閑話 ハグ
ハグには幸せホルモンが出ると言う。
ギュッと体を寄せると暖かくて人肌が気持ちよくて幸せになる。
だから、芽依は特別な理由が無くても家族に腕を回す時があるのだ。
メディトークの場合。
「ねえメディさん」
『あ? なんだ? 』
「なんでもない」
搾乳の為にしゃがんでいるメディトークの隣に芽依も並び、ペタッとくっつく。
チラリと横目で見るメディトークだったが、何も言わずガガディの搾乳を見ているので追求はしなかった。
なんかあったか? と考えながら搾乳していると、足に絡みつく何か。
『…………なんだ? 』
「なぁんも」
『ふぅん? 』
そのまま張り付かせたまま搾乳し終わったメディトークは、芽依から箱庭を貰う。
何か操作をしているな、と足にしがみつきながら見ていると、搾乳した瓶が消えたのを見て首を傾げた。
「メディさん? 」
「なんだ? 」
「ん?! なぜ人型に?! 」
「抱き締めて欲しいんだろ? 」
しゃがんだ状態で人型になったメディトーク。
芽依は足にしがみついていたはずなのに、今はメディトークにしっかり抱き着いていた。
「あれっ?! 」
慌てて離れるが、メディトークは両手を広げて芽依を見ている。
「おら……ギュってしてやるから来い」
「……ありがとう、すき」
「知ってるっつの」
ガガディの目の前で隙間がないくらいに抱きしめられた。
フェンネルの場合
雪山で作業中のフェンネルの後ろにそっと現れる芽依。
バレないようにと静かに近づくが、勿論気付かれている。
クスリと笑うフェンネルは抱き着いてくれるのかな? とワクワクしていると、予想外に力いっぱい押されてうつ伏せに倒れこんだ。
「わぁ! なんで押したの?! 」
「なんか気付かれてそうだから、抱きつくんじゃなくて押してみた」
「気付いてるけど! 可愛く抱き着いてくれるのかと思ったのにぃ」
「大丈夫、可愛く抱きつくから」
にっこり笑った芽依が、倒れているフェンネルの背中に乗り、雪を触ってから服の中に手を入れた。
「つ……つめたぁぁぁ!! メイちゃ……ちょっ、待って待って! その手でお腹はだめっ! 」
立ち上がろうと身体を浮かせたら、すかさず手を腹部に回した芽依。
寒さや冷たさには比較的強いが、流石に冷えた手で肌を直接触るのは駄目らしい。
ひぃ! と声を上げるフェンネルに、くふくふと笑ってはんぺんな腹部を撫で回すと、手を上から握られた。
「もう! 悪戯する手はお仕置! 」
引っ張られてフェンネルの口元に持っていかれ、あむっと甘噛みされた。
それに、目を見開いた芽依は自由な左手で服を捲って脇腹に食いつく。
「ふふん……わらひにかなうはふがなひ(ふふん、私にかなうはずがない)」
ハムハム……と甘噛みする芽依にフェンネルは口をパクパクとさせて叫んだ。
「ここ外ーーー!! 」
ハストゥーレの場合
「…………お疲れ様、ハス君」
1週間に1回、芽依とハストゥーレの2人の時間。
今芽依は、上半身を脱ぎ捨てて下着姿のままハストゥーレを膝枕していた。
肩から流れる血液を用意していたタオルで拭う。
肩は肉がえぐれて生々しく、二の腕まで喰われていて血液がトプンと流れていた。
部屋に充満する花の香り。人外者には堪らない誘惑の香り。
この香りも次期に収まり、芽依の肩や二の腕も明日には肉が盛り上がり触れても違和感が無くなるのだ。
芽依はもう1枚準備していた濡れタオルでハストゥーレの顔を拭う。
「…………ん……んん……」
眉をひそめて手を伸ばすハストゥーレ。
腕に触れたハストゥーレの手は、力無く芽依の足の横にパタリと落ちた。
その落ち方は、血溜まりに沈むハストゥーレを思い出してタオルを強く握る。
「大丈夫、大丈夫……ハス君は暖かい」
震える手で、芽依の血液が着いてしまった髪を拭き取り綺麗になったハストゥーレの頭を抱きしめる。
ぎゅっと、でも優しく抱きしめると、薄ら開いたハストゥーレの瞳が至近距離の芽依を写した。
「……ご主人様……」
「ハス君」
「いかが、しましたか? 」
「ううん。ただ、抱き締めたいだけ」
「…………はい」
ゆっくりと起き上がったハストゥーレを見た芽依は、眉尻を下げて抱き締める。
「ずっと、そばにいてね」
「はい、ハストゥーレはご主人様が望んでくださる限り……いいえ、たとえ望まなくても……お傍におります」
ふわふわと眠たそうに瞼を閉じるハストゥーレをぎゅっと抱きしめて、そのまますぐ近くにあるベッドにダイブした。
今日は一緒に眠ろうね。
シュミットの場合
「…………おい」
「はい? 」
「どこまでついてくるつもりだ」
「どこまでもです」
「仕事だよ、これから 」
準備をしているシュミットのあとを雛鳥のように着いて歩く芽依。
時々、服の裾を控えめに握る芽依をチラリと見る。
確かにメディトークたちよりも庭にいる時間は少なく寂しい思いをさせてはいるが、今日は随分と聞き分けのない芽依。
俯く芽依に向き合い頭を撫でると、ソロリとシュミットを見る。
困った子を見るような眼差しに眉尻を下げると、シュミットは小さく笑った。
「今日は無理だが、今度一緒にくるか? 」
「……行っていいんですか? 本当に? 」
「危なくない仕事の時だけね」
「はい!! 」
ぎゅっと腰に抱き着き頭を擦り寄せると、抱き締め返してくれる。
「…………行ってくるから、メディトーク達といい子で待ってろ。悪戯するんじゃないよ」
「……はぁい」
行ってきます、と額に落とされた口付けの感触を芽依は暫く忘れられなかった。
メリークリスマス!!
クリスマスイラストをつくりました!
ですが、みてみんさん上手く使えず:( ;´꒳`;)
アルファポリスに置いてありますので、宜しければのぞきにいらしてください⸜(*˙꒳˙*)⸝
 




