うきうき魔法陣!
「フハハハハッ!!!」
嵐が吹き荒れ雷が怒号する。
薄暗く不気味な魔王城の玉座に、重低音の笑い声が響き渡る。
「ついにやったぞ!!我が悲願の大魔法!!その開発に成功した!!」
どうやら大魔法の開発に成功して、超ご機嫌な魔王様。
「さっそく試してみるか。今はセヴァスもルシエラも新婚旅行で休暇中だし、妻と娘はわしを置いてデスティーランドゥできゃっきゃうふふだからな。我1人でまずは実験と行こうぞ。」
ニヤニヤした不気味な笑顔で嬉しそうに両手を広げる。
直後、紫の禍々しい魔法陣が展開され、紫の稲妻が落ちまくる。
『ヴァルゼルヴァルハ・ヴィルゔぇっ』
どうやら噛んだようです。
滑稽ですね。
「ぐぬぬっ!!噛んでしまったわい。しょうがない、もう一度やり直しを......。」
魔法陣の発動を取り消そうとするが、稲妻は収まるどころか更に激しさを増す。
「なぜだ!!なぜ取り消せん!!」
床を見ると、愛娘がお遊びで描いた【とりさん召喚の魔法陣】の紙が、展開した魔法陣に干渉していた。
「誰だこんなところに娘の魔法陣放置した奴はぁぁぁあああ!!」
魔法陣は暴走し、激しく発光する。
玉座の間の窓から、魔王城の外にピカーッと飛び出す。
「カァ...カァ...カァ...クァ」
(ハァ...ハァ...ハァ...ふぅ)
光は収まり、再び薄暗い玉座に戻る。
展開していた魔法陣は消滅し、愛娘の魔法陣も燃えて灰になっていた。
「カァアカ?カァカーカァ?」
(なんだ...?なにが起こった?)
目線が低い、そして身体が妙に軽い。
とりあえず、一旦玉座に座って休もう。
そう思って移動しようとした時に違和感に気づいた。
一歩が小さい。足をたくさん動かしてもいつもよりちっとも進まない。
両足を見てみる。
(.......。)
(なんじゃこりゃあああぁぁぁぁあっ!!)
細い足、両手には翼。
魔王は、自身を1日5回眺めてポージングをとり、ニタニタしながら己の自己肯定感を爆アゲしてくれる心の友の前に立った。
そう、姿鏡だ。
そこに映るのは、極彩色の鮮やかな羽根に、深紅の瞳、黄金に輝くクチバシ......
(なんじゃこりゃぁぁぁぁあああっ!!!)
本日2回目の叫びを盛大にかまし、己の置かれた状況を把握し絶望に打ちのめされる。
(なぜこのような事に...)
コンコンッ
「魔王様?ダブラスです。どうされました?」
玉座の大扉から、家臣のダブラスが声をかけてくる。叫びまわっていたので心配してくれたのだろう。
「カァカッカカ!カッカカカカ!」
(なんでもない!入ってくるな!)
「カラスの鳴き声が聞こえまする。なにごとですかな?」
必死の呼びかけ虚しく、ダブラスは扉を開けて入室する。入ってきたダブラスは、玉座の間を慌てて走り回る極彩色のカラスに絶句した。
「カカカカ!カッカカ!カカカカーカカッカカカカーカッカ!!」
(ダブラス!違うんだ!我は魔王ヴァルザード・フォン・ディザスターなんだ!!)
「......うるさいコバエですね。魔王様の神聖な玉座を汚した事、末代まで懺悔するのです。」
ダブラスが両手に魔力を込め、魔力弾を放ってきた。
「カーッ!」
(ギャーッ!)
逃げるのに必死で無我夢中になってると、いつの間にか飛んでいた。
(おぉ...!飛んでる!!結構早い!!)
「小賢しい......。これで葬り去ってあげましょう。」
(わぁぁぁぁぁあ!!まて!!こんなところでそんな大技使うな!!)
『死の絶望!!』
(ぬぁぁーー!!『魔王の誾混唄』)
「......!?この魔力は魔王様の!!」
お互いの魔法が衝突し、激しい衝撃波が巻き起こる。玉座は吹き飛び、床が崩壊し、柱は弾け飛ぶ。
(......。)
周りを見渡すと、見渡す限りの城だったものと、その瓦礫に埋もれた使用人と兵達が白目を剥いてピクピクしていた。
ガラガラッ
ガバっ!!
「魔王様!?魔王様ぁぁあ!!」
「カー......。」
「おぉ!!そこに居られましたか!!いかにしてその様なお姿に!?」
「カーッ(こっちが聞きたいよ...)」
「言葉を喋れぬ様ですな。これを手にかざして下さい。あ、手ではなく翼でしたな!ハッハッハ!!」
笑い事じゃねぇよ。
ダブラスが取り出したのは、魔呪暴玉。
この紫色の水晶玉は、触れた者のかけられた呪いの内容や解除方法を教えてくれる優れものだ。
魔呪暴玉に極彩色の翼をかざす。
水晶は怪しい輝きと霞を内部に宿した後、女性とも男性ともとれぬ声で喋り出した。
【これは、趣味の悪い色のカラスになる呪いだね。この術式を描いたやつは、「虹色のとりさんとお話ししたいな!!」と願いを込めて描いてるよ。呪いを解く方法は1つだけだよ。勇者との愛を育み接吻をする事だよ。】
初めて使ったが、なんだこの水晶は。
普通に文字で箇条書きで教えてくれると思ったら、自我を持って喋り出したぞ。なんか愛娘を馬鹿にされた気分でやな感じ。
そんな事より、最後なんて言った?勇者との愛?接吻??
ダブラスが青ざめた顔でこちらを見てくる。
「魔王様......。」
絶望の象徴である魔王が、今世紀最大の絶望に苛まれている。




