猫派?犬派?それとも……?
「猫の方がいいに決まってるじゃん!」
「断然、犬の方が素晴らしいですわ!」
目の前では、正反対のタイプの二人の美少女が言い争っている。
「猫は気高くてエレガント。普段は高嶺の花みたいだけど、時々ふいに手にすり寄ってきたりして……あのギャップのある甘え方こそが最高なんだから!」
金髪で長身のギャルが、身振り手振りを交えながら熱っぽく語る。その動きの大きさゆえ、隣の机や椅子にぶつかりそうなほどだ。
彼女の名前は、犬飼鳴子。
明るく情熱的で、活発な性格。
身長だけでなく、あらゆる意味でスタイルが際立っている。
その姿は、まるでゴールデンレトリバーのようだ。
ちなみに、そんな犬飼さんが好きなのは「猫」である。
「愚かですわね。犬の忠誠心と献身的な寄り添いこそが、最も尊いものであるとどうして理解できないのかしら?」
鳴子とは対照的なのが、黒髪の少女は猫本寧音だ。
寧音は優雅に袖口を整えながら、高慢な眼差しで鳴子を冷ややかに見据える。
静寂を好む彼女だが、その存在感は常に圧倒的だ。
小柄な体躯に、整った顔立ち。
疑いようもなく、彼女は気品あふれる「黒猫」そのものだ。
しかし、そんな猫本さんは忠実な「犬派」である。
「猫!」
「犬!」
私が物思いにふけっている間に、二人の言い争いはいつの間にか小学生みたいな口喧嘩にまで発展していた。
「猫と犬、どっちがいい? 愛ちゃんはどっち派なのよ!」
二人の美少女が詰め寄り、怒涛の勢いで問いかけてくる。
二人とも親友であり、正直どちらの肩も持ちたくはない。
彼女たちは毎日のようにこうして喧嘩しているが、それで仲が悪くなることはない。
時折、この三人の中で私だけが余計な存在なのではないかとさえ感じてしまう。
「二人のイチャイチャに私を巻き込まないでくれる?」
私はため息をつき、呆れながら答えた。
「だ、誰がイチャイチャしてるってのよぉ!」
鳴子は顔を真っ赤にし、視線をあちこちに泳がせる。
「そ、そうですわ! 私とこいつが、そんな関係なわけないでしょう!」
寧音は顔を背けて地面を見つめているが、その耳の先は赤く染まっていた。
その様子でしらを切るのは、さすがに無理がある。
二人が沈黙した隙に、私はこっそりと自分の席に戻った。
机の上に置かれた「宇佐美愛」と記された教科書を引き出しにしまう。
「それに、強いて言うなら私は『タカ派』なんだよね」
私は隣を見て、いたずらっぽく笑った。
「……ね? 鷹宮さん」
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