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タイムリミット

みなさん。お久しぶりです、こんにちは。そしてこんばんは。

作者の代弁者紫乃宮綺羅々しのみやきららでぇ~す!

元気にしてたっ!?


アンブレイドバトル~も早、第十話です。長かったような短かったような~複雑な心境です。と作者は言ってました。


…まえから思ってたんだけどこの「~年上の彼氏ができました(予定)」の(かっこ)ってなんなの? 予定ってなんなの? 作者は(かっこ)つけてるつもりなのかな?

ぶっちゃけ(かっこ)悪いよね! 予定の意味もわからないしぃ あはは!


さて、今回も私の出番はここだけです! 前書きだけ!

まったくはみ出し者もいいところだよね! はみだしちゃうよ! むしろはみ出していくよ!


では、このテンションまま第十話「タイムリミット」をお楽しみください!

それではっ!

「偉いね、凪紗ちゃんのタンマをちゃんと守ってるんだ」

 刹那は歩道橋の手すりに背を預けている涼葉にそう声をかけた。


「ちゃうって。凪紗が『色付き』を使うたんや。ここから厳い戦いになるのは想像できるやろ?」

「なるほど、体力の温存だね。いい判断だよ」

「誉めたってなにもでえへんよ」

「別になにかもらおうとは思ってないって」

 そこでふたりの会話が途切れる。


「なぁ、兄貴は強かったか?」

 こんどは逆に涼葉の方から刹那に声をかける。


「……さっきも言ったけど『お兄さんより君の方が強い』よ。君はお兄さんの前では隠してたみたいだけど」

「質問に答えろや」

「……そうだね。強い弱いで言うなら『弱い』ね」

「そうか……」

「お兄さんを尊敬してるからお兄さんより『弱い』振りをしてるの?」

「そんなんじゃあらへんよ」

「そう」

 またも会話が途切れる。


「ん……なぁ、訊いてもいいか?」

「なに?」

 涼葉が空を見上げながら刹那に声をかけた。


「鏡の中って……雪降るんか?」

「雪……? 鏡の中での天候の変化はないはずだけど?」

 刹那も空を見上げる。空からは白い粉が降っていた。


「……マナが肉眼で見えるほど濃度が濃いってわけじゃないよねこれ?」

「ああ、今確認したんやけど、いまのマナの濃度は93パーセントや」

「う〜んじゃあ、これってやっぱり……」

「間違いない。これは『雪』やね……」

 涼葉は雪を手のひらに乗せた。それに追従するように刹那も同じく、雪を手のひらにのせる。


「雪だね。これ」

 手のひらに乗せた雪は刹那の手の温度であっという間に溶け水となっていた。


「水か……」

 手のひらで溶けて水になった雪を親指で拭う。そして刹那はつぶやいた。


 空を見上げるふたり。空から白い小粒の氷。『雪』が降り注いでいた。


「凪紗のスキルの影響なんか?」

「どうだろう……いや、たぶんそうだね。確信はないけど」

 刹那はマナを視認できるメガネをかけ答える。


 双子月が隠れてしまった夜空から徐々に強く降り注ぐ雪をふたりは見ていた。


「色付き……」

 刹那はメガネをはずし降り注ぐ雪を見上げ、何かを思い出すように口から言葉を漏らしていた。


「うわ〜〜〜〜ん! 刹那く〜〜〜〜ん!」

 そんな状況を打ち破る、泣き声が聞こえてきたのはその時だった。


 ◆


「どうしよう刹那くん! この髪どうしよう! 切ったほうがいいかな? バッサリ切ったほうがいいかなぁ! ツルツルにしたほうがいいかな!? 髪染め買ってきた方がいいよね!?」

 気が動転して自分でもなにを言ってるのかわからない。でも髪染めは買った方がいいよね!


「イヤイヤ、切らなくてもいいし染めなくてもいいから! っいうより、落ち着いて凪紗ちゃん!」


「でも、この髪じゃあ明日学校に行けないよ! あ、でも刹那くんがこの髪の色がいいって言うなら……わたしがんばるよ!」


「なにを!?」

「どう、刹那くん!? わたしのこの髪? どう!?」

「イヤイヤ、と、とりあえず落ち着こうね凪紗ちゃん。ちなみに俺は元の髪の方がカワイイと思うよ」


「うわ〜〜〜ん! やっぱり髪切ります!」

「なんで!?」


「夫婦漫才か!?」

 そんなわたし達を見て涼葉さんがツッコんできた。


「め、めおとって夫婦の事だよね……」

 その単語で顔が赤くなってるのがわかるくらい熱くなってる……そんな顔を刹那くんから隠すようにうつむいてしまう。


「ふ、夫婦!? ち、違うよ!?」

 ううっ、否定されてた。でも、夫婦……


「ほぉ〜そうか? そっちの彼女はまんざらでもなさそうだけどな?」

「へっ?」

「夫婦……夫婦……」

 わたしは頬に両手を当て腰を左右に振っていた。


「な、凪紗ちゃん?」

「刹那くん……わたしはもう十六才だよ。法律的にもオッケーです……」

「なにが!?」

 含みをもたすような言い方をしたわたしに刹那くんは閃光のようなツッコミを入れてきた。


「そんな事より凪紗ちゃん。もしかしてトイレにアンブレイドを忘れてきてない?」

「へっ?」

 刹那くんからそんな指摘を受けてわたしは自分の両手を見た。


「あれ、アンブレイドがない?」

「じゃあ、急いで取ってきて。色付きは時間制限があるから」

 自分の両手には握られているはずのアンブレイドがない。あの時は突然の銀髪にかなり焦ってたし、アンブレイドどころじゃなかったし。トイレに忘れてきてもしょうがないし……ん? 時間制限?


「あ、あの時間制限って?」

「『色付き』は強力なスキルのかわりに使用に時間の制限がかかってるんだ」

「ほぉ、そんなんかい?」

 涼葉さんが会話に割り込み刹那くんを、睨んでる?


「あれ、もしかして知らなかったの?」

「ウチ初耳やで」

「マジ?」

「マジや」

 涼葉さんの顔はホントに知らなかったって感じの声だし顔もそんな感じだった。


「しまったなぁ〜」

 そんな涼葉さんを見て刹那くんが自分のほほを叩いた。


「えっと、そ、そうなんですか?」

「そうだよ」

 ふたりの会話はよくわからないけど、とりあえず相づちをうつ。


「ずっと話しててええよ。でも制限時間が過ぎたらあんたらボコボコやけどな」

 ううっ、笑ってる! 笑顔が怖い、涼葉さん、たぶん怒ってるよ! そりゃそうだよね! 勝手にタンマして、しかも戻ってきたらアンブレイドを忘れてるこんなわたしに怒ってるよね!?


「い、今すぐ取ってきます!」

 わたしは自分ができる最高の速度でいて猛ダッシュでトイレに戻っていったのだった。


 ◆


「アンブレイドを持ってなくてのあの速度か……」

 刹那は走り去った凪紗を見て言葉に出さすにいられなかった。


「やっぱすごすきやで『色付き』プレートは。正直反則やであれ」

「そうだね。確かにチート性能だね『色付き』は」

 涼葉は凪紗が走り去った方角をじっと見て何かを考えているように腕を組んだ。


「でも、アンブレイドを取りに行くことを黙ってみてるなんて意外だね」

 刹那が涼葉に視線を戻し声をかける。


「そうか?」

「うん、てっきり『行かせへんで!』って言って全力で攻撃を仕掛けるかと思ってた」

「そんな事してもあんさんが『行かせないよ』ってゆうて妨害するやろ?……でも、なんで止めんのかというたら、たぶんお返しかなぁ?」

「お返し?」

 刹那が疑問系で聞き返す


「そうや、凪紗はウチを落ち着かせてくれたんや。『今の涼葉さんには勝ちたくない』って理由で」

「そうなんだ」

「だから、ウチもアンブレイドを持った凪紗とバトらんといかんのや。正々堂々とな」

「へぇ〜偉いね。でも、色付きのおまけ付きだけどね」

「言うなや」

 そこで一瞬会話が止まる。


「『色付き』が出るとは思わんかったわ。ウチ負けるかもな」

「いや負けるよ」

 会話が再開したとたん刹那がそう断言した。


「……あんた、イケメンでやさしそうな顔してるけど、意外とキツい事、平然といえるんやな?」

「そう? 俺はそんな事思ったことないけど」

「ウチ傷ついたわ」

「そうには見えないけど?」

「それ、それや。その言動がキツいっていってんねん」

「そ、そう? 傷ついたらごめん」

「……凪紗といい、あんたといい。話してるとホンマ調子が狂うで。似たもん同士やで、あんたら」

「俺と凪紗ちゃんが似てる?」

「話してると調子が狂うところがそっくりや」

「へぇ〜」

 そして、三度会話が止まる。


「……凪紗遅いとちゃうの?」

「う〜ん、確かに遅いね」

「ったく」

 涼葉はずかずかと妻沼駅へと歩みを進め、改札口付近で止まった。


 息を吸い込み、大きく腹部を膨らまし腹部を空気で満たし、腹に力を籠めて、思いっきり……


「凪紗! はよ戻ってこんかい!」

 と、複式呼吸で腹から声をはじき出し、大きな声で、それはもう妻沼駅全体に響きわたるような大きな声で叫んだ。


「お、お待たせしましたぁぁぁぁぁぁあぁぁ!」

 妻沼駅からものすごい速度で出てきた凪紗の叫びが、ふたりの耳に入ってきたのはその時だった。


 ◆


「よし、急いで戻らないと」

 わたしは妻沼駅のトイレで忘れてきたアンブレイドを手に取る。


 そしてふと鏡を見た。


「でも、元に戻るのかな? この髪……」

 鏡の中と外のわたしは銀髪で蒼眼。自分でも信じられないくらいの髪の色だ。


「ううっ、元の髪の色に戻らないかなぁ」

 もう一度髪を空いている手で手くしをしてみた。流しても結果は変わらない。銀髪のままだった。自分で言うものなんけど、いつもの燃えるような赤の髪には戻らないのかなぁ……ううっ


「ホントにどうしょう」

 じっと、わたしは鏡の中のわたしを見つめる。




「……会えたね。わたし」



 漏れる言葉。



「ふぇ? わたし……今なんて……」

 自分が発した言葉かどうかわからないあやふやな言葉。


 鏡の中のわたしはわたしと同じ態勢で止まっている。


「……会えたね?」

 会えた。でも、なんだろ……これもどこかで聞いたような……


『凪紗! はよ戻ってこんかい!』


「うっひゃぁあ!」

 ぼっーと考えごとをしてた矢先の怒号。驚いて肩がビクってなっちゃったよ!


 でもこれって、涼葉さんの声だよね!? やばい! やばいですよこれは!


「も、戻ります!」

 トイレを猛ダッシュで出て改札口をジャンプで飛び越える。


 改札を出る直後に一端止まって天井に吊りかけられている時計をみる。


「九時五分かぁ」

 時間を確認したところでダッシュをかけて改札口を飛び越えて駅を出た。


(……雪?)

 そこで見たのは空から落ちてくる雪。いつのまにか降り出していた雪の間を駆け抜ける。


「お、お待たせしましたぁぁぁぁぁぁあぁぁ!」

 そんな怒号に返事をするようにわたしは超高速ダッシュでふたりのいる場所に戻ったのだった。



 ◆


「すいません、遅れました!」

 刹那くんのとなりで止まってすぐに謝る。


「ううん、大丈夫だよ」

「は、はい。ありがとうございます」

「ほな、再開するで」

 涼葉さんがバトルを再開するように急かす、急かすけど……


「ちょっと待ってください!」

 戻ってきて早々、バトル再開を申し出る涼葉さん。

 そんな涼葉さんを手のひらで制止して刹那くんの方へと視線を向ける。


「なんでやねん!」

 ううっ、すいません。でもこれは聞いておかないといけないことがあるんです。


「あの、刹那くん。この『雪』の効果って……」

「あ、ごめん俺も知らない」

「えっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 し、知らないの? 刹那くんでも知らないのぉ〜〜!


「し、知らないんですか?」

「そうだよ。バトルが始まる前にも言ったと思うけど生成されたプレートの効果はふたつとない。森羅で複製されて初めて量産される。それと同じで色付も同じ効果はふたつとないんだ。それと色付きは複製不可能だからその雪ってスキルのプレートは世界でひとつだけ。凪紗ちゃんだけのプレートなんだよ。だから……ごめん。ぶっつけ本番で悪いけど実戦で確かめるしかないんだ」


「ううっ……そうなんですかぁ?」

「ごめんね。力になれなくて」

「いえ、大丈夫です」

 ううっ、雪の効果がわからないとどうしょうもないよ。


「凪紗ちゃん」

「はい」

 気落ちしているわたしに刹那くんは肩に手をかけてくれた。


「想像力をフルに働かせて。俺の考えが正しいなら、想像は創造になるから」

「そうぞうはそうぞうに……」

 どういうこと……


「話はいいか? ほなバトル再開や」

「ちょっと待ってください!」

 手のひらで涼葉さんを制止して刹那くんの方へと視線を向ける。


「なんでやねん!」

 ううっ、ごめんなさい。でも最後にこれだけは聞いておかないと!


「刹那くん。この髪の色って元に戻りますか?」

「うん、制限時間が過ぎれば元に戻るよ……たぶん」

「たぶん?」

「えっと……サイヤ人が超サイヤ人になった感じだから戻るよ……たぶん」

 バツが悪いのか刹那くんは目をそらしながらそう答えた。ううっ『たぶん』が二回続いた……なんか不安だよ。


「その言葉信じるからね! 刹那くん!」

 刹那くんの回答でわたしは信じるという言葉を贈る。


 とりあえず髪の色は戻るんだ! ホントによかったぁ〜もし戻らなかったらどうしょうかと思ったよ。たぶんってのが一抹の不安でサイヤ人ってのが、なに人かわからないけど……信じるからね、刹那くん!


「じゃあ、さっそくバトル再開しましょう!」

 わたしは半身になって騎士道の構えを取る。


「なぁ、イケメンくそ野郎。色付きの時間制限って何分なん?」

「えっ?!」

 と、わたしは涼葉さんの意外な行動にオドロキの声を上げた。


「なんや? そっちはいろいろとイケメンさんに質問してウチはできんのかい?」

「ううっ……どうぞ」

 今度は涼葉さんが刹那くんに質問をぶつけた。なら、わたしと一緒に質問してよぉ〜


「で、制限時間は何分なん?」

「五時間」

「「ご、五時間!?」」

 わたしと涼葉さんが同じテンションで刹那くんの答えに驚く。

 そ、そんなに時間があるの? でもそれって制限時間って言えるのかな?


「ウソつくなや!」

「うん、ウソだよ」

 あっさりとウソを認める刹那くん。そうだよね。さすがに五時間って訳ないよね。五時間なんて長すぎるよ。


「ホンマの制限時間は?」

「……こっちが不利になる情報を言うと思う?」

「そら、そうやな」

 これは刹那くんに同意だ。不利になる情報は相手には言えないもんね。


「ほな、戦ってる内に時間切れになるやろ」

 そう言葉を漏らして涼葉さんはアンブレイドを構える。


「すまんな凪紗。ほんじゃあ、バトルと行くか」

「そうですね。こっちは時間制限があるんで短期決戦、短期決着で行きます!」

 制限時間がどのくらいかわからないけど、短期決戦で決める!


「凪紗ちゃん、無理しないでがんばって」

「は、はい!」

 刹那くんの応援で俄然、力が入る。


「ええで、ほんならウチはゆっくりと戦わせてもらうで」

「……時間は与えません」

「なら、かかって来いや!」


「行きます!」

 この『雪』ってスキルの効果が、いまいちよくわからないけど、とにかくやるしかない!


「うおりゃ!」

 涼葉さんの縦薙ぎの一撃をサイドステップでかわしてlからの、


「はぁ!」

 即座に涼葉さんの真横から横薙ぎ『閃煌(せんこう)』を放つ!


 ジャンプ一番で涼葉さんは閃煌をかわす。


「逃がさない!」

 わたしもジャンプで涼葉さんを追撃!


「はぁ!」

 空中で涼葉さんに追いつき天地を放つ!


「食らうかい!」

 アンブレイドで受け止めガード!


「くっそぉ! ヒットしないか!」

 そのままガード状態のまま涼葉さんはアンブレイドを振り抜きわたしは空中で後方でんぐり返しのように回転して着地。


「色付きを使っても変化ないなぁ!」

 涼葉さんの空中からの一撃。わたしはそれをバックステップでかわす。


「どないしたん! そんなもんかい色付きは!」

「ぐっ!」

 着地と同時にダッシュをかけわたしとの間合いを涼葉さんは埋め、そのまま横凪の一閃!


 その一閃をアンブレイドでガード!


「期待はずれや、凪紗ぁ!」

 鍔迫り合い状態に持ち込まれてわたしに皮肉を並べる。


 確かに、涼葉さんの言うとおり、なんか変化した感じはない。髪が銀色になって眼が蒼くなっただけの変化。


 ただそれだけ。


「はぁ!」

 鍔迫り合いの状況からわたしからアンブレイドを振り抜きそのままバックステップで距離を取る。


「短期決戦、短期決着だろうが!」

「!……滑空」

 涼葉さんは『滑空』を機動させてビルや街路樹を縦横無尽に駆け巡る。


「この状況で……やばい!」

 今のわたしは滑走も加速も停止も、スキルはなにも使えない状態! 今使えるのは……発動中の効果不明の『雪』のスキルだけ!


 上上下下左右左右と目まぐるしく駆け巡る涼葉さんを捕らえるのはかなりの至難の技だよ!


「短期決着はウチのほうやったな!」

 滑空で歩道橋の裏側を走り、そして……動きを捕らえきれず視界から消えた。


「見失った……!」

 わたしの左側へと駆け出し、その場を離れる!


「やっぱりこっちに来たなぁ!」

「えっ!?」

 左脇に停めてあった車の陰から涼葉さんがアンブレイドを振りおろし、現れた!


「ひゃああ!」

 そのまま足を止めずに逆にさらに速度をあげて飛び込み前転で攻撃を回避!


「ちっ!」

 空を切ったアンブレイドに舌打ちをしている涼葉さんの背後で態勢を立て直しそのまま駆け抜け、横薙ぎを振り抜く火燐センパイ直伝の抜刀術『斬空一迅・疾風(はやて)』を仕掛ける。


「その攻撃はまるっとお見通しや!」

 そして、涼葉さんは疾風をジャンプ一番であっさりとかわす。でも、わかってた。言ってて悲しいけど、疾風が通らないのはわかってたんだ。


 地面に足をこすりつけ滑るようにブレーキをかけ身体を反転。涼葉さんへと向き返り、アンブレイドを構える!


「逃がさないで!」

 と、同時に涼葉さんの横凪のアンブレイド攻撃!


「うっ!」

 それをアンブレイドを受け止めバックステップで後退!


「どうしたん? なんならそのスキルの効果を確かめる時間をやろうか? 時間切れになっても知らんけどな!」

「い、いりません!」

 そんなことしたら涼葉さんの言うとおり時間切れになる恐れがあるよ。だからその申し出は却下です!


「なら、凪紗はなにもできんままやな!」

 攻撃が続く。もどかしいくらいになにもできない!


「くそっ!」

 雪、雪、雪、雪、雪、雪、雪ってなんなの? 効果ってなに? 雪、雪、雪、雪、雪、雪! ……ホントになんなの?! 雪!


「いつまでも逃げてたらウチには勝てんで!」

 下からの振り上げの攻撃をバックジャンプでかわし、タクシーの天版に着地。


「……っ! 考えろ! 考えろわたし!」

 自分に言い聞かす。


『そうぞうはそうぞうになるから』


 刹那くんの言葉を思い出す。


「……どういう意味なの、刹那くん! わからないよ!」

 刹那くんの言葉の意味がわからずイラだちだけが先行する。


「怒り心頭かい!」

 イラだちの声を聞いて涼葉さんが揶揄しながらアンブレイドを振りおろして来た!


「くっそ、でりゃ!」

 アンブレイドでガードしてアンブレイドを強引に振り抜き涼葉さんごとアンブレイドで払う。当の涼葉さんは体を丸くして縦回転しながら後方へと退避!


「逃がしません!」

 空中へと後退した涼葉さんにわたしも飛び上がり追撃をかける!


「はぁ!」

 先に着地した涼葉さんの背にはアイスクリームの店舗。後方へはかわせない!

 アンブレイドを天から地へと振りおろす剣術の天地を仕掛けた!


「甘い!」

 その天地も後ろの店舗に向かい飛び、壁を足場にしてもう一度ジャンプ。三角飛びの要領でわたしの後方へと回避した。


 その時だった。


「雪だるま……」

 目に飛び込んできたのは、『ティーンエイジャーアイスクリーム』のキャンペーンポスターにアイスとともに描かれている大きな『雪だるま』だった。


「雪だるま……」

 そのまま一瞬の行動停止。わたしの思考が完全に『雪だるま』に持って行かれていた。


「もらった!」

「あっ!」

 雪だるまにこのまま目を奪われている事は危険だ!


「まずい!」

 涼葉さんが後ろから攻撃を仕掛けてきてる! とっさに後ろを向いたまま左にサイドステップで回避!


「逃がすかぁ!」

 着地と同時にダッシュをかけてわたしを追撃してくる!


 涼葉さんの横薙の一閃と同時に真横にある街路樹へとじゃジャンプ! そのまま街路樹を足場にしてさらに前方へと大きくジャンプ。涼葉さんが使った三角飛びをパクる感じに横に延びる大型トラックの貨物天版に着地。


「……雪だるま」

 こぼれる言葉。


 なんかひっかかる。雪だるま……なんだろ、このモヤモヤは?


「雪だるま……」

 このスキルは『雪』……雪だるま……雪とだるま……


『そうぞうはそうぞうになるから』


「想像力をフルに働かせる……そうぞうはそうぞう……?」

 雪だるまを見た時からわたしの思考はこの雪だるまに持っていかれている……何かわかりそう……なんか掴みそう。


「考えごとかぁ! 集中せんかぁ!」

 もう少し、もう少しで……


 思考中の視界の中を徐々に迫りくる涼葉さん。スピードが出ているはずなのに、なんかゆっくりと感じる。


「そうぞう……そうぞう……そう……」

 降る雪……雪だるま……雪……だるま……そうぞう……そうぞう……


 もしかして……そうぞう……そうぞう……!


「雪だるま!」

 アンブレイドと右手をあげて上から下へと思いっきり振りおろして雪だるまを頭の中でそうぞうして、 


 雪だるまと思いっきり叫んだ!


「な、なんやって〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

「へっ?!」 


 わたしと涼葉さんの間に大きな大きな雪の玉がふたつ上下に重なって落ちてきた。


 まるで『魔法』のように。何もない空間から、手品師がハンカチからハトを出すようにホントに何もない空間から雪だるまが落ちてきた。


 それはまさしく『雪だるま』。黒い目と口。木の棒を横にさせばもう立派な雪だるま。さらに赤いバケツを頭の部分にかぶせて、木の棒に手袋をかぶせて、首あたりにわたしが巻いている赤いマフラーを巻けば完璧な雪だるまになる雪だるまだった。


「うべっ!」

 そして、涼葉さんはわたしが出した? 雪だるまに正面から衝突してそのまま雪だるまとともにトラックから落下していった。


「そうぞうと……そうぞう……『想像と創造』」


『想像力をフルに働かせて。俺の考えが正しいなら、想像は創造になるから』

 刹那くんの言葉が頭をよぎる。


「刹那くんが言ってた事って……この事なの……」

 下に落ちた雪だるまを見てわたしの思考クリアになっていく。


「この『雪』ってスキルは……」

 わたしの疑念が正しいなら……


「やっぱ、色付きは反則やな! 規格外や!」

 押しつぶしていた雪だるまを砕いて涼葉さんが飛び出てくる。


 でも涼葉さんのこの言葉はわたしの疑念を、確信へと押し上げていく。


「めっちゃ冷たいやん!」

 飛び上がりからのアンブレイドの振りおろしの一撃。


 雪のスキル効果を確かめる必要がある。


「雪だるまっ!」

 さっきと同じように雪だるまを想像しながらアンブレイドを上から下へと振りおろした!


「くっ! じゃまやな!」

 涼葉さんは空中で無理矢理態勢を崩してさっきと同じように何もない場所から突然、姿を現れて落ちてくる雪だるまを切り上げの一撃で斬り砕く。


「やっぱり……?」

 まだ確信じゃない。まだ検証と検討の段階。もう一度。


「雪だるまが作れるだけなんか!」

 斬り裂いた勢いそのままにトラックに着地、その足でダッシュをかけ、わたしとの間を詰める。


 冷静に、至って冷静にわたしは涼葉さんのとの間合いを推し量る。


 徐々に積もる雪。徐々に地面は白色で覆われていく。


 そんな風景を『綺麗だな』と感じながらわたしはトラックから飛び降りた。


(なんだろ……このココロの余裕は……雪を見てるとなんか落ち着く)


「また逃げんのかい!」

 涼葉さんが追いかけてくる。でもわたしは想像している。わたしの想像が正しく創造になるなら……きっと。


「……やっぱ、強烈なほど反則やで、色付き」

 こちらを見上げている涼葉さんの驚きの顔と目の前の出来事に引いてしまっている表情。


「想像した通りだ」

 トラックよりも高いその雪の柱の頂点から自分が創造したモノを見た。


 わたしの想像は地面から円形の雪の柱を突き出す事だった。そして見事にわたしの想像は創造になった。


 それは、その雪の柱はわたしの推論を確信へと急激に発展させていった。


「くっそ!」

 イラだっているのか涼葉さんは言葉を捨てるように吐き『滑空』を起動させて、わたしの創造した雪の柱を駆け上ってくる。


「沈めぇ!」

「この雪で、わたしは勝ちます!」

 頂上に辿り着いた涼葉さんはそのまま滑空を起動させた状態で飛び上がりアンブレイドを振りおろす。


 アンブレイドが振りおろしす直前、わたしは『創造』しながらアンブレイドの先端で雪の柱を小突く。


「はへっ!?」

 涼葉さんの間の抜けた声が聞こえた。


 この声から間髪いれずに、雪の柱は大きな音を立てて崩れて崩壊した。


「想像通りだ!」

 わたしの想像は自分が今、立っている雪の柱を一瞬で砕くこと。


「チビ凪ぃ!」

 降り立つ足場を失った涼葉さんは空中でなんとか体勢を立て直し一足先に地面に着地。


「はぁ!」

 空中で雪の足場というより、CDのような円盤の氷の足場をいくつも想像して創造する。複数の氷の足場を光が鏡に反射するかのように利用して、涼葉さんの真上に高速で駆け降りてそのまま空中からの振りおろしの剣術『天地』を繰り出す。


「くそったれが!」

 アンブレイドを横薙ぎから強引に振り抜き、天地をはねのけ、そのままの勢いで上半身を回転させ下半身を連動させて上段蹴りを繰り出す。


「まずっ!」

「もろたで!」

 天地をはねのけられた衝撃で、空中制御ができない!


「こなくそぉ!」

「な、ん!?」

 とっさに取ったわたしの行動に涼葉さんはまたも驚く。


 想像した円盤の氷を空中で創造して、その氷を足場にさらに上空に飛び上がることで攻撃を回避した。


「く、逃がさっ……ちっ!」

 さらにうれしい誤算は、落ちた氷の足場が涼葉さんの目の前に落ちて追撃をまぬがれる牽制になっていた。


「この『雪』ってスキル……」

 着地して確信。この『雪』のスキルは想像した雪を創造する事ができるスキル……出したり消したりできるスキル……


「すごい……これなら勝てる」

 涼葉さんに勝てる……これなら……


「またボケっとしとんのか!」

「あっ!」

 考えごとをしてたら、マズい! 勝てるものも勝てなくなる!


「おらっ!」

「ぐっ!」

 一瞬の気の抜けの間に涼葉さんの一閃が襲いかかる!


 その一閃をわたしは横薙ぎの騎士道の剣術『閃煌』で対応で防御!


「いくで! 雪だるまを出す時間はやらへん!」

「うっ、くっ」

 戦いながらの、交戦中でしかも相手の猛攻中で『想像』するのはかなり至難の技だぞ! これぇ!


「おら、もう終わりか色付きプレートの騎士さま!」

「いっつ!」

 涼葉さんの攻撃が肩をかする。くそっなんとか攻撃をやりすごして一発逆転を『想像』する時間を作らないと……


「はっ!」

 閃煌から天空へと連携させ二連撃を繰り出す。これで後ろに回避してくれれば……


「うぉりゃ!」

「えっ!?」

 涼葉さんは後ろにも、横にも回避しない……それどころか……むしろ突進してきた!?


「この間合いは崩さんで!」

「うっ……」

 防御無視の捨て身!? 攻撃をかわさず回避もしない突進はすでにわたしの目の前!


「くっ!」

 逆にわたしが後方へと回避!


「待てや!」

 涼葉さんはまたもダッシュをかけて間合いを詰めてくる!


 ホントに『雪だるま』すら『想像』できない! 執拗にまとまりついてくる!


「おらっ!」

「くっ……!」

 サイドステップで左に回避!


 さらにもう一度ステップを再動させて、さらに間合いを離す。


「ちょこまかと……!」

 涼葉さんは間合いを詰めるダッシュを仕掛ける!


「なんとか……しないと……」

 ダッシュでどんどんとわたしに近づき迫りくる。


「遠距離から攻撃できれば……」

 もっと長い……騎士道で使用してる槍くらいの長さがあれば……


「槍……?」

 そこでわたしは思いついた事があった。


「……できるかわからないけど……やるっきゃない!」

 わたしはバックジャンプして涼葉さんとの間合いをもう一度離す。


「いつまでも逃げんな、止まれや!」

 怒号を吐き、『滑空』を起動させてダッシュはさらに加速していく。


 これでいい。涼葉さんがもっと早くなれば、捨て身ならわたしの攻撃は通る……はず!


「本当の紫電を……衛宮火燐の紫電を見せてやる!」

 左手を腰の後ろに引き連動してアンブレイドも引き下がる。


「これが、センパイ直伝の紫電だあぁぁぁぁぁぁああああぁあああ!」

 『想像』して左手を思いっきり突きだし『紫電』を放つ! 


「そんな突き、食らうかい!」

「いっけぇ!」


 『紫電』を放ったアンブレイドはわたしの『想像』の通りに、氷が纏われる。


「な、っ!?」

 氷を纏ったアンブレイドはアンブレイド一本分くらい伸びた。いや『伸ばした』そしてそれはイコール攻撃可能範囲が長くなるって事!


 それとこのアンブレイドは、わたしがいつも騎士道部で使っている練習用の『騎士の槍(スピア)』と同じ長さ!これでセンパイの紫電に近づける!


「間合いが……っ! 伸びっ!?」

 捨て身覚悟の涼葉さんは完全に間合いの見誤り、完全回避不可能! この一撃、当たる!


 涼葉さんは止まることができずにわたしの放った紫電に

一直線に飛び込んでくる!


 当たる! この紫電は必ず当てる!


「これで終わりだぁ!」

「ちっ……くっしょうぉぉぉぉおぉぉぉぉぉ! ぶっぐっ!」


 わたしの紫電は涼葉さんを完璧に捕らえ確実にヒットした! 防御も回避もできなかった涼葉さんは衝撃で大きく後ろへ山なりの軌道で吹っ飛ぶ!


「やった!」

「まだや! 幻影ッ!」

 攻撃が通った喜びも束の間、涼葉さんは吹っ飛びながら空中で『幻影』を起動させた!


「ぐっ、はうぅ!」

 落ちて地面に激突した直後、三体の幻影・涼葉さんが形成され、わたしに襲いかかってくる。


「いいえ、終わりです!」

 アンブレイドに纏っていた氷を砕く『創造』をして、アンブレイドをガードレールにぶつける。砕けた氷は舞い上がり、そのままわたしの『想像』した三つの大きな『雪だるま』へと変化していく。


「二十秒。そこでおとなしくしてて!」

「くそが! くっそが!」

 『創造』した三つの雪だるまは三体の幻影・涼葉さんの真上で落ちて押しつぶす。


「まだや! まだ終わらん!」

「くっ……!」

 雪だるまを飛び越えて涼葉さんが空襲をかけた!


「なら、これでどうだ!」

 自分の周りに手のひらサイズの小さい雪だるまを無数に『創造』。


「いっけぇ!」

 無数の小さい雪だるまを飛礫(つぶて)のように一気にすべて解き放つ!


「甘いわ!」

「あ、しまっ、た!」

 アンブレイドを開いて防いだ! やっぱり涼葉さんの方が一枚上手!


「くっそぉ!」

「行かせへん!」

 大きくバックジャンプして後退しつつもう一度、『雪だるま』を『創造』。空襲をかける涼葉さんの真上を想像通りに落ちていく。


「また雪だるまかい!」

 真上に落ちる雪だるまは完全に涼葉さんを捕らえていた。でも、その雪だるまは涼葉さんには直撃せず……


「……!? 雪だるまを踏み台に!」

 まるでサーカスを見ているようだった。空中ででんぐり返しのように回転して、落ちてくる雪だるまに足をかけのっかり体重をかけた。


 雪だるまと涼葉さんが逆転する。


「……っ!」

 空中でわたしと涼葉さんの目があう。


「食らえや!」

 そして、かけ声とともに雪だるまを踏み台にしてわたしに向かいジャンプ!


「マズっ!」

 急いで空中で防御体勢を取る。


「遅い!」

「いっ……!」

 直撃だった。右肩から走る痛みは激痛となって体をかけ巡った。痛みによって空中制御がきかない……


 ……また空中から落ちたら……


 突然、いきなりあの時の恐怖が甦る。あの痛みはイヤだ……それだけは……


「はうっ……! つぅ!」

 地面に直撃する瞬間。ふわっと体がなにかに包まれた。無意識で『創造』していたのわからないけど、わたしの周りには『やわらかい雪』が幾層にもなって積もっていた。


「いっつ……つ……雪?」

 雪がクッションになったけどそれでも痛い……泣きそうに痛い……気を抜いたら意識が……


「なかなか見事やったで凪紗」

 涼葉さんの声が耳に届く。


「もう終わりや。この一撃で終わらせる」

 おぼろげに見えるのはアンブレイドを構える涼葉さん。


「イヤだ……まけ……たくない……」

 雪をかき分け、雪に足を取られ地面に滑り落ちた。


 勝てるのに……せっかくのチャンスなのに……涼葉さんの捨て身の覚悟に負ける……捨て身……?


「おっ? 雪もやんでるし終わりの頃合いやろ?」

 雪がやんでる……そう思ってるんだね。


「いいえ、違いますよ」

「はっ?」

「わたしの……スキルは『雪』です」

「なにゆうてるの?」

「だから……降っていた『雪』はやんでいるんじゃなくて……『降ってこない』だけです」

「……っ!」

 涼葉さんの顔は急激に上を向いた。


「なっ……なんじゃこりゃぁぁぁああぁぁぁあぁあ!」

 涼葉さんの視線の先にはたぶんわたしの『創造』した通りの光景が広がっているはず……


「わたしも最後の力をふりしぼって捨て身で行きます」

 気力を振り絞って立ち上がり、空を見上げる。


 空にはわたしが『創造した大小の雪だるま』が一面に広がっている。どこにいても、建物に入らないと回避できない無数の雪だるまを空に配置していた。


「どうせ当たらないなら、よけられないくらいたくさん落とす」

 あとさきなんて考えない。身体の痛みなんていつかは消える!


「あとは……これを」

 『落とす』だけ!


「いっけぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!」

 空一面に創造した大小の雪だるまを一斉に落とした。


「なりふりなんてかまってられないんだ!」

「凪紗ぁぁぁぁぁあぁあああ!」

 名前を叫ぶ涼葉さんに向かってダッシュ!


「いっ……つぅ!」

 落ちくる雪だるまは容赦なくわたし自身を襲い降りかかってくる!


 進行上に落ちてきた雪だるまは『疾風(はやて)』で切り崩し、駆け抜けることを止めない!


「うりゃぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ジャンプ、ダッシュ、疾風、突進系の技術をすべて出し切り駆け抜ける!


 そして涼葉さんもわたしと同じくらいの速度でこっちに

向かってきている!


「これで、決める!」

「これで、決めたる!」

 お互いに一撃が届く距離で同時に、同じ意味の音が響いた!


「はぁ!」

 わたしがアンブレイドを振り抜く瞬間。突然それは訪れた。


「……っ! えっ!?」

 涼葉さんとわたしの間を挟むように突然訪れたのは、わたしの髪を銀色に変化させた『雪の結晶』


「ちょっ……まさか……」

 雪の結晶は最初に出てきたあの時と同じでわたしに近づいてくる。


「待って……お願い! 待って! このひと振りだけ……あっ……」


 願いは届かない……現実は無情で非情。そして無慈悲だった。


 冷たい感覚が体中を一瞬包み、そして過ぎ去っていく。


「時間切れ……?」

 通り過ぎた雪の結晶はわたしからすべてを消し去った。


 雪だるまも、積もった雪も、降り続ける雪も。すべて。


「そうや、時間切れや」



 目の前の涼葉さんの目が煌めく。口の端が醜く歪んでいる。



「終わりや、凪紗ぁ!」

「ぐぅ!」

 下からの振り上げ……まずい……まともに腹部に当たった……


「おらっ!」

 打ち上げられた先に……涼葉さん……?


「くっ……」

 ガードしないと……


「がっ……!」

 背後から……? 攻撃……?


「あ……」

 そして、目の前には『ふたり』の涼葉さんが……


 ああ、そうか。後ろからの攻撃は……幻影の……


「雪……で」

 雪を想像して……


「あ、あれ……」

 あれ、雪が……出てこない……?


「うらっ!」

「ぶっぐ……!」

 肩から激痛が……痛い……


「まだまだ!」

「あうぅ!」

 後ろから……右から、左から、上から、下から……痛みが、落ちながら痛みは激痛となって駆け抜けていく……痛い……よ……


「終いや!」

「……っ」

 ふたりの涼葉さん……? が、アンブレイドを振り下ろして……


「がはっ!」

 意識が……もう……


 意識と身体が……落ちて……目の前が暗くなって、やわらかい衝撃が……


「もう、大丈夫だよ」

 あれ……刹那くんの声? 地面に直撃してない……?


「せ、刹那くん……」

 薄れゆく意識の中で……わたしは刹那くんにお姫様だっこされて……


「ごめんね……刹那くん……わたし……」

 こぼれたのは『ごめんね』の言葉。


「いいよ。気にしないで」

「ご、めん……ね」

 薄れゆく意識の中、柱時計をふと見た……


(九時十五分……)

 10分……また10分だ……もう、ホントに……


 すべてが暗く、意識はココロの中へと引っ込んでいく感覚を感じながら、沈みゆく意識が……闇へと落ちていった。


 ◆


「はぁ、はぁ……」

 涼葉は着地すると同時に仰向けに倒れ込み、大きく息を吸い込んでいる。


「また地面でごめんね」」

 刹那は凪紗を地面に寝かせ立ち上がる。


「こんどはアンブレイドを凪紗に持たせへんの?」

 仰向けの状態のまま刹那に言葉をかける。


「うん、そうだね。もうこれ以上凪紗ちゃんには負担はかけられないからこのままにしておくよ」

「そうか……」

 そう答え、涼葉は立ち上がる。


「これが最後のバトルやな」

「ああ、こっちはどこまでできるかわからないけどね」

「それいうたらウチもや」

「……お互い満身創痍だね」

「そうやな」

「じゃあ」

「ああ」

 お互いアンブレイドを構えて。


「「うおぉぉぉおおぉぉ!」」


 同時に走り出し、そしてほぼ同時にアンブレイドを振り下ろした。


 ◆


「う……う〜ん」

「あ、起きたね。おはよう」

 目覚めると、刹那くんの言葉が聞こえてきた。


 明るい……天井につり上がっているライトが眩しいくらい明るい……それと、とても暖かい……し、フカフカしている……


「あれ、ここは……」

 天井が眩しくて暖かい。視線を向けるとそこにはベッドがわたしを包んでいた。


「ここはパルモにある銀印良品だよ。で、ベッドは売り物の展示品」

「銀印良品……あっ!」

 そうだ、わたし確かバトル中に涼葉さんの攻撃で気を失って……刹那くんに抱きかかえられて!


「あ、あのバトルは? あの後どうなったんですか!?」

「……ごめん。俺あの子にまけちゃった」

 刹那くんは後頭部をかきながら極めて軽い口調で答えた。


 でも……負けた……?


「へっ……」

 負けた……? 刹那くんが……?


「う……そ、ですよね?」

「ううん、本当だよ。ごめん」

 あんなに頼りになって、男のひとも倒した刹那くんが……負けたの?


「…………」

 わたしのせいだ……わたしが勝てれば……勝っていれば……


「ごめんなさい……わたしがしっかりと勝っていれば……」

「ううん、違うよ。凪紗ちゃんはがんばったよ。俺が負けたのは相手が俺より強かっただけの事だよ」

「ごめんなさい……」

 口からはごめんなさいしか出てこない……本当にごめんなさい。


「さて、じゃあ帰ろうか? 鏡の外に」

「鏡の外……」

 ああ、そうか。ここは『鏡の中』だったっけ


「そうですね」

 ベッドから降りる。


「あっ……」

 でも、わたしがここにいるって事は……刹那くんがわたしをここまで運んだって事だよね。


「あの、刹那くん」

「ん? なに」

「ベッドに運んでくれてありがとうございます」

 わたしはふかぶかと頭を上げると『気にしないで。それだけ元気なら俺も安心だよ』と言って頭をなでてくれた。


「ううっ……」

 なんか……恥ずかしいけど……嬉しいな……バトルに勝ってたらもっと嬉しかったんだけどな。


 ◆


 雑居ビルのアンブレイド専門店の中にある姿見の間。わたしが初めて鏡の中の世界に入った場所。

ここから始まったんだ……


「じゃあ、先に行ってるから。荷物をまとめたら最初に鏡を通った時みたいに鏡を通ってきて」

「はい」

 刹那くんはなれた手つきでアンブレイドを鏡にかざし、何事もなく鏡の中を通っていく。


「さて、じゃあわたしも」

 刹那くんに倣ってわたしも鏡にアンブレイドをかざす。


 そして鏡に波紋が走る。最初と同じだ。


「……髪、元に戻ってる」

 鏡を見ているわたしの髪はいつも同じ、毎日見ていた髪の色に戻っている。眼も同じだ。


「……うん、戻ろう」

 髪を一度さすり、鏡の中をくぐる。


「っと、その前に」

 鏡に入る直前、制服の胸ポケットが重く感じたので制服のポケットに入っていた、スマホをおもむろにカバンにいれた。


「よし、行くぞ」


 鏡の中へと入る。


 冷たくて熱い光が私を包む。まるで光の鏡に落ちていくような錯覚。空が落ちるような幻想。空に落ちる幻覚。例えようのない感覚。私の精神が意志が、ココロが私の身体から離れていくような……ココロは痛いのに感覚は気持ちいい不思議な体感。


 最初と同じだ。同じで好きになれないな……このイヤな感覚は……


「おかえり」

「はい、ただいまです」

 鏡を出ると刹那くんが迎えてくれた。


 そこは、鏡の中と変わらない。


「帰ってきたんだ……」

 でも、違っている。それは文字が『反転』していない。左から文字が読める事だった。


 ん、あれ、なんか下半身がスースーするなぁ?


「あれ、レギンスが……」

 わたしがさっきまで穿いていたレギンスの感覚がなくなってるような。


「あれ? あれれ?」

 刹那くんに背を向けスカートの中を確かめる。見えるのは白と青のストライプのおパンツさまだけだ。


「な、凪紗ちゃん……ちょっと何やってるの?」

 ボロボロになったスカートを覗いていると刹那くんが別の意味で心配そうな声をかけてきた。


「あ、いや、レギンスが……」

「あ〜、それか。たぶん俺は言ったと思うけど『鏡の中の物はこっちに持ってれない』よ」

「……あっ、そうでした!」

 そうだ、すっかり忘れてた。鏡の中の物はこっちに持ってこれないんだ。


「それと、スカートの中を見るならトイレとかでやった方がいいよ……見てるこっちが恥ずかしいから」

「へっ……はぅ……!」

 ううっ……刹那くんだけだから気を抜いちゃったな〜軽く怒られちゃったよ……気をつけよう……


「……」

「……?」

 会話が止まると刹那くんがなぜか、じっとわたしと見ている。ううっ……なんだろ……見られてるとキンチョ〜するし、恥ずかしいなぁ〜


「あ、あの、刹那くん?」

「そろそろかな?」

「そろそろ?」

 そう答えた直後、


「あ、あれ……」

 わたしの膝はがくんと崩れ落ち、刹那くんが急いで支えてくれた。


「あ、あれ、なんで……なにこれ……」

 突然襲う立ってられないほどのすごい疲労感……なんなの……


「せ、刹那くん……なんかすごい疲れが……」

「うん、凪紗ちゃん覚えてる? 鏡の中で話したデメリットの事」

「デメリット……」

 なんか……そんな話をしたような……


「で、これがもうひとつのデメリット。一応話しておくけど、鏡の中ではマナによって失われた体力は補えたけど、鏡の外に出るとそれがなくなるから急激な疲労が襲う。それと」


 ぎゅるるるるるるるるるるる〜〜〜〜


「はへっ!?」

 な、なんで、なんですごい大きな音でお腹が鳴るの〜〜〜! なんで刹那くんの目の前で鳴るのぉ〜〜〜


「うん。正常だね。で、もうひとつオマケで急速な空腹感。なにか食べようか。俺も鳴りっぱなしだし」

「はい……」

 ううっ……恥ずかしい……いくらお腹が空いたからってぇぇぇえ〜〜


「大丈夫? 立てる?」

「はい」

 刹那くんに支えながらなんとか立ち上がる。


 ぎゅるるるるるるるるるる〜〜〜〜〜


「……」

 お腹は鳴りっぱなしだけど……


 ◆


「うわっ……」

 外に出るとひとがわんさか、わんさかいる。見渡す限りひと、ひと、ひと。


「ホントに帰ってきたんだ……」

 なんか、田舎から都会にくるとこんな気持ちになるのかな……なんか不思議。


「お〜〜〜〜〜〜い、凪紗ぁ〜〜〜〜〜〜」

「ん?」

 わたしを呼ぶ声が聞こえる。この声って……


「涼葉さん!?」

 声の方を振り返るとマムトナルドの前で男のひとに支えられながら、涼葉さんがこっちに手を振って呼んでいた。


「なんで、戦いは終わったのに……ああ、そうか」

 そうか、そうだったね……すっかり忘れてたよ。


「どうや、これからウチらと一緒に……って、なにこれ?」

 カバンから取り出した『封筒』を無言で涼葉さんに差し出す。


「負けたから……約束の……わたしの給料です……」

 しょうがないよね……わたしは負けたんだ……涼葉さんに。


「ああ、その事か。ええよ、いらんいらん」

「えっ」

 涼葉さんは封筒をわたしに押し戻しいらないと言った。


「で、でも……負けたら渡せって」

「それはあんたをけしかける為やで。あんたはああでもせんとバトルしなかったやん」

「それはそうですけど……」

「俺らも千葉まできたんやから、1戦でもしないと帰れるもんも帰れへんからかったんや。怖い思いさせて堪忍な」

 相打ちを入れる男のひと。


「そういうことか。おかしいと思ったんだよ。アンブレイドレギュレーションとか一対多数のバトルはできないとか。そんな規定はアンブレイドにはないからね」

 刹那くんが男のひとに続く。


「当たり前やろ。カツアゲまがいな事をしたら、尼のツラ

を汚すことになんねん。ちっこいおっさんに怒られんねん……あ〜すまんな凪紗。ウチも誤るわ。ごめんなさい」


「あ、いえ……そうだったんだ……」

 安堵と安心。そんな気持ちがわたしを包んだ。


「凪紗っ!」

「「雪見さん!」」

「ん?」

 またもわたしを呼ぶ声。


「アイリーン! なんでここに!?」

 わたしの元にかけてくるのは親友であるアイリーンとクラスメイトの悠木さんと東山さんだった。


「雪見さん、大丈夫?!」

「凪紗、ひどいケガじゃない!?」

 飛びついてきたアイリーンの顔はとても心配そうだった。泣き出しそう。


「制服もボロボロだけど、ホントに大丈夫!?」

「あ、うん。大丈夫だよ。ケガももう痛くないし。それよりどうしてアイリーン達はここに?」

 三人はわたしが大丈夫だと言っても『ホントに』と信じてくれない様子だ。それにしても……なんで妻沼にいることがわかったんだろう?


「私が教えたんだよ。雪見さんが妻沼駅で戦ってるって」

「そうだったんだ」

「ねぇ、ホントに大丈夫なの? あんなに傘で叩かれて……それに血も流してて……空から落ちたりして……ホントに」

「アイリーン……」

 じっとわたしの身体中のキズを見ているアイリーンは今にも泣き出しそう。


「わたしなら大丈夫だよ。だから、泣かないで」

「泣いてなんかないわよ」

「そっか」

 こんなにわたしを心配しててくれたんだ……泣き出しそうなくらい……


「ねぇアイリーン」

 わたしは言わないといけない。あの時のお礼と感謝を。


「なに……よ」

「電話ありがとう。あの電話がなかったらわたしギブアップしてた。きっと後悔してた。戦いには負けちゃったけどホントに感謝してる。ありがとう。えっと、だからってわけじゃないけど、今度一緒にモグバーカー食べに行こう。おごるよ」

「バカ……いいわよそんなの」

「でも、それじゃわたしの気が収まらないよ」

「まったく、なら谷緒にピーターのパン屋があるから、そっちをおごってよ」

「うん、わかった行こうね」


 微笑んで答えた。アイリーンも微笑み返して。


 ◆



「なぁ、イケメンさん」

「ん、なに?」

 凪紗とアイリーン達を見守っていた涼葉が刹那へと言葉をかける。


「これからウチらメシ食いにいくんやけど、あんたらも一緒にどうや?」

「ん〜ごめん。俺たちもごはんに行こうと思ったけど、帰るよ。気持ちだけもらっておく」

「そうか」

「うん。ごめん。時間も時間だし」

 涼葉の食事の誘いをスマートフォンの時計を見ながら答え断る。


「じゃあ、行くよ」

「あ、待って」

「ん」

 涼葉は紙とペンをカバンから取りだし何かをメモしだした。


「これを、凪紗に……あ、いや、いいや」

「じゃあ、直接渡すか」

「あ、兄貴!」

 涼葉の兄が横からしゃしゃり出てきて涼葉の書いた紙を奪う。


「ふ〜ん、お前がねぇ〜 あのチビッ子を凪紗って呼んでるんか。へぇ〜お前がなぁ〜 あのチビッ子に涼葉さんって呼ばせてるんか。へぇ〜お前がなぁ〜」

「な、なんやねん!」

 ニヤニヤしながら涼葉の兄はメモに書かれている内容をみてさらにニヤニヤしている。


「返せや!」

「お〜い、チビッ子〜ちょっと来てや〜〜」

 涼葉は紙を奪い返そうとしたが兄が手で涼葉を顔を押さえ略奪を制止している。

「ちょっ!」


「な、なんですか」

 涼葉の兄に呼ばれた凪紗は口をぬぐいながらはてくてくと涼葉達の元へと向かいだしていた。



 ◆



「うん、ホントに大丈夫だから」

 わたしは三人に何度も同じ言葉を投げかける。そんなわたしの言葉とは裏腹に、三人の表情。特にアイリーンは一番心配してそう。


「ホントに大丈夫そうだね?」

「……わかった。凪紗のこと信じるからね」

 やっとアイリーンと東山さんと悠木さんにわたしが大丈夫だって事がわかってもらえた。


「あ、そうだ。雪見さん。のど乾いているでしょ? これ買ってきたんだ」

 そういい東山さんは背負っていたおしゃれな背負いバックから飲み物を差し出してくれた。


「はい。ポタリだけどいい?」

「うん、ありがとう。助かるよ」

 戦いっぱなしで水分が補給できなかったらこれは助かるよ。


 キャップを開けて一口飲んで、キャップを締めておもむろにカバンからスマホを取り出し、そして再びポタリのキャップを開けて、スマホのメールを確認しながら一口飲む。


「凪紗はこれからどうするの?」

 アイリーンがそんな事を口走った時に、


 ぶぅしゅうううぅぅぅ〜〜〜〜


 と、スマホの画面に驚き、豪快な音と共にポタリを口から思いっきり空気と共に吐き出してしまった。


「凪紗!?」

「ちょっ、大丈夫雪見さん!?」

「もしかして、ポタリ嫌いだったとか?」

「ごめん、ううん、ち、違う、ゴホっ、ゴホっ」

 せき込むわたし。そんなわたしを見ていた三人はまたも心配そうな顔になる。


「ごめんね、違くて……えっと〜」


 と、言葉を発すると同時に、


「お〜い、チビッ子〜ちょっと来てや〜〜」

 と、声が聞こえた。この声は涼葉さんの相方のひとの声だ。


「ご、ごめんちょっと行ってくるね」

 正直、このスマホを見たらそれどころじゃないけど、とりあえず行かないと……


「な、なんですか〜」

 と、口をぬぐいわたしは刹那くん達の元へと歩いていった。


「ほら、自分で渡せや!」

「なんでやねん!」

「このまま終わんで! ええんか!?」

「ええわけあるかい! あかんやろが!」

「なら、渡せや!」

「なんでやねん! 自分で渡せや!」

「アホか! お前のやろがい!」

「アホちゃうわ!」


「……えっと〜なんですか? これ」

 まるでテレビの漫才をみてるような光景でわたしは戸惑っていた。


「う〜ん、たぶんあの紙を渡す渡さないで、もめてるんじゃないかな?」

「あの紙?」

 刹那くんが指さす先を見ると涼葉さんの手に小さいメモみたいな紙を持っていた。


「……時間かかりそうですかね?」

「う〜んどうだろう? ところで凪紗ちゃん。自分の携帯見た?」

 突然その言葉が出た刹那くんの質問にわたしは目を丸くしたのだった。


「はい……ぶっちゃけ、えらいこっちゃです。今もメールが来まくりです」

「はは……だよね。こんな時間だし。ごめん」

「刹那くんが謝る事ないですよ。やましい事なんてないんですから堂々としててください」

「うん、でもごめんね」

 やっぱり真面目だな刹那くんは。わたしの思った通りのひとだった。わたしの好きなひとはやっぱり想像通りだった。


「な、凪紗……」

 と、涼葉さんが声をかけわたしは涼葉さんの方へと向く。


「な、なに?」

 緊張してすこし声が固くなる。


「これ」

 差し出された紙を受け取り、内容を見た。


「これって、コネクトのIDとメアド?」

 小さい紙には見慣れたコネクトのIDらしき英数とメールアドレスらしき英数が並んでいた。


 そう問うと涼葉さんは黙ってひとつ首を縦に振る。


「な、なんか困ったことがあったらコネクトでもメール、どっちでもいいから連絡しいや。力になんで」

「なんや、その言い方は? 正直に『友達になろう』って言えんのか!?」

「友達……」

 紙にかかれたメアドとIDを見て涼葉さんの目を見る。


「い、いやなら。破り捨ててもいいで……」

「ううん、そんな事ないよ。友達になろう。アドレスに登録したらメールするね」

「そ、そうか……」

 その時の涼葉さんはとてもかわいくはにかんだ。へぇ〜こんな顔もできるんだ……


 それとも、これが本当の涼葉さんなのかな?


「色々と痛い思いと、騙すような事して悪かったな……」

「ううん、いいよ。事情は解ったし」

「じゃあ、ごめん。俺たち行くよ」

「おう。また千葉に来た時はバトルしよな!」

 男のひとが刹那くんと握手する。


「なるべくなら遠慮したいかな?」

 がっちりと握手する刹那くんはそう答えた。


「わたしも同意です」

「なんやねん、ノリが悪いな」

 涼葉さんとわたしも同じく握手する。


「じゃあね。後でメールするからね」

「凪紗、もし大阪にくるようなら連絡してや。うまいメシ食わせてやるで!」

「うん。そのときはお願い」


 お互い手を振りその場を後にした。


「刹那くん。申し訳ないんですけどごはんは別の機会って事になりませんか?」

「うん。それはいいけど、今もスマホは振動してる?」

「はい、振動しっぱなしです」


「……どうするかなぁ」


 刹那くんは夜空を見上げてそう呟いた。


「ホントにどうしましょう……」

 わたしも夜空を見上げる。


 雲の間から見える月はひとつだけ。


(戻ってきたんだ……)

 そんな事を思いながらわたしと刹那くんはアイリーンが待っている所へと辿り着いたのだった。


 続く。

お久しぶりです。間宮冬弥です。


前書きでの僕の代弁者も言ってましたがアンブレイド~も第十話目です。

この物語ももうすぐ完結しそうな勢いです。


ですが前もいいましたが完結までもう少しかかるのと何話で完結するかまったく見えていません。なので気長にお付き合いしてくれてば幸いです。


では、次回の第十一話でお会いしましょう。

それでは、これで失礼します。

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