十五話 魔王を……どうにかしよう!! ※お漏○し注意
「うぉおおおお!!!くたばれ!!!
魔王の鉄槌!!!」
遂に本気の本気になった魔王は、自身の魔力の大半を使ったとんでもない威力の攻撃を俺達に向け放ってきた。
それは魔力を一度体外へと取り出し。次にそれを幾つも球体状にして、それからまたたっぷりと魔力を込めた後に打ち出すという……まさに文字通りメテオのような攻撃魔法だ。
しかもその数がまたとんでもなく、今のままでは全て避け切れるかどうか……
でも、やらないとピアンテが最悪の場合炭に、良くても丸焦げになってしまうだろうし、やるしかない!
「ひぇええええ……師匠……!!」
「ピアンテ!しっかり掴まっててよ!」
そこで、俺は攻撃を全て躱すと自身に誓い、ピアンテをより強く抱き締めて地面を蹴った……が。
「ふぎゃあ!!」「いてぇ!!」
何故か濡れていた床に足を取られてしまい。
二人一斉に倒れ込み地面を転がった。
「あれ……水分?おかしいな?魔王はさっきから炎属性の魔法しか使ってないはずだけど……?」
それに驚き過ぎて思わず俺はそう呟く。
理由は今言った通りだ。魔王だけでなく、この場にいる誰もが水属性の魔法は一切使用していない……
だから、事前に小細工でもしていない限り床が濡れている事など本来あり得ないはずなのだ。
すると、そんな俺にピアンテが申し訳なさそうな声でこう言い。
「すみません!すみません師匠……!!
私の、私のせいでこんな事に……!!」
「え……ピアンテの?
でも、君は今の所水属性の魔法なんか一度も使ってないよね?」
「いえ、違うんです……実はさっき、あまりにも魔王様の放った魔法が恐ろしくて、それで……
また漏らしちゃいました……」
「えぇ、またなの!?俺全身に浴びちゃったんだけど!?もう汚ったないなぁ!!」
「汚いって……う、うわぁああああん!!
酷いですよ師匠!!あんまりです〜!!」
詰まる所、自らが犯人だと名乗りを上げたのであった。
そうして立ち込めるアンモニア臭の中、わんわんと泣き始めたピアンテだったが。
俺はそれを無視して顔を上げる。
「……でも、んな事言ってる場合じゃないな」
そう……俺達に迫る危機という名の、魔王の攻撃魔法が迫って来ていたからだ。
だけどいくら何でも、ここからじゃどうしようも無い。
今すぐに立ち上がって。ピアンテをまた抱え上げて。そこから全部のメテオを回避する?いやいや、流石の俺でもそれは難しい話だ。
……だから、俺はただただそれが近付くのを待つ事しか出来なかった。
流石の俺でもアレを全部喰らったりしたら……ちょっと、ヤバいかもしれないな……
…………でも!!
ピアンテが攻撃を受けるよりも、俺が全て受け切った方がまだ色々とマシなはずだ!!
流石にちょっと、ヤバいかもしれないけど。
でもここで動かなければピアンテは必ず死ぬ。
じゃあ、俺が生き残るって方に賭けて。
やれるだけの事はやってみるとしよう。
一応は弟子である、コイツのためにも。
そうしてメテオの迫る中、俺が最後にとった行動は。
ピアンテに覆い被さり、ただじっと攻撃が降り掛かるのを待つというものだった。
「し、師匠!!」
「じっとしてなよピアンテ!そうすれば少なくとも、君だけは助かるはずだからさ!」
「そ、そんな……!!ダメです師匠!!」
……ダメと言われても、もうこれしか選択肢が無いのさ。
事実、隕石のような魔王の攻撃は俺達にだいぶ近付いていて、もうどこにも逃げられない。
それに、今の俺はピアンテの〝盾〟だ。
盾がただ一人で逃げ出すワケにはいかないだろう?
だから、そう覚悟を決めた俺は、下でじたばたとして俺を止めようとするピアンテを強く抱き締め、最後の時を待ち続ける……
すると、俺達の背後からだった。
扉の開かれる音が聞こえてきたのは。
「……!!そっか、来てくれたんだ。
ふぅ、助かった……これでもう安心だ!!」
そして、それを聞いた俺は。
『俺達は無事に生還出来る』という事を確信する……
「師匠?突然どうしたんですか?
それに今、もう安心って……」
「まあまあ、見てなって」
俺達が話し終えた直後。
扉を開け放ち、魔王の部屋へと二つの影が飛び込んで来た。
そしてそれは。
トロール君と、ブラックドラゴン君の二匹だった!
「セイントソード様!ご無事ですか!?」
「何か、少し臭う気が……ですが、一応ご無事なようですね。ここは我々がどうにかするので、そのままじっとしていて下さい!!」
次に二匹はそう言うと、トロール君は地上から、ブラックドラゴン君はすぐさま宙に浮かび上がり。
「サタナちゃん!良い加減にするんだ!」
トロール君は凄まじい早さのパンチと蹴りで。
「そうだぞサタナちゃん!城を壊す気か!?」
ブラックドラゴン君は火炎のブレスを吐いて魔王のメテオ攻撃を相殺するという、凄まじい活躍振りを見せてくれた。
「ちょっと、お前達やめなさいよ!一体何のつもり!?っていうか名前で呼ぶな!!」
一方で魔王は突如現れた二匹に対してもまた怒っている……ちなみに、魔王本人も言っているように『サタナちゃん』とは彼女の本名だ。
しかし、そんなサタナちゃんの言う事を今度ばかりは聞くつもりの無い二匹は。
隕石のようなその攻撃魔法を自身の手で、攻撃で、次々と撃ち落としていった。
その光景を、俺はごく当たり前のように。
それとは裏腹に、ピアンテは驚いた様子で眺めていた。
だが、暫くすると胸にあった疑問が気になって仕方がなくなったのか、ピアンテは俺にこう問いかけてきた。
「あ、あの師匠。こんな時にすみませんけど、一つ聞いても良いですか?」
「ん?」
「あの二匹の魔物達の事なんですが……いくら何でも強過ぎるとは思いませんか?
いやまあ、そりゃあ魔王軍の幹部ですから強いのは当たり前でしょうけど……でも、魔王様の攻撃をあそこまで簡単に……」
……まあ、大体予想通りの質問だ。
だから俺は、それに対してすらすらと答えて見せた。
「……あの二匹は、先代の魔王がまだいた頃から仕えている、最古参の幹部達でね。もう数え切れないくらいの死線を潜り抜けてきた、謂わば戦いのスペシャリストなんだ。
だから、実は滅茶苦茶強いんだよ。
今の魔王よりもずっとね……まあ本人達は魔王の威厳が失われるからって、それを隠したがってるんだけど。
実際。今の所俺は地上戦でトロール君より強い魔物を見た事が無いし。
空中戦では、ブラックドラゴン君よりも強かった奴はこれも見た事が無いかな……まあ、俺以外での話なんだけどね」
「な、なるほど。だからあの二匹はあんなにも強かったんですね」
「そういう事。だからもう何も心配する必要は無いんだよ。きっとあの二匹がどうにかしてくれるはずだからさ」
とまあ、そういうワケなのである。分かってもらえたかな?
それと言い忘れてたけど、トロール君とブラックドラゴン君が魔王の事をたまーに『サタナちゃん』呼びするのもそれが理由だ。
あの二匹は現魔王の事を赤ん坊の頃から知っているし面倒も見ていたらしいから、どうやら咄嗟のタイミングとかで口から出ちゃうみたいなんだよね。
勿論、俺も前から知ってたよ?
でもほら、俺がそう呼ぶとサタナちゃんすぐキレるから、基本的には封印してるんだけど……
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