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不吉な運勢



「ふにゅ~。次の方~。入ってどうぞなのです~」



 それから。

 三十分ほど待機していると、悠斗の番がやってきた。



(おおー。結構、本格的な作りになっているんだなー!)



 おそらく内装は姉のリリナが作成したのだろう。


 家事万能属性を持ったリリナは、プロの大工にも劣らないほどの職人スキルを身に着けていたのである。



「それで、お兄ちゃんは何を占って欲しいのですか?」


「そうだなあ。せっかくだから、今日の運勢でも見てもらおうかな」


「ガッテン承知、なのです!」



 元気良く返事をしたサーニャは、机の上に置かれた水晶玉を覗き込んだ。



「ムム! ムムム! 見えるのです! お兄ちゃんの未来が見えてきたのですよ~!」



 サーニャが声高に叫んだ次の瞬間。

 突如として水晶玉が漆黒に染まり、バリバリと音を立てて、砕け散ってしまう。



「えーっと……。俺の未来、どうなっていたんだ?」


「ふにゅ~。それでは次の占いスタートするのです。はい!」



 視線を逸らしたサーニャは、露骨に話題の転換を図っていた。


 不吉な予感である。


 天真爛漫でいて、思ったことを何でも口にするタイプのサーニャが言えないような悪い結果とは一体どのようなものだったのだろうか。



「今度はタロット占いか」


「はい、なのです。実を言うとサーニャは、こっちの占いの方が得意だったりするのですよ~!」



 机の上に置かれたカードを手に取ったサーニャは、手際良くシャッフルを開始する。


 その仕草は堂に入っており、自分で『得意』と公言するのにも頷けるものがあった。



「ふにゅにゅっ! それではお兄ちゃん。この中から好きなカードを3枚だけ選んで欲しいのです~!」



 そう言ってサーニャが机の上に並べたのは裏返しにされた全22枚のカードである。


 この場合、深く考えるより直感で選ぶのが良いだろう。

 

 そう判断した悠斗は近くにあった3枚のカードを適当にひっくり返すことにした。



「ふにゅ! ふにゅにゅ!?」



 次の瞬間、サーニャの表情は愕然としたものになっていた。



 何故ならば――。

 悠斗が選んだカードはそれぞれ『悪魔』『死神』『塔』という考えられる限りでの最悪の組み合わせだったからである。



「ん? もしかしてこのカードって、そんなに悪い結果なのか?」



 全ての格闘技の長所を相乗させることをコンセプトとした《近衛流體術》を習得した悠斗であったが、流石に《占い》に関する知識までは身に着けていなかった。 


 それというのも、魔法という概念が存在しない現代日本で生まれ育った悠斗にとって、《占い》が戦闘の役に立つとは考えられなかったからである。



(うーん。死神とか悪魔はともかく、塔に関してはそんなに悪いイメージはないんだけどな……)



 この時、悠斗にとって知る由もないことであった、タロット占いにおいて『塔』というのは、全カード中最悪の結果を暗示させるものであった。


 塔のカードが暗示している未来は、困難と崩壊であり、積み上げた努力がバラバラになってリセットされる事態を示唆しているのである。



「今日のお兄ちゃんの運勢は……」


「運勢は?」


「と、とにかく、パナいのです~!」



 返事を濁したサーニャは、素早く占い道具を片付けた後。


 逃げるようにして悠斗の前から立ち去っていくのだった。

 




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