22、戦利品の山
(ふぅ、落ち着けボク。ドアを開けて中に入って肩を揺すって、起きてー朝だよー、って言うだけでいいんだ。)
ティルは意を決してドアを開け…
ガチャ
バタン
…すぐさま閉めて座り込む。
その顔は真っ赤に染まっていた。
※※※
「ふぁ〜。」
目を覚ました悠斗はうーんと伸びをする。
そろそろ気温も上がってきたなぁ、とか思いつつ寝間着にしている服を脱ぐ。
ガチャ
突然、部屋のドアが開いた。
ドアを開いた状態で固まるティルと上半身裸の悠斗の目が合う。
バタン
ティルは何も言わず出ていった。
※※※
「ティル、ユウト起きた?」
「ボ、ボクが行った時はもう起きていたよ。」
そう言ったきり、ティルは頭を抱えて動かなくなった。
※※※
「おはよう。」
悠斗はいつものようにリビングに入る。
「おはよう。」
返ってきた声はティルのものではなく、
「シルリア、帰ってたのか。」
「うん。」
普段通りにキッチンへ行こうとして、
(『うん』?)
顔を覗かせるとシルリアの前には機械の山がある。
シルリアは機械を部品ごとに分解にしている。分解にはドライバーなどの道具を使っておらず、魔法陣の浮かんだ手をクイッと動かす度に部品がポンと外れる様子はなかなかメルヘンだった。
「その機械の山はどうしたんだ?」
「一昨日、北広場で襲撃してきた一団の支部から取ってきた。」
「こそドロってやつか?」
シルリアは首を横に振った後、真っ直ぐに悠斗を見て、
「堂々と取りに行って邪魔する人は倒……潰していった。」
その言い直され方は反って恐い。
「もうティルから聞いてるかも知れないけど一昨日の事でナッシュが聞きたいことがあるらしいから組合に行ってといてよ。」
「分かってる。」
※※※
書類の重なった机の前でナッシュは疲れたように溜め息をつく。
「ナッシュさんどうかしたんですか?」
組合員の一人が尋ねる。
「北広場の問題のことや。」
「北広場って確かボロボロになってしまってましたよね。」
「そや、聞くところによると原因はシルリアちゃんらしいし復旧もシルリアちゃんにお願いしようかなと思ってんやけど。」
「乗ってくれたら一瞬で直るでしょうね。」
「せやなー…」
ずずずーとお茶をすする。
ガチャ
「はーい、どうかしまし……ってシルリアちゃんか。」
「そっちが呼んだのでしょう。」
「ああ、北広場の事やけど何があったん?」
悠斗やティルにも聞いた事を再度尋ねる。
シルリアは最初の魔法、外獣、そしてその後に一人でしたことまで話す。
話を聞いたナッシュの最初の発言は、
「蛮術ってお師匠さんに止められてなかったんやないん?」
「自らの信念のためなら使ってもいい、とも言っていたわ。」
「…ほいで外獣が行動を制限されていた理由は分かったん?」
静かに首を振る。
「あそこにあったのは一種のアンテナみたいなもので原因は分からないわ。」
「情報の送ってくる道を辿ってみるのはどうなん?」
再び首を振る。
「地脈に巧妙に隠されていたから相当時間がかかるわ。」
「シルリアちゃんでも時間がかかるとなるとわいらは無理やな。」
再びずずずーとお茶をすする。
「じゃあ北広場の修繕だけでもお願いできへん?話聞いた限りではシルリアちゃんがボコボコにしたらしいやん。」
「北広場?」
ふと考えるような仕草をし、
「分かったわ。」
と一言残して帰っていった。
「5分後には北広場も元通りでしょうね。」
「凡人と天才の差を見せ付けられた感じやな。」
はぁ、と肩を落とし再三お茶を飲もうとする。
「?」
お茶はもう残っていなかった。
※※※
コンコン
シルリア邸が鳴動する。
家の門のノック音を拡大、伝達するシステムによるものだ。
そんな音にシルリアは機械検分の手を休め立ち上がる。
門の所まで行くと三人の人間が見えた。
「何の用かしら?」
「こちらにティル様がおられると聞いたのだが呼んでいただけるだろうか。」
返事をした男はそう言って勲章を見せる。
王国騎士の証だ。
それを見てシルリアは微塵も動じず冷めた顔を向け、
「そう。」
とだけ応え奥へと行った。
※※※
悠斗が夕食の準備のための食材をティルとキッチンに運び終えると機械をいじくっていた筈のシルリアがリビングに来た。
「ティル、お客さんよ。」
「え?ボクに客?」
シルリアは頷いて外を指さす。
外には三人の人が門の辺りにいる。
「う……ねえ、シルリアこの家に裏口って無い?」
「無いわ。」
「じゃ、じゃあ何とかして帰ってもらえない?」
「どうして?」
返された質問にティルはうっと口籠り、やがて観念したかのようにゴニョゴニョとシルリアに耳打ちする。
シルリアは分かったとだけ言いリビングを出た。
※※※
しばらく待っていると先程の女が一人で戻ってきた。
「本人が拒否したので帰ってもらえるかしら?」
「それはできん。」
もしかしたら捕まっているのかも知れないので即答する。
「本人の意思に関係無く連れて帰投するよう指示を受けている。よって入らせてもらうがいいな。」
「いいえ。」
女の返事に眉をひそめる。
「許可を得ずとも入るという意味で言ったのだ。拒否権はない。」
「こちらにも事情はあるの。そんなに入りたければ…」
言葉の途中で女は掌を上に向けて小さな火を一つ出す。
「私を排除して入ることね。」
その一言に反応し両側にいた二人の部下が一歩前に出た。
「火球か、その程度で我等騎士を止められると思うな。」
片方の部下に目配せをする。
その部下は剣を抜き放ち火球へ振り降ろす。
ジュッ
「無詠唱魔法ならせめて炎弾でも使え。もっとも、炎弾で倒れるほど騎士もやわではないがな。」
あくまでそれが常識である。
そういった意味も込めて言い放つ。
すると女は前を指さす。
そこにはまた火球があった。
「いい加減諦めろ!」
先程、火球を消した部下が声をあげ剣を振り上げる。
ジュッ
同じ音がする。しかし、
「な!?」
火球は変わらぬ姿でそこにあった。
部下の剣を見ると、丸い穴が二つ開いている。
「…っ!」
動揺したもう一人の部下が慌てて剣を振り抜くが、ジュッという音とともに剣が欠陥する。
「火球一つすら消せない相手に炎弾を使うのは容赦が無さ過ぎると思うの。」
ずらっと何十個も火球が現れる。
「帰ってもらえるかしら。」
拒否権は無かった。
更新遅くなりました。
どうもスイマセン、最近writerからreaderへなり始めていまして…
いえ、完結させる気はありますよ。
ただまた遅くなってしまうかもしれませんどうかご容赦ください。




