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求めるのは愛情と行き過ぎるほどの狂愛


 夕食の為にこの場には沢山の人や人外者が溢れている。

 これだけの人数がいたら芽依達だけでは無く、そこかしこで小さな諍いが起きている。

 そんないざこざを無視して食事をする芽依達を注意深く見る人は少ないのだが、甘やかされ食事を手ずから食べさせられている芽依を見る人が1人いた。

 

 旅行に来て楽しいはずなのに、恋人はずっと不機嫌で頬杖をついている。

 美味しくなさそうにハンバーグを口にする姿に目を伏せると、大きなため息が落ちてきた。

 芽依を見ていた視線を目の前の女性に移す。


「もうさ、別れねぇ? お前といてもつまんねーわ」


「えっ……どうして……」


「どうして? わかるだろ……」


 はぁ、と面倒くさそうにチラリと見てくるレンユーランにユリークが嗚咽を漏らす。

 

「面倒なんだよ! うぜぇの! わかれよ! 」


「だって……大好きって……愛してるって言ってくれたじゃない!! 」


「言わねぇと面倒だからだよ……いちいち泣くな」



 すぐ近くから食事中に聞きたくない会話が嫌でも耳に入ってくる。

 たまたま同じ場所に泊まっているらしいその2人とのエンカウントが高すぎる……と芽依は隣にいるシュミットを見ると、顔を鷲掴みされた。


「………………なぜですか」


「苛立ったから」


「なんという八つ当たりでしょう。夜押し倒さないとこの憂いははらせません」


「やめろ」


 そんなやり取りが聞こえたらしいユリークが泣きながら芽依達を見る。

 穏やかに食事をしている芽依は、メディトークとシュミットの間に座り、少し離れた場所にいるパピナスが果実水をピッチャーから注いでくれている。

 大皿に盛り付けした食事を取り分けするハストゥーレに、それを受け取るフェンネル。笑顔が溢れている。


「っ…………また、またあなた…… 」


 キッ! と芽依を睨むユリーク。

 しかし、涙に濡れた丸い目に怖さは一切ない。


「おねーさんさぁ、今幸せ? 」


「え……」


「好きな人といてもお姉さん幸せそうじゃないから。大好きな人と一緒にいるのは素敵だけど、とても悲しそうだから、見てて私も悲しいな」


「っ……だって……私にはレン君しか……」


「だぁから、重いんだって……」


 嫌そうに言うレンユーランを見た芽依は、ふっ……と笑う。

 そんな芽依を全員が見た。


「嫌だぁ、それのどこが重いの? 重いっていうのはぁ……」


 芽依がフェンネルを見る。

 キョトンと瞬きをして首を傾げる様子を可愛い……と見てから残酷な言葉を吐いた。


「フェンネルさん、面倒だね? もう一緒にいれないかな……」


「……………………は? え?嘘だよね? 面倒? こんなに大好きで尽くしてるのに?尽くし方が悪かった? もっとお金使えばよかった? 庭の工場僕買うよ、それなら許してくれる?それともドレス買う? ねぇ、ごめんね、ごめんなさい。僕嫌だよ 一緒にいれないとかありえない。無理、死んじゃう……メイちゃん……やだ……ごめん…………やだよ……じゃあ、じゃあ一緒にしんでくれる? 」

 

「ね?これが重いだよ? 」


「お前な……可哀想なことすんなよ……」


「ハストゥーレも被弾してるぞ……」


 綺麗な涙を流しながら薄ら目が赤くなっているフェンネルに、自分が言われたわけじゃないのにショックを受けて泣くハストゥーレ。

 パピナスだけは、小さな拒否に歓喜して身を震わせている。


「ほら、そんなののどこが重いの? 変なの」


「変なのはお前だろ……」


 レンユーランが引きつった顔で芽依を見る。

 今まさにフェンネルの震える指先が芽依を捕まえて、ぎゅうぅぅ……と抱き締めてきた。


「ほらぁ、重いって、可愛いって事でしょ? 」


「いや……違うだろ……絶対違うだろ……なに、移民の民って変人なのか? 」


「コイツだけだ」


 あっはっは! と笑って頭を擦り寄せるフェンネルを抱き締める。

 芽依に縋り付くフェンネルの頭に軽くキスをすると、ピクリと反応したフェンネルが顔を上げた。

 美しい真っ白な妖精が泣きながら見てくる様子にゾクゾクとしながら薄らと笑う芽依を、全員が見ている。

 ゆっくりと両手でフェンネルの頬に手を当てて、頬を赤らめ笑みを浮かべる。


「…………ああ、可愛い……フェンネルさんの泣き顔可愛い……悲しそうに泣くその綺麗な顔がたまらない……食べてしまいたい……」


「うん……僕はメイちゃんのだから……全部食べ……」


「よし、やめろ。部屋じゃねぇんだぞ」


「チッ……」

 

「舌打ちすんじゃねぇ」

 

 安心したように笑みを浮かべているフェンネルから離れた芽依は不満顔のままシュミットを見ると、ビクッと体を揺らした。


「シュミットさんならいいですよね! 」


「来ると思った! なんで俺なら良いと思った! ちょっ……やめろ!! 」


 飛び掛り抱き着いてくる芽依を引き剥がそうとするシュミット。

 本来静かで大人なシュミットも、芽依が相手だと型なしである。


「ほら、 こっちの方が幸せでしょう? 」


 シュミットに抱きついたまま笑顔でユリークに言った。

 ベールで顔が隠れているとはいえ、機嫌よく笑っているのはわかる。


「…………羨ましい。貴方だけを見てくれる人がこんなに……でも、私を見てくれる人なんてっ……」


「自分を下げた言い方は可愛くないわ。貴方は十分可愛いもの、もっと良い人はいるわ。メイ様のもの以外ならいくらでも選び放題よ 。メイ様の以外にしてね」


「2回も言った……選べって言われても無理です。だって、みんなあの子が好きで仕方ないって感じです」


 ネガティブな言葉しか出てこないユリークにパピナスが話しかけると、落ち込み死んだ様な目をしていたユリークが無理やり口端を上げて笑顔を作る。


「幸せになりたい。愛されて笑い合う人に巡り会えたら幸せなんだね」


「そうよ、その意気よ。貴方は可愛いの、変なヤツに捕まっては勿体ないわよ」


「っ……こっちから願い下げだよ!」


 ガチャン! と食器を落として走り去って行ったレンユーラン。

 悲しみと喜びを混ぜ合わせた顔はしているが、数回しか会っていないユリークの1番スッキリした笑顔を芽依は見たのだった。

 

 

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