Infinite Color
みなさん、お久しぶりですこんばんは。そしてこんにちは。
作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す!
お久しぶり! 元気にしてた!?
今回も例にもよって前書きだけで本編には一切出てないよ! あはは!
さて前回、前々回と凪紗ちゃんの元キャラの話をしようとしたけど作者にジャマされてるから今回こそは! って思うけどもうしゃべりません!
なぜかって? だって存在を消されちゃうからです! だからごめんね。この話はこれで終わりです。
話は変わるけど、もうすぐバレンタインでっす! 作者はもう何年もチョコをもらってないらしいから、ここはわたしのこの手作りチョコを作者に渡して好感度を上げておかないね。これで本編に出られたらラッキーもんだよね~
さて、メールを送って~と。
よし、これでオッケ~
では、第九話『Infinite Color』をお楽しみください。それではっ!
「い、色付き?」
わたしがオウム返しのように聞き返すと涼葉さんが血相を変えて『アカ〜ン!』と叫び声を上げてジャンプ。
そしてわたしのいるバスのまで上がってきて攻撃を仕掛けてきた。
「そのプレートはセットさせへんで!」
涼葉さんの攻撃はさっきまでのように冷静で的確で繊細でいて豪快な攻撃ではなく、すべての攻撃が大振りで今のわたしでも避けるのはとても簡単なほどの、攻撃にスキがある大振りの攻撃だった。
(涼葉さん……もしかして『焦ってる』のかな?)
涼葉さんの攻撃はわたしにそう思わせるほどの単調な攻撃。あの攻撃に当たれば確かにわたしは強烈な痛みで気を失うかもしれない。それだけ力を籠めての、アンブレイドを大きく振りかざしての攻撃だった。
でも、『何に?』涼葉さんは何に対してそんなに焦ってるの?
ココロの中で生まれた疑問はそれだった。
楽勝とまではいかないけど、涼葉さんはわたしに勝てるとみていた。勝てると踏んでいたはず。余裕すら感じさせるほど。
でも、今の涼葉さんは何かに焦ってる。その焦りが後押しして攻撃が大降りとなっている。となると……さっきと今とでは何が違う? 何が変わっている? 今とさっきまでの涼葉さんの中での状況の変化ってなに?
考えられるのは……
涼葉さんの大降りの攻撃をかわしバックステップで距離を取る。そして距離をとった所で右手に握られている『半透明で白いマテリアルプレート』を見る。
「これしか……ないよね」
涼葉さんの焦りと勝負を早める理由……たぶん、ううん絶対にこれしかない……この白いプレートが焦りの原因で理由。
「うおおっらぁ!」
追撃してきた涼葉さんの攻撃をかわす。
「苦し紛れの攻撃は当たりませんよ!」
涼葉さんから言われた言葉を今度はわたしが返す。
「くそっが!」
さらに涼葉さんは勝負に焦ったのか大きく振りかぶっての攻撃。そんな攻撃をわたしは見てかわし、涼葉さんの腹部に一撃を加えた!
涼葉さんは片膝を着いてお腹を押さえ苦痛に顔が歪んでいる。
「通った? 攻撃が通った!」
初めて意識しての攻撃が当たった。今まで当たらなかったのに当たった……
でもそれだけ自分の攻撃が大振りになっている事を気づいていないほど涼葉さんは焦っていると言うことか……さっきまでの涼葉さんなら必ず避けていたのに……
「雪……?」
涼葉さんが膝をついている内にプレートをオンにして効果を確認。青い光で描かれた文字は『雪』の一文字だった。
「雪なの? でも雪ってどんな効果?」
頭にハテナが駆けめぐる。こんな時に刹那くんが居てくれれば……なんかアドバイスをくれるのに。
『スキルによっては形勢逆転、一発勝利ってのも可能だから』
刹那くんの言葉が思い出される。
「飛び出してきて、一発逆転……」
確か刹那くんの説明ではマテリアルプレートが飛び出してきたこの溝って『マテリアル・クリエイなんちゃら』って言っててマテリアルプレートが生成される場所だったよね。
「なら、このプレートで逆転できるかも!」
この『雪』の効果はわからないけど、とりあえずプレートの交換のため、スロットを開くために柄を引く。
涼葉さんがあんなに焦ってるんだ。きっとこの『色付き』って言われてる白いプレートはすごい強力な効果を
発揮してくれるかもしれない。
「させへん! セットはさせへんで!」
開きかけたプレートスロットを手で押し閉じて駆けてきた涼葉さんへの攻撃に備える。
でも、相変わらず涼葉さんの攻撃は単調で大振り。こんなボロボロで満身創痍のわたしでも避けられる……
こんなわたしでも……こんなわたしでも……こんなのは違う!
「チョロチョロと……動くなや!」
こんなのは涼葉さんじゃないよ!
「食らえや!」
「落ち着いてください!」
『加速』を発動させ間合いを詰め『斬空一迅・疾風』を繰り出した。すれ違い様に振り抜いたアンブレイドは涼葉さんのわき腹にあっさりと見事にヒットした。
「ぐっ……」
苦痛で、さっきよりも苦しそうな顔で膝まづき痛みに耐える。
(強いな……痛いはずなのに……)
疾風の手応えはあった。これでもかというくらい完璧なタイミングで疾風を繰り出せた。きっと悲鳴を上げてもいいくらいの苦痛のはずだけど。やっぱり強いよ涼葉さんは。
「涼葉さん。なんで焦ってるのかわからないけど、ううん。たぶんこの白いプレートで焦ってると思うけど……今の状態の涼葉さんなら、こんなボロボロのわたしでも楽勝で勝てます」
「な、なんやと……」
あんな単調で単純な攻撃は何度でもかわせる。
「頭に血が上って攻撃は単調。さっきまでの涼葉さんは余裕すら感じました。わたしになんて楽勝で勝てるって感じでした。でも今は焦って、勝負を早めています」
「今でもあんたなんか楽勝じゃ」
「いいえ、今の涼葉さんは負けます。わたしに負けます。こんなボロボロのわたしに負けます」
はっきりと、きっぱりと言い切った。涼葉さんの顔はこんなボロボロのわたしに言われたのか顔が怒っている。眉がつり上がって潜めてる。
これは涼葉さんに言わないとダメだ。さっきの涼葉さんに戻ってもらわないと。
「言うやないか……」
「でも、そんな状態の涼葉さんに勝ってもわたしは嬉しくないんです。勝負には勝つかもしれないけど、わたしの中でなんか納得しないんです」
そう、納得しない。こんなのでこんな形で勝ったらイヤだ。
「勝てるんなら、いいんやないの? チャンスやないかい?」
「違うんです。なんて言うか……何か違うんです。わたしバカだからうまく説明できないけど……わたしの勝ちたい涼葉さんは余裕しゃくしゃくで、豪快でいて繊細で冷静な時の涼葉さんなんです。だからその……えっと……お、落ち着いてください!」
うまいこと言葉が見あたらない。しどろもどろでなんとか言えたけど……涼葉さんに伝わってるかな?
「落ち付けって……凪紗、あんた敵に塩を贈ってんで」
「涼葉さんだってわたしに『絶望と敗北』を贈ろうとしたじゃないですか」
「あいかわらず口の減らんやっちゃで。ええんか? あんたウチに勝ちたいんやろ?」
「今の涼葉さんには勝ちたくありません。わたしは正々堂々と本当の涼葉さんに勝ちたいんです!」
「正々堂々って……立派な騎士さまやで。ウチから逃げたり隠れてたり、恐怖でブルブルと生まれたての子羊のように震えてたクセに」
「ううっ……そ、それは」
言わないで。震えてたことは言わないでぇ! 涼葉さん!
「その白いプレートがあんたの余裕か?」
「……そうですね。効果はわかりませんが涼葉さんの
態度を見てると結構強力なスキルかもしれません」
右手の白いプレートを見る。
(どこかで見たんだよな……このプレート)
そして思う。確かに見たんだよねこのプレート。
「……そのプレートは巷では『色付き』って言われているプレートや。色付きは、そらたいそう強力なスキルがある」
「えっ?」
突然、涼葉さんが語りだした。でも、やっぱりそうか。この白いプレートは強力なスキル持ちのプレートなんだ。
「ええで、そのプレート使いや。けどなウチかてそんな簡単にそのプレートをセットさせへんし、簡単には使えんで」
「いいですよ。望むところです」
わたしは片手でアンブレイドを引き半身になって騎士道の構えを、涼葉さんはアンブレイドを目線の高さで据え置き独自の構えを見せる。
「いきます!」
そう宣言して駆ける。
「やっぱあんたと話してると調子狂うわ!」
涼葉さんも駆ける。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
ぶつかりあうアンブレイド。そして鍔迫り合い状態になる。
「その白いプレートをセットさせへんかったらウチの勝ちや!」
「いいえ、セットします! この白いプレートがわたしの『希望と勝利』です!」
「させへんって!」
涼葉さんにはアンブレイドを振り切り、わたしのアンブレイドは弾かれる。
「くっ!」
バックジャンプで後方へと飛び退くのと同時に柄を引きプレートスロットを開く。
「これだこれ、この手応え。さっきの涼葉さんだ!」
戻ったんだ……どうしょう。ワクワクしてきた!
「まだまだ行くで!」
スロットを開いたけど、涼葉さんの猛攻でいて追撃は続く。
「おかえり、涼葉さん!」
追撃をジャンプでかわしそのまま落下の速度を利用して真上からの天地を繰り出す。
「当たるかい!」
真上からの落下しながらの天地をアンブレイドで受け止めて攻撃が弾かれる。
「やっぱり当たらないかぁ!」
着地と同時に再び後方へとバックステップで距離を取ると同時に、Bスロットの『停止』のマテリアルプレートに手をかける。
「アカ〜ン!」
『停止』のプレートを引き抜く動作を見ていた涼葉さんはすぐに『幻影』を起動させ幻影・涼葉さんが姿を表す。
「くっそ、やっかいだなぁ!」
幻影は二十秒間だけの時限スキルだけど、とにかく人数と攻撃の回数が劇的に増える。対応も臨機応変どころかその場でのアドリブ回避に翻弄されるからとにかくイヤなスキルだ!
「あとはこのプレートをセットするだけなのに……」
手に掛けていた『停止』プレート引き抜かずに、開いたプレートスロットを手で押し閉じる。せっかく開いたのにまた閉めちゃった……
気落ちしている暇もなく幻影・涼葉さんと涼葉さん本人の連携攻撃。しかもやっかいなのは涼葉さん本人は『滑空』を使用してる。
「食らいや!」
涼葉さん本人の攻撃は滑空使用の前方からの攻撃、そして幻影・涼葉さんの攻撃は真上から!
ここは、真後ろに回避……
「?!」
目の前の涼葉さんの口元がつり上がって……ニヤけてる!?
「やばっ!」
真後ろにバックステップした瞬間に即座に、反動的で、反射的、第七感的で乙女の勘なのかわからないけど、なにか背筋がゾクっとしてスロットをBスロットへ変更。と同時に『停止』を起動させた。
「うぅ……ひやああああぁあああぁあ〜〜!」
即効でスキル『停止』の効果。突然わたしのバックステップは磁石が張り付くみたいに急激に緊急停止。強制キャンセルされてバランスを崩しながらも回避方向を左に変え、頭からヘッドスライディング気味に飛び退く。
そして見ると、さっきまでわたしのいた場所には『三人目の涼葉さん』が後ろからアンブレイドでの攻撃をしかけていた。
危なかったぁ! あの時涼葉さんがニヤけてなかったら当たってた!
「今のよくわかったな! やっぱあんたセンスあるで凪紗!」
なんて涼葉さんは誉めてくれたけど、攻撃の手は休めてはくれない。倒れているわたしに容赦なく襲いかかる。
「あざっす!」
素早く立ち上がると同時に再びプレートスロットを開放。
「よくあの時開いたスロットを閉じたな!」
「自分でもわかりません!」
『わからない』で返す。正直本当にわからないし受け答えなんてしてるヒマないんだよね、これが!
「おらっ!」
涼葉さんの上から下へと降り下ろす一撃は的確にわたしを捕らえている。
「よっ、と!」
その一撃をバックステップでかわす。やっぱりさっきまでとは大違いだ。やっぱりすごい! すごいよ涼葉さんは!
そしてそのまま『滑走』を起動。
「あれっ? えっ!?」
と、思ったけど足が浮き上がらない?! 『滑走』が起動してないの!?
「あ、そうだった!」
アンブレイドを見るとスロットが開いたままだった……これじゃ起動しないはずだ!
「まだまだぁ!」
「くっ!」
『滑走』が起動しない事を知ってか知らずか連続的な攻撃は止まるところかまずます増している。しかも幻影の効果もある!
「まだ終わらんで!」
「あぶっ!」
ジャンプ、ステップ、ダッシュ、ガード、スウェー。駆使できるものはすべて駆使して三人の涼葉さんの攻撃を回避しては受け止める。でもほとんどギリギリ。いつ当たってもおかしくない!
「まったくホンマにすばしっこいヤツやで! おとなしく当たれや!」
「イヤです!」
当たったら痛いでしょうが! 痛いでしょうが当たったら!
でも、『そろそろ』のはずだけど……
「くそ! いいところでっ!」
涼葉さんがそう叫ぶ。すると一体の涼葉さんが霧になって消える。
待ちに待った『二十秒』これで幻影・涼葉さんは後ろから攻撃してきたひとりになった。それに攻撃回数も激減する!
と、思ったけど、ワンテンポ遅れて最後の幻影・涼葉さんも消えた!
よし、ここからはわたしの反撃のターン!
「反撃開始! って、うっひやぁ!」
わたしの反撃のはずだったけど、足下にある何かを踏んでしまいバランスを崩してしまった!
「な、なに?!」
体勢を立て直し足下を見るとビニール傘が大量に道路に転がっていた。
「なんなのこの傘!?」
わたしが気絶して目を覚ましたときにはこんな状態だったけど……バトル開始時にはこんなに大量の傘はなかったよね?
「反撃はどないしたん!?」
一瞬、地面に気を取られている間に涼葉さんの攻撃が再開!
「皮肉やな! イケメンさんが使ってた傘があんたの足を引っ張るなんてな!」
「せ、刹那くんが!?」
この傘は刹那くんが仕掛けたの!?
「そうや、あんたが気を失ってる間にアンブレイドの代わりに使うてたビニール傘やで!」
「くっ!」
涼葉さんの一撃をアンブレイドで受け止める。
そうなんだ……刹那くんがわたしに自分のアンブレイドを持たせたくれてた間に……
アンブレイドの代わりにこのビニール傘を
「おらっ!」
「うっ、そぉ!」
地面のビニール傘をアンブレイドでゴルフのように弾き飛ばす。
その飛んできた傘をアンブレイドではたき落とす。と同時に涼葉さんがわたしとの距離を詰める。
「マジでか!?」
左手にはアンブレイド、右手にはビニール傘。その二刀流で襲いかかろうとしている!?
「おらおら、おらっ!」
「いっつぅ!」
左は上、右は左。涼葉さんの不規則な二本のアンブレイド攻撃は予測困難で回避方向がみえにくい。両手持ちじゃない分だけ威力は落ちるけど……そう何度も当たってはいられない!
「あっ、う!?」
しかも地面のビニール傘で足を取られる! 今もビニール傘踏んだし!
刹那くん……よく、こんな足場の悪いところで戦えたな……すごい! 尊敬しちゃうよ!
「おらっ!」
「くっ!」
ビニール傘の攻撃をアンブレイドで受け止める。
「貧弱ゥ!」
アンブレイドで受け止めた涼葉さんのビニール傘はあっさりと根本からポキっと折れてしまった。
「えっ……」
驚くほどあっさりと、まるでチョコスティックが折れるようにあっと言う間に折れてしまった。
そうか、あの折れてたビニール傘はアンブレイドで受け止めて折れたのか。
「おらっ!」
涼葉さんはバックステップしつつ折れたアンブレイドの柄の部分をわたしに向かい放り投る
「はぁ!」
投げられた柄を再びアンブレイドではたき落としすぐに涼葉さんとの距離を追撃のために詰める。
「くっそ! また」
涼葉さんはジャンプして車の上に乗っていたビニール傘を取り上げまたもアンブレイドとビニール傘の二刀流になる。
「おらっ!」
「いっ、つぅ!」
またも縦横無尽の攻撃。
この回避困難な二刀流をなんとかしないと……あ、そうだ!
「うぉらっ!」
「これで、どうだ!」
わたしはアンブレイドを開く事を思いついた。アンブレイドを開けば広範囲を防げる盾になるからこれで二刀流の対応できるはず!
案の定、涼葉さんの攻撃は開いたアンブレイドによって防がれた。イケる!
「甘い!」
と、声がすると同時にアンブレイドを開いたまま上にあげると涼葉さんがいない!
とっさにわたし上へジャンプ! 上方向はアンブレイドが開いているから上空への攻撃は防御できる! そう踏んでのジャンプ!
「ここで飛び上がるなんて、すごいで凪紗!」
見るとさっきまでわたしの場所の左側に涼葉さんは居た。右手にはビニール傘を持っていないからきっと投げたか捨てたんだろう。
「こんなに大量のビニール傘があったら対応できないよ……」
パルモと妻沼の駅をつなぐ歩道橋の欄干に手をかけぶら下がったまま眼下を見渡す。
「いい考えだと思ったけど……だめだ。前が見えなくなる」
アンブレイドを開くってのは二刀流の対応としてはいいけど……アンブレイドを開いて展開すると視界を遮っちゃうからこれは却下だ!
「よっ!」
腕に思いっきり力を入れて体を持ち上げ歩道橋の上へと乗り上げる。
同時に展開していたアンブレイドを赤い開閉ボタンで閉じ、トリガーを引く。
「よし、今の内に」
Bスロットの『停止』のプレートを抜き取り、ポケットへ入れて代わりに白いプレートを取り出す。
「させへんって!」
「凪紗ちゃん、がんばってね」
涼葉さんの声と、刹那くんの声!? が同時に耳に侵入してきた!?
「えっ、ちょっ! えっ!」
涼葉さんの攻撃を受け止めてチラッと後ろを見る。
「刹那くん!?」
「よそ見はダメだよ。集中して」
「あ、はい……ってえっ?」
あ、あれ? 刹那くん手伝ってくれないのかなぁ?
「あ、えっと、てつだっ」
「よそ見か? よそ見なのか!? 余裕やな!」
「うゃひゃ!」
刹那くんの方と見てると涼葉さんの攻撃が飛んできた。
イヤ余裕は無いけど……えっと。
「せ、刹那くん!? えっと、刹那くんは加勢してくれないのかなぁ!」
見ると刹那くんは妻沼駅の裸の銅像付近にあるベンチに腰をかけてのんきに缶コーヒーを飲んでいた。
「えっ? なんで? だって凪紗ちゃん『この子はわたしに任せてね』って言ってたでしょ?」
「ま、真面目ッ!」
厳しい! 刹那くん真面目で厳しすぎるよぉ!
なんて思わずココロの中でツッコでしまった。でも……ううっ、刹那くん。そんな疑問だらけみたいな顔ちゃって……でも真面目なのも考え物だよぉ……
「おらっ!」
「うぉ、危ない!」
ううっ、心なしか涼葉さんの攻撃が増している感じがする……
「なんや! イケメンくそ野郎は参戦しないんか!?」
「うん、しないよ。凪紗ちゃんが『任せてね』って言ったからね」
そんな会話が耳に入る。ううっ、自分で言ったとはいえ……ホントに加勢してくれないんだ……
「はぁ!」
アンブレイドでの横凪の一閃。涼葉さんはバックジャンプであっさりと回避。でもかわされるのは想定内! わたしも攻撃と同時にバックジャンプをしていた。
「お疲れさま」
労う刹那くんの斜め前で着地。
「大丈夫?、勝てそう?」
「わかりません。でも……」
勝てるかわからないけど……この白いプレートをセットできれば……
「これが勝利の鍵かもしれません」
わたしは半透明で白いマテリアルプレートを刹那くんに見せる。
「それって、『色付き』!? マジでか……」
刹那くんの表情が険しくなる。やっぱりか……これで確実で確信。この『色付き』って言うプレートはかなり強力なスキルを持ってる。
「凪紗ちゃん。彼女の勝ちたい?」
「えっ?」
「勝ちたい?」
「はい!」
わたしは力強くうなずく。
わたしは涼葉さんに勝ちたい!
「わかった。覚えておいて。そのプレートのスキルは凪紗ちゃんの『味方』だから」
「えっ?」
味方……どういうこと?
「いい凪紗ちゃん。その色付きはただセットしただけでは、」
「言わせへんで!」
その時、涼葉さんが刹那くんに向かって攻撃を仕掛けていた。
「刹那くん!」
刹那くんは涼葉さんの攻撃を後退しながらアンブレイドで受け止めては、弾いていく。でも、なんかお腹の辺りを手で押さえている……具合悪いのかな……
「刹那くん! 大丈夫!?」
刹那くんに救援に駆け向かう。
「あんたはこいつでも相手してろや!」
「くっ、やっぱやっかいだこれ!」
涼葉さんは幻影のスキルで自分の分身を一体作り出し、わたしに強襲をかけてくる!
幻影・涼葉さんの縦からの横からの猛攻をアンブレイドで受けて、ジャンプでかわす。
「はぁ!」
幻影・涼葉さんの縦薙ぎの一撃をかわし、わたしの横薙ぎの一撃を加える! あっさりとジャンプでかわされるけどこれで幻影・涼葉さんからの間合いが離れた!
「刹那くん、いま行くから!」
刹那くんの救援は先だけど……ごめん刹那くん! このプレートをセットさせて!
わたしはポケットから取り出しておいた白いプレートをセットした。
これが、勝利の一手!
「涼葉さん! わたしの……わたし達の勝ちです!」
スロットを閉じ、スイッチをBスロットに合わせ……
白いプレートを起動させた!
「へっ……」
起動させたはずだった……
「え、なんで……エラー!」
クリスタルパネルが自動で開きエラーの警告が表示されている……
「Aスロットに重複プレート……?」
どう言うこと……重複って……?
「エラーか……凪紗ちゃん! 戦いながら聞いて!」
放心に暮れていると刹那くんの声が耳に響く。
「うっさい! 黙れ!」
次に涼葉さんの声が耳に入る。
「返事がないけど続けるよ! エラーが出てると思うけどその色付きのプレートは、っそ!」
涼葉さんの攻撃が激しいのかそれとも刹那くんの具合が悪いのかわからないけど、声はぶつぶつと途切れている。
「大丈夫!? 刹那くん!」
幻影・涼葉さんの縦振りの攻撃をかわし刹那くんを見た。
「俺の事はいいから! それよりそれは起動にはふたつスロットを使うんだ! だから、」
大丈夫って言うけど……そんな痛そうにお腹を押さえて苦痛の顔してたら心配するよ!
「でも、刹那くん! お腹押さえてるけど……ホントに大丈夫!?」
「いいから、聞いて! 色付きを起動させるにはまずリンクに、」
「アホか!」
涼葉さんの一撃が刹那くんを襲う!
「くっそ、話が進まないよ!」
「ぐぅぶっ!」
うまい! しゃがんで回避したと思ったらすぐに水をすくいあげるかのような流れる下段からの上段攻撃。
攻撃を食らった涼葉さんはかなり上空に吹き飛び、パルモの屋上で体勢を建て直し着地した。
「凪紗ちゃん、まずアンブレイドをリンクに設定して!」
「えっ!?」
わたしが戸惑っていると刹那くんは『勝ちたいなら早く!』と急かすように叫ぶ。
「は、はい!」
その雰囲気にたじろいて、返事もするも、もたついてしまう。
「えっと……確かここを思いっきり引っ張ると……」
アンブレイドの柄を思いっきり引っ張る。
そして、ガシャンと開く音がしてリンクにできる『青いボタン』が姿を表した。
「リンクにしました!」
青いボタンを押す。スロット付近の溝に青い光が走り出す。
「AかBスロットにセットしてある『黒いプレート』を抜いて!」
「はい!」
言われるがままスロットを開きセットしてある『滑走』のマテリアルプレートを引き抜く。
「そのまま閉じてリンクでスキルを起動!」
「は、はい!」
「あかん!」
上の方から、涼葉さんの声。ここまで聞こえてくるとかなり大きな声で叫んでいるんだろうな。容易に想像できる。
スロットのレバーをBスロットに合わせリンクでスキルを起動させた。
Aスロットクリーン
Bスロットクリーン
リンク設定確認…OK
スキルキャパオールユース
スキルキャパ使用制限解除
システムオールクリーン
マテリアルカラー"クリスタルスノー"プレート承認
"クリスタルスノー"プレートセット確認
…… …… …… …… ……
…… …… …… …… ……
…… …… …… …… ……
システム使用条件オールクリア
仮想ダブルスロットマテリアライズシステムスタート
スキル『雪』を起動します。
「な、なんなの……」
クリスタルパネルからよくわからないけど、いろんな文字が流れては……消えて、……えっ?
「えっ、ええええええええぇぇぇぇええぇぇぇ!」
目の前の出来事にオドロキの声を上げた。
そこにはわたしの身長よりすこし大きいくらいの科学の教科書に載ってそうな、コーヒー牛乳のパッケージにも描かれているような『雪の結晶』そのものがあった。
「えっ? えっ、なに、えっ? ちょっ、えっ!」
目の前の大きな雪の結晶はゆっくりとわたしに近づいてきた。ゆっくりとわたしは一歩、また一歩と後ずさる。
「ちょ、なんなのぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉ!」
あまりにも飛びすぎている出来事にわたしの思考はついていけず雪の結晶から背を向けてその場を走って逃げ出す!
「追いかけてくる! なんでぇ!」
逃げるわたしに雪の結晶はどんどんスピードを増しわたしを追いかける!
「凪紗ちゃん!」
「せ、刹那くぅ〜〜〜〜ん!」
刹那くんの胸に飛びつき、抱きついた形になった!
「刹那くん! 雪、キレイな雪の結晶が!」
「大丈夫だから! あの雪の結晶をくぐって!」
「でも、なんか怖い! 怖いです!」
「大丈夫、俺を信じて! いくよ!」
「ひっ!」
目を閉じ刹那くんをギュっと抱きしめ胸に顔を埋める。
刹那くんもわたしを力強く抱きしめてくれた。
一瞬、とても体中がとても冷たい感覚が通り過ぎた。
「くそっ、マズいでこれは、マズいことになったでこれは……」
涼葉さんの声が聞こえる……
「凪紗ちゃん。もう大丈夫だよ」
ゆっくりと刹那くんの胸から顔を離し刹那くんを見た。
「せ、刹那くん……」
「大丈夫だったでしょ」
「あ、うん」
わたしは抱きついている事に気づいて、恥ずかしくなって視線を逸らして、うつむいて小さく頷いた。
でも、まだ抱きついたまま。もう少しこのままで……
「しかし……ずいぶん派手な『髪の色』になったもんやな凪紗」
「へっ?」
「う〜ん、そうかな? 俺は綺麗な『銀髪』だと思うけどな?」
「へっ?」
髪の色? 銀髪? なにを言ってるのかな? ふたりとも?
「えっと、刹那くん。銀髪って……」
わたしはふたりの会話がわからずに刹那くんに聞き返す。
「髪。見てごらん。綺麗な銀髪だから」
「髪?」
そう促されてわたしは刹那くんから一歩引いて、自分の長いポニーテールを掴み目の前に持ってくる。
「えっ……ええええええぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇえええ!」
わたしの髪の毛はたしかに刹那くんの言うとおり銀髪! なんで、なんでぇ!
「ちょっと鏡を見てきます! 涼葉さんいったんタンマでお願いします!」
それだけを言うとわたしは猛ダッシュで妻沼駅のトイレに駆け込んだ!
「ふぇ、ふぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ!」
今日はかなりオドロキの連続だったけど……鏡を見て今日一番のオドロキを更新! わたしの髪は……髪が……銀色になってるぅぅぅぅぅうぅぅう!
「なんで、なんで!」
髪を指で流しても事態は変わらない。銀色のままだ。
「えっ、ちょっと、待って! ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇえぇぇ!」
髪を指で流しながら鏡を見ていると、さらにオドロキの事実を発見してしまった!
「目の色……なにこれ!? 蒼くなってる?!」
銀髪で蒼色の眼……これじゃ……これじゃあ!
いてもたってもいられずに、わたしはトイレを飛び出す!
「うわ〜ん、刹那く〜〜〜ん!」
「ちょっ、凪紗ちゃん!?」
わたしは思わず刹那くんに抱きついた!
「どうしよう! 刹那くん! どうしよう! わたし不良になっちゃったよ〜〜〜〜〜〜〜〜!」
わたしの嘆きは三人しかいない妻沼の駅にこだましたのだった。
続く。
最後まで読んでいただきありがとうございます。間宮冬弥です。
どうでしょうか? 楽しんでいただけましたでしょうか?
次回の第十話ですが現在、執筆中でございます。
完成までしばらくかかりますので気長に待っていてくれるとありがたいです。
それでは、最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。
では次回作でまたお会いしたいと思います。