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夜のバイキングと見知らぬ移民の民


 少しフラフラしているハストゥーレを支えながらエレベーターに乗り込んだ芽依たち。

 朝と同様にバイキングに来たのだが、圧倒的に人数が違った。

 座席はほぼ埋まっていて、巨大な幻獣が座れる席も2箇所空いているだけだった。

 うまい具合に座れた芽依達は、取り皿を持って並んでいるが、なかなか進まない宿泊客を眺める。


「メイちゃん、かなり待つことになるから待ってる? 」


「え? 」


「あんまり人外者が集まる場所に長時間メイちゃんを置きたくたいんだよね」


 今行けば知らない人外者に囲まれて身動きが取れないまま待つことになりそうだ。

 フェンネルは足湯に向かう途中の事もあり、あまり芽依を人前で待たすことはしたくない。

 言わずとも複数の人外者が芽依を狙い、それをフェンネルが始末した事は芽依以外全員が把握している事だった。


「ご主人様……あの、私と一緒にいてくれませんか? 」


 かなり悩んでいた芽依が、ハストゥーレのお願いにコロッと態度を改めて笑顔で頷いた。

 全員が安心している間に芽依はクッションなとを置き、座りやすい場所を作っていく。


「じゃあ、まってる」


「どうしても欲しいのとかはある? 」


「お酒」


『禁酒な』


「あああぁぁぁぁぁ……しぬ……」


『死なねぇよ』

 

 メディトークの言い付け通りに禁酒を続けている芽依。

 以前は1人の時にこっそり飲む事も出来たが、今は誰かしらが張り付いている。

 たまにシュミットがくれるチョコレートボンボンだけが芽依の心の癒しだ。

 コロリと転がりハストゥーレの膝に頭を乗せると、戸惑い気味に優しく髪を撫でられた。

 その指先を感じて下からハストゥーレを見上げると、照れた小さな笑顔が芽依を見ている。


「っ……天使」


 悶える芽依に焦るハストゥーレ。

 いつもの光景に笑いながら席を離れる家族達を見送り2人でゆっくりとご飯が来るのを待った。


 ダラダラと話をしながらメディトークたちが来るのを待っていると、席が空いていない為にキョロキョロしながら歩く2人組が近付いてきた。

 1人は芽依と同じ移民の民で、女性はベールをしている。

 もう1人は羽を煌めかせている人外者。

 黄色い髪に赤い目の男性は冷たい眼差しを芽依に向けた後、ハストゥーレを見る。


「………………もし、食事をしたいので席を譲ってはくれんか」


 不躾な言葉に芽依は数回瞬きをする。

 ハストゥーレは眉をひそめ、確認するように芽依を見た。


「えーっと、私達も今から食べるので」


「……驚いた、移民の民が話をするのか」


「なんかダメでした? 」


「いや……変なヤツだな」


 まだ冷たい眼差しをしているが、しっかりと芽依を見た人外者。

 ベール越しに芽依も相手を見て、首を傾げた。


「一緒に座ります? 」


「………………は? 」


「こっち大所帯だけど、それでもよかったら」


 ペチペチと床を叩く芽依を光のない目で見ている移民の民。

 初めて会ったユキヒラのような眼差しだ。


「いや……」


 人外者が首を横に振ると、芽依は後ろから腕を回され誰かに抱き締められた。

 ギュッ……と守るように抱えられ、上から小さく息を吐き出す音が聞こえる。

 嗅ぎなれた香りで胸がいっぱいになり、回されている足に指先で触れた。


「…………メディさん」


『怪我はねぇか』


「ないよ」


『ハストゥーレは? 』


「大丈夫です」


 はぁ……とため息を吐き出すメディトークを見上げると、眉を寄せて目を瞑っている。

 そっと頬を撫でると、急に冷気が周りに漂い寒くなった。

 

「…………………………消せばいい? 」


 ぶわりと風で髪が揺れるフェンネルの冷えきった笑みに芽依はビクリと体を揺らす。

 メディトークから抜け出そうとするが、足に力が入っていて抜け出せない。


「うぉっ! 力つよっ!! フェンネルさん消しちゃダメダメ!! シュミットさん止めて……あぁ、嫁を救出してるぅぅ」


「嫁じゃねーわ」


 判断をミスしました、と落ち込むハストゥーレにシュミットが向かったので、こちらからの助けは期待できない。


「……消さないの? だって、メイちゃんに手を出そうとしたんだよね」


「違うって! 場所ないから変わってって言われただけ……」


「……場所を変われ? なんでわざわざ僕たちが移動するの? なんでメイちゃんに話し掛けたの? ねぇ、死にたいの? 」


「よーし、落ち着こうねぇ! パピナス確保! 」


「かしこまりました」


 怒れるフェンネルの後ろに足音を立てず近付き右手で項に強打撃を叩き込む。


「いっ………………」


 流石に気絶はしないが、痛みに首筋を押さえて振り向きパピナスを見ると、見下すパピナスが小さく口端を上げた。


「メイ様にご迷惑かけるなら容赦しませんよ? 」 


「…………女の子こわっ」 


 フェンネルが苦笑しながら、抱き締められてる芽依の隣に行く。

 そっと手を握ると、芽依が握り返し、フェンネルはホッとした。


「…………フェンネルさん、無闇矢鱈に消しちゃ駄目よ」


「………………うん」


 かなり間を開けて笑顔で返事を返す。

 既に複数人消し炭になっているのは芽依には伝えず笑顔でその事実を隠すのだ。

 芽依が知る必要はない。


「……………………はぁ。向こうにも席はあるだろ。どっか行けよ」


 シュミットは、ハストゥーレに怪我が無いことを確認してから抱きしめられる芽依の髪を撫でる。

 頬を撫でて顔を覗き込むと、恐怖の色が無いかじっくりと見てから息を吐き出した。



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