十四話 また魔王に会いに行こう!
と、いう事で魔王のいる部屋の前に到着した。
道中については端折らせてもらう。すぐ着いたし、前来た時と別に何も変わってないからね。
それにほら、実家ってそういうものじゃん?
むしろ変わらない方が何か嬉しいじゃん?変わらない嬉しさって大体実家にあるじゃん?
あと、今度から魔王のいる場所は玉座じゃなくて部屋って呼ばせてもらう事にもする。
だってアイツ、もう基本的に玉座座らないんだもん。何だったら持ち込んだベッドでゴロゴロしてる時の方が多いし、何かちょっと違うんじゃないかなーとは前々から思ってたんだよね。
……まあ、そういう事だから覚えておいて欲しい。
とか何とか思いつつも、俺は扉を開ける。
「師匠、この先にいるのって……もしかして……」
「うん、魔王だね……そういえば、アイツも何かと騒いだりするし、似たもの同士って事でピアンテとは仲良く出来るんじゃないかな?」
ちなみに言うと、さっきからずっと俺の片腕にピアンテがしがみついているせいで開けるのがいつもより大変だった。
すると、その先にはやっぱり魔王がいて。
準備が終わってないのもいつもの事で、アイツは下着姿のまま、顔を赤くして……
いや、今日は顔を青くしていた。
……具合でも悪いのかな?
そう思った俺は魔王に声を掛けようとする。
「アンタ……」
だが、それよりも先に魔王が声を発した。
「ア、アンタ……誰よ、ソイツ……」
その後も魔王は何かしらブツブツと呟いている。
「魔王?どうしたの?ってか、何だか今日は皆の様子がおかしい気がする……ねえ、本当にどうしたんだよ?何かあったの?」
っていう感じで、それを見た俺は普通に心配して、魔王にそう声を掛けたんだけど。
魔王は未だブツブツ言うのを止めず。
そして、最後には……
「最低……最低最低最低!!
よくも私の心を弄んでくれたわねこの下衆野郎!!
女連れで私の前に立った事、後悔させてやるわ!!」
今度は突然、いつものように赤くなって怒り出したかと思うと、俺達に向けて攻撃を仕掛けて来たんだ。
……瞬間湯沸かし器みたい。
一瞬、くだらない想像が俺の頭を過る……が、そんな事を言ってる場合じゃない。俺はすぐにピアンテを抱えてその攻撃を躱す。
「わぁあああああ!!
師匠!!こんな人とどう仲良く出来るって言うんですかぁああああ!?」
「こんな時までイチャイチャしてんじゃないわよ!!
今日という今日は許さないんだから!!」
そうして魔王城には、ピアンテの悲鳴と魔王の怒鳴り声が響き渡るのだった……
「うーん、どうしてこうなるんだろう……??」
「魔王大火球!!」
「魔大槍の一閃!!」
下着姿とはいえ流石魔王。初っ端からとんでもなく高威力の技と魔法を連発して来る。
でもまあ、俺なら何とかなる……ただしそれは、一人だったらの話だけどね。
今はピアンテを抱えていて、そのままの状態でコイツに勝利するのはいくら俺でもちょっと厳しい。
だから今の俺は、魔王の攻撃を躱す事にだけ専念していたんだ。
というか、そうする事しか出来なかった……
「ぎゃあああああ!!師匠〜!!」
だが俺を狙う刺客はそれだけにあらず。
耳元でピアンテが叫びまくるせいで、『俺の鼓膜』という名の体力ゲージはどんどんと削られてゆく。
……これは、なかなかに厳しい戦いとなるだろう。
俺の鼓膜が破れるのが先か。魔王の体力が尽きるのが先かという、文字通り命を賭けた決戦が始まってしまったのだ。
「喰らえオラァ!!」
その間にも魔王は更なる攻撃を仕掛けて来る。
最早その口調は大分荒々しくなってしまっていて、とても女の子だったとは思えないくらいだ。
「ぎゃあ!!師匠避けて!!避けて!!」
だが俺は難なくその攻撃を避け、鼓膜以外への被弾は完璧に回避した。
不幸中の幸いとでも言えば良いかな?
俺に対して魔王は度々、今のようにキレて攻撃を仕掛けて来たりするから、次にどんな手が来るかとかは何となくだけど予想出来てしまうんだ。
でも、だからと言って油断は出来ない。
今回の魔王はどうやら本気のようだし。
それに、彼女が下着姿なのも俺にとってはあまり良くない問題の一つだ。
何せ、魔王の股間……失礼。
Vゾーン付近にある、下着のヒラヒラとした部分が攻撃の度に危うく揺れ動き、俺の視線を誘導しようとしてくるのだから。
……いや待て、だって仕方ないだろう?
別に見たいとか見たくないとか、こんな時に何してるんだとか、そんな話をしてるんじゃなくて。
嫌でも見えるんだから、それは見るなって言う方が難しいじゃん?それに俺だって男だし、どうしても気になっちゃうじゃん?
「ちょっと!アンタさっきからどこ見てるのよ!?もうアッタマ来た!!ぶっ殺してやる!!」
すると、その視線を魔王に気付かれてしまい。
彼女の攻撃は更に苛烈さを増した。
「いやだって、しょうがないじゃん!
っていうかさあ、急にどうしちゃったんだよ?
何かワケがあるんでしょ?ここは一旦落ち着いてゆっくり話そうよ?」
「私が落ち着くのはアンタを倒した後よ!!
喰らえ!!魔王超火球!!」
「うわぁ!?危ないなぁもう!!」
そんな状態からの説得も勿論通用せず。
やっぱり、俺はどう足掻いても魔王と戦わなければならないみたいだ。
あまり傷付けたくはないんだけどな……そう思っていた時だった。
「あ、あのー……」
さっきまで叫び続けていたはずのピアンテが、何だか申し訳ないような、言い辛いような、そんな口調で声を発したのは。
そんな彼女の視線は魔王に向けられていた。
それに気付いた魔王はやはりと言うべきかキレ気味のまま、ピアンテにこう話しかける。
「あぁん!?おい小娘、私に何か言いたい事でもあんのか!?」
お前も見た目は小娘だろ。
そう思ったけど、俺は何も言わなかった。
「ひぃぃ!?い、いやそのあの……ど、どうしても魔王様に伝えたい事があってですね!?」
「だったら早く言え!!」
「ひぇええ!?は、はいぃ!!あの、ええと…………魔王様!!その、ちょっと……燃えちゃってます!!」
「……は?」
「魔王様の下着が!!」
それを聞いた俺と魔王とピアンテの、三人の視線が全て魔王の下腹部へと集中した。
確かに、先程まであんなにも艶かしくひらひらとしていた下着はその部分は今はチリチリになってしまっていて、布の面積も大幅に減少している。
このままでは非常に危険だ。
具体的な説明は出来ないけれども、とにかく危険なものは危険なのである。
「はぁあああ!?何で!?何でよ!?」
「さっき、炎魔法を放った時に火の粉が飛んでいたんで、それが原因だと思います……」
ピアンテは言った。
まあ確かに、さっきの魔法はかなり強力な奴だったからなぁ……だから多分だけど、彼女の言っている事は当たっているんだろう。
「だったら何でもっと早く言わないんだよ!?」
「ひゃああ!?す、すみません!!
これでも早く言ったつもりなんです!!魔王様も女の子ですから、それで恥ずかしい思いはして欲しくないなって思って、それで……」
そんな彼女に魔王は八つ当たりし、対するピアンテはよく分からない言い訳をしていた……けど、こればっかりは流石にピアンテが可哀想だと思う。
……でも、可哀想なのは俺も同じだった。
だって次の瞬間、今度は俺の方に飛び火して……
魔王の怒りの炎は下着だけじゃなく、俺までもを焼き払おうとしていたんだから。
「…………ねえ」
「え?」
「アンタ、また見たでしょ?」
「えぇ……!?いやいやいやいや!
ちょっと待ってよ!だって燃えてるって言うから心配で」
「あーもう、最悪!!もう嫌!!この変態!!
もうこうなったら、全部まとめて消し飛ばしてやるわ……!!!」
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