく手を差し伸べ少女を立たせた。
「う、うん!ありがと!」
「礼ならジルア様に言ってくれ。
私達はジルア様が君に気付いたからやってきた。それに魔物達はジルア様が倒したからな」
「ジルア様。助けてくれてありがとう!
ただ、ごめん。うちは貧乏で御礼の品は…」
スートの様付けから、何となくジルアが貴族だと察した少女はジルアに様付けをして感謝を口にした。
スートは一瞬、眉をピクリと動かしたが言葉遣いに関してはジークの事もありジルアが気にしていないため咎めなかった。
そもそも普通の子供に敬語の概念はないというので言ったところで無意味だ。
さて、少女の言う【お礼の品】について説明しよう。この世界では平民が貴族に助けられた場合、金品等を礼として差し出す決まりがある。
だが、少女は貧乏で何も出せるものがなかった。
「別に何もいらないよ。
といっても決まりみたいなものだからね。
そうだ名前と年齢を教えてくれるかい?」
「私の名前はライアだ!歳は8歳!この近くにあるビシス村に住んでるんだ!」
「へぇ、ビシス村ですか」
ビシス村、そこはゾルート家の領地の端にある村だ。それには少しガッカリした。
ジルアが助けに来た理由は、ここはジルアの領地と他領の境目。むしろ他領の村の方が近かったからだ。
他領での名声は功績に繋がりやすいが、自領だと余り効果がないのは明白だ。
しかし、ジルアはすぐに思考を切り替えた。
内容は勿論ライアについてだ。
ビシス村と現在の位置関係と魔物達の移動速度を考えると、身体能力だけでいえば5歳から修行をしているジルアよりも上である。
魔力もそれなりにあるし鍛えれば将来、有能な駒になってくれるだろう。
そして、ジルアは念のために口を開いた。
「では馬車もあるから、ビシス村まで送ってあげるよ。知ってる?もうここはビシス村から結構離れてて、馬車でも30分はかかるよ」
「えっ!?そんなに!?」
少女の反応にジルアは満足し、続けた。
もし少女が自身の足だけでここまで来ていないような反応があれば、見捨てるための言葉を飲み込み駄目押しをした。
「道中、また魔物に襲われたら大変だから乗りなよ」
「そ、そんな命を助けてくれただけでもありがたいのに!本当に御礼も出来ないんだよ!?」
ライアは戦闘が終わり近づいてきた馬車の豪華さに驚き、ジルアが貴族の中でも相当高貴な存在だと思い恐縮した。まあ一応は上流貴族なので貴族の中でも高位なのは間違いではない。
「て、あれ?そう言えばジルア様って…」
そして、何がキッカケかはわからないが、ここでようやくライアはジルアの正体…自身の住む領地の領主、その息子だと気がついた。
「ゾルート領の領主、ザルム様の息子っす」
ジークの言葉にライアは腰を抜かした。
「領主様の!?」
その後、腰を抜かしたライアを無理やり馬車に乗せ村の手前まで送り届けてからスンダ領に向かって馬車を走らせた。
ライアが馬車内でカチカチに固まってたのは言うまでもない。




