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十三話 あの場所に行こう!

結局、今度も裏ボスとは戦えないまま。


テリオーンの街で二日程過ごした俺達は街を後にして、また別の場所へと向かっていた……とは言っても、もうそろそろ目的地には着くんだけどね。


それはこの国の最果てにあるんだけど、もう何度も来ているから目を瞑っていても辿り着けるくらいなんだ。だから距離自体は結構あるけど、そんなに時間が掛からなかったんだよ。


「師匠!今から行く場所ってアレの事ですか!?

でも、あ、アレってまさか……!!」


ピアンテが騒いでいる……どうやら、そんな事を話していたら到着したようだ。


俺は顔を上げ、その建物に視線を向ける。


そこは昔なんたら辺境伯……の住んでいた場所を魔物達が乗っ取ったものらしくて、外観は物凄く立派で高級感満載、そしてめっちゃ広い。


ただ乗っ取られてからは、センスのカケラも無い銅像とか、これまたナンセンスな自画像とかがこれでもかと飾られているから、色々と台無しではあるんだけどね。


……ん?何だか同じような説明を何処かで聞いた気がして、デジャヴを感じるって?


いやいや、まさか!

そんなワケないじゃん?気のせいじゃない?


まあ、そんな意見は無視して。

『極秘!裏ボス情報メモ』に書かれている、ここの裏ボスについての情報を…………


…………ゴメン、ウソをついた。


デジャヴ?大正解だよ、だって俺は以前にもココを訪れているんだからね。


そんなこの場所の名は、魔王城。

あの魔王がいて、俺の行きつけ(?)の城でもある、俺にとっては実家のような雰囲気漂う場所だ。


でも、なんでココにいるかって言うとね……ちょっと、アイツに文句を言いに来たんだ。


だって、アイツの教えてくれた裏ボス達。


一匹は見つからないし。もう一匹はいなくなるしで……歯応えがあるかないかの前に、戦えてすらいないんだもん。またそんな感じだと困っちゃうからね。


……とまあ、そういうワケで。

俺とピアンテは魔王に会うため、魔王城を訪れたってワケさ。


「師匠、まさかとは思いますけど、これって……」


「うん、魔王城だね。それじゃあ行こっか」


「え!?そ、そんな軽いノリで入る所じゃないと思うんですが……師匠〜!!」



もう間も無く、城の門前だ。


そんな俺の気配を察したのか、トロール君とブラックドラゴン君が既に門の前で俺を出迎える準備をしてくれている。


「!?し、ししししし師匠!?

アレって魔王軍の幹部じゃないですか!?」


「お、よく知ってるねピアンテ。その通りだよ。

どっちも優しい良い子だから失礼の無いようにね」


「いやいやいやいや!!無理ですって!!殺されちゃいますって!!


師匠〜帰りましょうよ〜!?

私こんな所で死にたくないですよ!?師匠〜!?」


でも、ピアンテがめちゃくちゃ近付くのを拒否してくるのでなかなか進まず、あの二人を待たせてしまってちょっと申し訳ない。


そう思った俺はピアンテを引きずりながらとにかく移動し、そして何とか門前へと辿り着いた。


「やあ!トロール君!ブラックドラゴン君!

待たせてゴメ……ん?」


そこで俺は二匹に謝罪と挨拶を……しようと思ったんだけど。


何故かこの二匹までもが驚いているのか、怯えているのか、理由は分からないがプルプルと震えていて、それどころではなさそうだった。


「あわわわわわわわ……」


本当にどうしたんだろう?これじゃあ、今現在あわあわと実に分かりやすく慌てている、こっちのピアンテとそんなに変わらないじゃないか。


「えーと君達、どうしかしたの?」


そこで俺は、二匹にそう尋ねてみた。


すると……


「あ、あのセイントソード様……不躾な質問ではあるのですが。そ、その方とはどのようなご関係で……?」


トロール君はそう言い。


「ま、まさかとは思いますが、婚約者フィアンセではありませんよね……?」


ブラックドラゴン君はそう言った。


なるほど、どうやらこの二匹、ピアンテの事がかなり気になっているみたいだ。


まあ確かに、ピアンテは起きてる時の8割くらいはテンション高めで喧しいし。魔物のいる場所だと更に喧しいし。あと寝相悪いし。この前とか漏らしたし。おまけに騒いでる時は俺にしがみついて来たりして、ちょっとだけウザく感じる事もあるけど。


それでも、結構可愛らしい性格と容姿をしているとは俺も思う……けど。この二匹をここまで震えさせる程なんだろうか?


だとしたら、ピアンテって魔物から見たら『絶世の美女』なのかもしれないな……まあ、魔物じゃないからどうでも良いけど。


「え?違うよ?この子とは成り行きで旅をしてるってだけ」


そう思った俺は二匹にそう説明し。


「師匠……それは事実かもしれませんけど、私ちょっと傷付いちゃいましたよ……せめて仲間とか言ってくれても……」


「ああ、紹介が遅れたけどこの子はピアンテって言うんだ。ほらピアンテもトロール君とブラックドラゴン君に挨拶して?」


隣でボソボソと文句を言っていたピアンテにはそう促し。


「む、無視ですか……まあ良いです。ゴホン。

は、初めまして!私魔法使いのピアンテです!」


そして、ついでにピアンテの紹介も終えた。


「本当ですか!?それは良かった!!

……失礼しました。申し遅れましたが、私はトロール」


「私はブラックドラゴンで御座います。以後お見知りおきを」


そんな俺達の話を聞いた二匹は、何処かホッとした様子で頭を下げた。


気が付けば、二匹の体の震えもいつの間にか止まっている。恐らくだが、ピアンテが俺の恋人か何かでなかったのが余程嬉しかったのだろう。


本当に、モテモテだな……

とは思いつつも、やっぱり俺には関係無いし。


とにかくと俺は二匹に扉を開けてもらい、ピアンテと一緒に魔王のいる場所へと向けて歩き出した。


ちなみにその時、何だか二匹がまたオロオロし始めたようにも見えたんだけど、そんなにピアンテがいなくなるのが寂しいのかな?


ならここは、俺が恋のキューピッドに……


「ねえピアンテ、トロール君とブラックドラゴン君はキミの事が気に入ったみたいだし、もう少し一緒に」


「無理です絶対無理です!!

私はこの城から出るまで師匠の側を離れませんから!!」


なれなかった。


断固拒否という形で、ピアンテにキューピッドの矢をヘシ折られてしまったからだ。



「なあトロール。さっきの話なんだが、今すぐ魔王様にお伝えした方が良いんじゃないか……?あのお方はセイントソード様の事を……」


「ああ、俺も最初はそう思った。

だが俺達はいつも通り、紅茶とケーキの用意をするのが先だ。客人を退屈させてしまっては魔王様の顔に泥を塗る事になる。


何、心配する必要は無い。

あのお方は聡明だ。きっと大丈夫だろう」


「……それもそうだな。

よし、そうと決まれば早く準備せねば。

トロール、今日は私がケーキの用意をしよう」


「分かった……ちなみに、今日のケーキは何だ?」


「フフフ、聞いて驚くなよ?

今日のは……ドームケーキだ!!」


「ドームケーキ、だと……!?

お前、腕を上げたな……俺も負けてられん!!」

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