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魂融合

 壁に穴の空いた小屋の中、彼の膝の上に陣取った桜姫の満足そうな表情を愛でながら健司達はナグアナなどの拠点でまとめ役をしている人達を集めて囲炉裏を囲んでいた。


「それで、例の件は上手くいったのかの?」


 アリアーネが用意した茶をすすりながらディアラが期待するような目で健司を見やる。その後ろではキーラが全く期待していませんとでも言いそうな表情で彼を見ているが、さしもに健司もそれはスルーすることにした。


「多分これで上手くいくはずだ」


 そう言って左手で掴んだままにしていたモノを皆の前に出すが、返ってきたのは皆して首を傾げるという反応だった。だが、その首を傾げるという反応にも意味は三通りあった。


 健司の手の中にナニがあるのか見えない者。ソレが見えてもソレがナニか分からない者。そして、ソレがいったいなんなのか理解できた者だ。


「ん、なにかあるのか?なにも見えんのじゃが……………………」


「はぁ、私にもさっぱり……………………」


 桜歌が眉根に皺を寄せてそのナニかを見ようとするがさっぱり分からず、視線をアリアーネに向けるが、向けられたアリアーネも分からないと首を傾げるばかりだった。


「なんだこれは?」


「少なくとも精霊では無いですね。こんな得体が知れないでモノで本当に首輪を排除できるのか、半信半疑ですね」


 見えるがソレがナニか分からなかったディアラが疑問の声を上げて、同じく見えたキーラは胡散臭いもの見る目でそれを眺めている。その背後では治療の合間の休憩をしていたところを呼ばれたダイヅンがおり、彼は一人ソレを興味深そうに眺めている。


 そんな中でただ一人ソレがナニか理解した者がいた。初めはソレがナニかと首を傾げていたが直ぐにソレが何なのかに思い至り、ついでそれを理解して目を見開き驚愕する。


「まさか……………………、魂、なのか?」


 驚愕に声を震わせながらナグアナは健司の左手に掴まれたモノを凝視する。桜歌やアリアーネ等のほとんどのまとめ役がソレを見ることができない中で、彼の目には健司の左手に掴まれながらユラユラと揺れ動く蒼白い淡く透き通ったモノが映っており、ディアナとキーラの二人もナグアナほどはっきりとではないが、同じものを視認していた。


「ちょっと待て、魂だと?」


 そして視認していたがゆえにナグアナの言葉に反応していた。


「妾らにも見える魂など聞いたことがないぞ。霊体化しているのならばともかく、肉体というこの世と結びつける楔が無くては、魂など瞬く間に冥界へと墜ちてしまう筈ではないか」


「俺とて半信半疑だ。

 だが俺も疾風神ケッツァ・アトル様に仕える神官戦士として、魂に関する知識もあるし実際にこの目で見たこともある。その上で言う。これは間違いなく魂だ。魂の秘技に通ずる神官である俺だけでもなく、より存在の濃い精霊までしか見ることのできないはずのお前達エルフにすら見ることができるほどの存在の濃い、な」


 これはどう言うことだ、と睨むような視線を健司に向けるナグアナ。それにつられるように皆の視線も健司へと集中する。


「とりあえずこれはナグアナの言う通り魂だよ。場所は検索転移魔法で跳んだから詳しくは分からないけど、どこぞの森にいる醜い魔物のね。正式な名称は知らないから俺はグレムリンと呼んでるけど。

 ナグアナに見えるのは神官として修行を積んでいるからだとして、ディアナ達にも見えたのはこいつが何十匹か数えるのもめんどくさくなる数のグレムリンの魂を凝縮しているからだ」


 手の上で凝縮した魂を転がすような仕草をしながら楽しげな表情で説明をする健司。


「魂の凝縮なんてのは自我の薄い同種の魔物でもないと無理だけどな」


 そう言って肩を竦めるが、それを聞いている大半は理解ができずに再び首を傾げ、理解できた者は理解できたからこそ信じられないといった様子で健司に視線を向けていた。


「お前は……………………正気か?ソレがどのような来歴のものであれ、魂に手を出すなど……………………、魂を加工するなど、そんな、そのような所業、それは、もう、神の領域に手を出すに等しい所業だぞ……………………!?」


 わなわなと声を震わせるナグアナの言葉に、ようやくことに大きさを知った人達が驚き、怖れに混じった声を上げる。それを向けられた健司はと言うと、怖れ混じりの視線を向けられながらも気にした様子はなく、むしろつい今しがたよりも堂々と胸を張ってその視線を受け止めていた。


「そうだな、俺の得た力はそう言った領域に手をかけるような力だ。でもこれぐらいなきゃ駄目なんだよ。

 俺はアーサ・ヌァザ様からお前達、逆神とその信徒から追われる人達を助ける魔王となってくれとこの世界に召喚された。で、その答えとして人間達に対抗するための国を作るという答えを出した。まぁまだ国はできてないわけだけど。

 けどそれだけじゃ足りない。どれだけ強い国を作ろうともいつか逆神が痺れを切らして力を振るおう物なら俺達が作る国なんかあっという間に滅びされちまうだろうよ。だから必要なのさ。逆神そのものに対抗するために、神の領域の力が。俺が得た力ってのは、その神の領域に手をかけてその力を得るための力んなんだよ」


 これはアーサ・ヌァザ様も承知の上だと不適な笑みを浮かべる健司にナグアナ達はそれ以上なにも言うことができなくなってしまっていた。


「……………………む?ちょっと待て、魂の凝縮などという行いが神の領域に手をかける行為なのは分かるが、ソレがなぜ力を得ることに繋がるのだ?」


 そんな中で健司の言葉を聞いていたディアナが疑問の声を上げる。その疑問を聞いて皆もまたそれに気づく。健司の話が逆神を倒すなどという大きなものになったことで、その雰囲気にのまれてしまっていたことに。


「ん、あぁあれが抜けてた。

 俺がこの凝縮した魂をどう扱うかってこと。

 魂を凝縮するだけじゃ確かに俺が力を得るには至らないな。 けどこの凝縮した魂を俺が取り込めばどうだ、それはそのまま俺の力になるってことだ」


 健司が左手に力を込めると凝縮していた魂の大きさがさらに小さく纏められる。


「先に言っておくがなにも力をつけて神様達に成り代わろう、逆神の後釜に居座ろうと思ってる訳じゃない。アーサ・ヌァザ様の頼みを全うするためには、んで俺がいい女を囲うためには逆神が邪魔だからそれを排除するんだ。俺が得ようとしているにはそのための力だ。なんだったら逆神を排除したあとは必要最低限の力を残してアーサ・ヌァザ様に捧げたっていい」


(地上で無双できるだけの力は残してな)


 異世界行ってチート貰ってハーレム欲しいなどという願いを半分冗談でも願った身としてはそこだけは譲れないと思いながら、自分に向けられる視線に主達を逆に見回していく。

 桜歌には心の内で思ったことも読まれていたが、神に勝る力を得ても逆神を倒したあとは神を打倒できるだけの力を自分に残す気がないことは事実であり、そのことも読んだ彼女は事を荒立てることも無いかと目配せをしてきたナグアナに同じように目配せをして返す。


「……………………分かった、その言葉を俺は信じよう」


 僅かな静寂の後でナグアナが頷き、それに他のまとめ役達が続いていく。どうやら健司がいない間に桜歌とナグアナの二人は拠点の人達の信望を集めていたらしく、二人のやり取りから皆その判断を尊重しようと言うことらしい。


(よし、俺の思惑通り桜歌は拠点でも重要なポストについてきたみたいだな。後はこのまま俺の右腕として動いて貰ってゆくゆくは……………………!)


 その様子を見ながら相も変わらずそんな考えを巡らす健司を、流石に今回は自重して鉄扇制裁は行わなかった桜歌だが袖のなかで愛用の鉄扇を握り締めて睨み付けるが、当の本人はそれを心地よいとばかりに胸を張っている。


(……………………後で覚えておれよ)


「さて、盛大に脱線したけど話をもとに戻そう。

 今しがたいった通り、俺はこいつを取り込むわけだ。俺がこの世界に来る直前、ある場所で手に入れた能力『魂融合ソウル・フュージョン』でな」


「……………………魂、融合か。なんだかあまりよろしくないような響きだな」


 健司の告げた能力の名前にバルダダが眉根を潜める。それに追随して他の人達も大丈夫なのかそれはと心配そうな顔をする。


「まぁ実際どうなるか詳しくは分からないからな。俺に分かってるのはこいつで魂を融合することで力が増すことと、融合する魂の持つ種族としてに特殊能力を、この魂ならアイテム破壊能力を得られることだ。あとは制限として一度能力を使ったら一月ほど融合した魂が安定するまで時間がかかるから、あまり頻繁には使用できないってところか」


「副作用はないのか?」


「さぁな。この能力を得てこれくらいの事は分かっても実際に使ったことがない能力だ。後は実際に使ってみないことにはなんとも言えないな。

 けどまぁそんなに深刻な副作用はないと思うぞ。一応制限として俺と融合する魂の自我の強さには一定の差が必要だし、俺と相手方の魂が混ざりあって俺の自我が変貌することはないはずだ。それはなんとなく感覚で理解できている」


「……………………そうか。

 その『魂融合ソウル・フュージョン』で得たアイテム破壊の能力で妾達の首輪を破壊する訳だな」


「あぁ、問題がるとすれば、いや俺はできると思ってるわけだけど、本当にこのグレムリンの能力で首輪が破壊できるか、そもそも能力会得できるかはまだ百パーセントできるとは言い切れないんだけどな。今言った通り俺も初めて使う能力だし」


 凝縮した魂を眺めながら正直に答えた健司は、他に質問は無いかとそれぞれに視線を向けるがこれ以上聞きたいことが見つからないと互いに顔を見合わせているなかで、アリアーネだけが胸元で手を組みながら心配そうな表情を浮かべていた。


「本当に大丈夫なのですか?」


「さっきも言った通りそう深刻なデメリットはないと思うぜ。少なくとも俺が思い付く範囲ではデメリットは注意していれば回避できそうなものくらいだし、今回はそこら辺も注意してるしな」


「でも確信はないのでしょう?これでもし貴方の身に何かあったら……………………」


 健司から視線がその膝の上に座った桜姫へと移すが、視線を向けられた彼女の方はわずかに首を傾げると心配などまるでないといった様子で健司に背中を預ける。


「たしかにそうだけど、こんな能力を持ってるのは俺くらいだろう?なら俺が自分で使ってみる以外にそこのところの確かめようなんてないからな。心配してくれるのは嬉しいけど、これを止めるつもりはない」


「そう、ですか」


 そこまで言い切られてアリアーネは渋々と言った様子で様子で引き下がった。


 これで今度こそ質問は終いとなった。後は健司が能力を使用するだけである。


 一応何が起こるか分からないからと膝の上から退かせた桜姫をアリアーネへと預けた。







「俺は人間をやめるぞ、○ョ○ョーーーーーーーーッ!!」


「貴様は何を言っとるんじゃ?」


 立ち上がり、皆で囲んでいた囲炉裏から離れた健司は、左手に持った魂掲げながらそんなことをほざいていた。

 だが当然というべきか桜歌から向けられたのは冷たい視線とお前は馬鹿かと言わんばかりに辛辣なお言葉だった。盛大なため息までついてかけられた言葉に怯む健司にさらに追い打ちがかかる。


「桜歌よ、そこは無かったこととしてやり過ごすのが優しさというものではないか?」


 可哀想なものを見るような視線を向けられて、さらにはディアラのフォローになっていないフォローの言葉が容赦なく彼の胸に突き刺さる。


「そんな必要無いと思いますが、姫様」


 キーラの変わらぬ辛味の効いた台詞がさらにディアラのフォローの台詞を深々と打ち付け、健司のドヤ顔が苦いもの噛んだ時のように歪む。


 そしてアリアーネと桜姫の二人は片やどうリアクションをとればいいのか分から困ったように苦笑してなにも言わず、そんな彼女に抱かれた桜姫は首を傾げてじっと見上げてくる。

 どちらも地味に心のダメージが大きかった。


「……………………ごめんなさい、今のは忘れてください」


 そして自分達はなにも見ていないとばかりにナグアナ達が視線を逸らし、健司は土下座して先の発言を取り消すのだった。


「気を取り直して……………………」


 先ほどまでのやり取りを無かったことにした健司は、凝縮された魂を胸の前で両手で保持し胸板に押し付けるようにして意識を集中させる。健司にとっても初めての能力行使に心臓の鼓動が些か速くなる。


 深刻なデメリットは無い、先ほどはそう言ったがこれは実は少し間違っている。健司の予想では非常に深刻なデメリットが存在している。ただそれは注意していれば回避できるだろうという予測のもと深刻ではないと、回避できないようなデメリットではないとそういう意味での発言だった。

 健司の予想する深刻なデメリット、それは桜磨健司という人格、精神の変質という可能性だ。『魂融合ソウル・フュージョン』は魂と魂とを融合する能力だ。魂とはこの世に生きるものの核とも言えるもの、その者をその者足らしめている根幹的な存在だ。そんなものを融合するという荒業的な行為にデメリットが無い筈がない。その中で特に可能性が高く深刻なデメリットが健司と融合対象の自我や精神が混ざり合い別の人格が全くの別人へと変貌したり、精神に異常をきたす可能性があるのだ。

 健司は自分自身を、『桜磨健司』という人格を強く持つことで混ざろうとする相手の人格を押さえ込む事でそれを回避することができると考えていた。また低位の魔物のように自我の薄い相手なら押さえ込むことも容易になるだろうと、さらに複数の魂を凝縮することで相手の自我を無理矢理統合し破壊してやればよりその可能性も低くなると考えていた。


 だがそのどれもが机上の空論である。未だに使用したことの無い能力、実際にそのような化膿性があるのかも、もちろんその対処方法とて全てが健司の憶測、推測にすぎない。


 結局どれだけ可能性を考えようとも能力を使用してみなければ分からない。未知の領域であることに変わりはないのだ。先に述べたような推測ができたのだって地球で読んだ物語などから来る空想上の知識の賜物でしかないのだ。


(さぁ、やって、やろうじゃないか)


 この先どうなるか分からない緊張から魂を掴む手が震えそうになるのを必死に押さえその内心とは裏腹に自信に満ちた笑みを浮かべて、健司は『魂融合ソウル・フュージョン』を発動させた。


「……………………ぐ、うぅ、んく、ぐぅぅぅぅうぅうううぅぅうっ。

 ぐ、ぎぃぃ、ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa……………………!!」


 健司の中で何かが荒れ狂う。それが直接的なものなのか比喩的なものなのか本人にも分からない絶対的な何かの奔流。直感的にそれに呑まれてはいけないと感じ取った健司は、その奔流に逆らうように声を上げ全身に力を込めた。

 奔流の中心で健司の魂と凝縮された魂がぶつかり合い混ざり合おうしているのを感じながら、その奔流に呑み込まれぬように意識を集中させる。


(思、って……………………、た以、上に、し……………………んどいな!!)


 健司から漏れでた魔力が彼の周囲に風を巻き起こし、空気が帯電して彼の回りで小規模な放電を繰り返す。


 「…………さ…………じ…ま…だ………………………け……………」


 どこか遠くから誰かの声が聴こえてくるが、今の健司にとってその声は雑音でしかなかった。聴覚も視覚も、味覚、嗅覚、触覚に至るまで全ての外的感覚がただただ煩わしく、彼の神経全てが彼の内面へと向けられていく。そして彼はただひたすらに魂が解け合うのを待ちながら、『桜磨健司』という領域を侵そうとするものを耐え捩じ伏せる。


 自分の中に、魂の中に新たな何かができあがろうとするのを感じとり、それを受け入れながら自らの領域を侵そうとするものをはねのけるという二つの真逆の行為に一心不乱にのめり込み集中し、魂の融合を進めていく。






・kenji


 どれだけの時間そうしていたのか分からない。一瞬とも永遠とも感じられる時間を過ごした俺は、魂の融合が終わると同時に崩れ落ちるように膝をついた。


 膝をついたよな?駄目だ、何かに触れているという感触が薄い。本当に膝をついているのか、四肢がどこにあるのか、自分が立っているのか座っているのか、その感覚が凄く曖昧だ。


「ぱぱ……………………?」


「健司様、大丈夫ですか?」


 俺を心配してくれる声が聴こえてくるが、それも聞こえてくる場所が近いのか遠いのかも分からない。前から聞こえてくるような気もすれば右から、真下から聞こえるような気だってする。一つの声が四方八方から聞こえてくるような錯覚に頭が混乱しそうになる。


 視界もおかしい。明るいような暗いような、どこぞの特撮シリーズのオープニング頭で流れるようなたくさんの色が混ざりかき混ぜられているようなそんな不明瞭な視界。嗅覚も味覚も全てが狂っている。


 いったい何がどうなっているのか頭が混乱する。俺は本当に目で見て耳で聞き肌で何かを感じているのだろうか?

 それとも俺は目で嗅ぎ肌で聞き耳で味わい鼻で感じ舌で視ているのではないだろうか?


 とりあえず、俺を心配してくれている声に答えなければ。

 が、声を出そうとするが、身体が声の出し方を忘れてでもしまったかのように声がでない。仕方なく俺は片手を上げて声を制止しようとするのだが、手、挙げたよな?挙がったよな?ふわふわと無重力空間にいるかのような感覚を味わうなかで、自分が本当に手を挙げたのかが分からない。


 これが魂融合の副作用か?いくらなんでもこれは不味いだろう。これって一時的なものだよな?


 手を挙げることは成功したのか声が聞こえてくることはなくなったが、焦りそうになるこ心を無理矢理鎮めて、俺はじっと時間が過ぎるのを待つ。目閉じてじっとしていた俺が一番最初に感じたのは嗅覚だ。囲炉裏の中で静かに燃える炭の匂いが鼻に届く。先ほどまでの訳の分からない代物ではない全うな匂いに俺は目を見開いた。

 視界に映る小屋の床。俺はそこに片膝をつきながら皆の方へと片手を上げて踞っていた。無意識のうちに唇に舌を這わし汗の味を感じ味覚もまた正常なものになっているのを確認する。これで五感の内の4つまでの確認ができた。後は……………………。


「すまん、もう大丈夫だ」


 俺の声も正常に聞こえる。


「さすがにきついな、融合終わった後には五感が正常に働いてくれねぇ」


「いや、いくらなんでもそれを大丈夫と言うのは無理があるのでは?」


 呆れ顔のダイヅン指摘受けて、健司は何てことはないとばかりに再び足にしがみついていた桜姫を抱き上げる。


「五感が狂ったのは一時的なものだ。もう元に戻ってる」


「本当ですか?」


「本当だって」


 心配そうに表情を曇らせるアリアーネに苦笑するが、抱き上げられ間近から彼の顔を覗き込んでいた桜姫が首をかしげる。それに気づいたのは桜歌だけだったが、彼女がなにかを言うよりも早く桜姫は乗り出すようにしてして健司の顔に自分の顔を近づける。


「ぱぱ、お目目が変わってる……………………」


「なに……………………?」


 桜姫の言葉に皆が反応し、すぐさまダイヅンが健司のそばへと近づいていった。


「失礼します」


 一言断りを入れてダイヅンが健司の目、桜姫が見ていた右目を覗き混み、驚き目を見開いた。


「……………………健司殿、健司どのは異世界の出身とはいえ、人間であることには変わらず、この世界の人間との差異は無い、ということでしたね?」


「……………………あぁ、少なくともアーサ・ヌァザ様からはそう聞いている。

 何があったんだ?」


「ご自分で確認した方が早いかと」


 ダイヅンが懐から手鏡を取りだし、ソレを健司が自分の目を見れるように持つ。


「なんだ、こりゃ?」


 健司が見た右目には黒い瞳、地球にいたころとと変わらぬソレに安堵するも、すぐさまその瞳の中にあり得ざるものを見つけ出して言葉を失った。


「いったい何があったのじゃ?」


 鏡を覗き込んで動きを止めてしまった俺にしびれを切らしらた桜歌が、近づいてきて俺の右目を覗き混む。


「これ、は……………………、瞳が縦に割れておるな。蛇なんぞの爬虫類などがこのようなこのような目をしておったと思ったが?」


 そう、魂融合を終えた後、俺の瞳が蛇などの物と同じ瞳孔が縦に割れた物へと変貌していたのだ。


「左目には特に変化は無いですな。健司殿、右目に違和感などはありますかな?」


「いや、いたって良好だ。特におかしな感じはしない」


 やっぱりこれって魂融合が原因だよなというかそれ以外考えられないよな。これが魂融合なんて無茶をした結果、副作用ってことなのかな?






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