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洞窟の戦い(前編)



(テイミング……だと……? こんな偶然が2回も続くものなのか?)



 その時、悠斗の脳裏に過ったのは、先日のローナス平原でのアクアドラゴンとの一戦である。


 以前に戦ったアクアドラゴンも《懐柔》のスキルによって、何者かに使役されていたモンスターだったのである。



「な、なんなんだよ!? コイツ!?」



 サラマンダーの姿を目の当たりにしたヒラリーは、恐怖で足がすくんで身動きが取れないでいた。


 飛竜と比べると格が落ちるとされている地竜種であるが、それでも一介の冒険者が相手が太刀打ちできるモンスターではない。


 サラマンダーのような危険な魔物が、駆け出し冒険者が利用するエリアに出現することなど滅多にはないことであった。



「うっ。うわああああああああ!」



 巨体の割にサラマンダーの動きは素早かった。

 サラマンダーは一瞬にしてヒラリーとの距離を詰めると、大きな口でその右腕を丸齧りにした。


 

「ぐぎゃあああああああああ!」


「ヒラリー!?」



 仲間の危機を救うためポッチョはサラマンダーに向かって手にした斧を振りかざす。



「うがああああああああ!」



 だがしかし。

 サラマンダーの頭突きを食らったポッチョは、そのまま洞窟の壁に激突して口から血を吐き出すことになった。



「一体……何が……?」



 驚きのあまりスピカの頭には様々な情報が錯綜していた。


 どうしてこんなところにドラゴンが?


 勝てるはずがない。絶対に無理だ。逃げないと。

 どうやって? 入口はサラマンダーが塞いでいる。


 男たちの体から流れた血がスピカの足元に迫っていた。


 恐怖に駆られたスピカにできるのは、現実から逃げて、両目を閉じることだけであった。

 


「スピカ。目を背けるな」


 

 心の隙間に染みわたってくるかのような女性の声。



「これが俺たちの仕事なんだよ」



 悠斗のアドバイスを受けたスピカは己の決断を恥じていた。


 無理を言って『冒険者になりたい』と志願したのは自分なのに――。

 いざ死の可能性を前にするとスピカの胸には、後悔の感情が湧き上がっていたのである。



(ウォーターストーム!)



 このまま助けなければ男たちがサラマンダーのエサになるのは時間の問題だろう。

 そう考えた悠斗は相手の注意を引く意味を兼ねて、得意の水魔法を使用する。



「ぐぎゃああああああああああああああ!」



 サラマンダーの頭にキンキンに冷えた大量の水が衝突する。


 ダメージを与えている手応えはあった。

 けれども、巨体の割に素早いサラマンダーは直ぐさま水魔法から逃れてしまう。


 怒ったサラマンダーが悠斗たちの前に接近していた。



(クソッ! こんなんじゃダメだ! 圧倒的に火力が足りない!)



 武術に頼ればサラマンダーを突破することは可能だが、その場合は確実に悠斗の正体がバレてしまうことになるだろう。


 1つだけ。


 サラマンダーを確実に打倒すことの出来る魔法があった。

 

 だがしかし。

 その魔法を使用するためには時間がかかる。


 魔法でサラマンダーを打ち倒すには仲間の協力が不可欠であった。




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